米国人の80%が毎日コーヒーを飲むといわれている。Compound Foodsの創業者でCEOのMaricel Saenz(マリセル・センツ)氏もその1人だが、彼女はコーヒーだけでなく、環境も愛している。
コスタリカで生まれて今はベイエリアの起業家である彼女は、気候変動が世界中のコーヒー生産農家に与えている影響にも関心がある。農産物を温室効果ガスの排出量の多さで順位をつけると、コーヒーは第5位になる。そこで彼女は、おいしいだけでなく持続可能性のあるコーヒーを作りたいと思った。
「気温の上昇と不規則な降雨が収穫量減少の原因です。同じ産地で、以前と同じような収穫量を望むことはできません。品質も悪くなってます。コスタリカの農家は農地を売って高地に移動しています。専門家の予測では、現在の農地の50%が20年後には使えなくなります」とセンツ氏はTechCrunchの取材に対して答えている。
2020年に創業されたCompound Foodsは、コーヒー豆を使わずに、合成生物学を利用して分子を取り出し、コーヒーを作る。センツ氏によると、同社はコーヒー、特に良質なコーヒーの組成を知るために多くの時間を費やし、味と香りの関係を突き止めようとした。
コーヒー豆が入っていなくても、公式な規制上の定義がないため、同社はそれを「コーヒー」と呼ぶことができる、とセンツ氏はいう。
センツ氏によると、カップ1杯のコーヒーを作るために140リットルの水が消費されているというが、同社は持続可能な原料を使い、大量の水を使わない科学的な方法で基本的な配合を生み出した。また同社は、コスタリカやチョコレート風味のブラジルコーヒーなど、世界各地の味と香りを再現できる人工コーヒーの作り方にも挑戦している。
Compound Foodsは450万ドル(約5億円)のシード資金を発表し、総調達額が530万ドル(約5億8000万円)になった。同社の支援者は、Chris Sacca(クリス・サッカ)氏の気候ファンドLowercarbon CapitalやSVLC、Humboldt Fund、Collaborative Fund、Maple VC、Petri Bioそしてエンジェル投資家のNick Green(ニック・グリーン)氏(Thrive MarketのCEO)などとなる。
センツ氏は、新たな資金を配合の改良とブランドの拡張に充てて、年内を予定しているソフトローンチに備えたいと述べている。
この分野にも別の技術による競合もある。たとえばシアトルのAtomoは「種子がコーヒー豆に似ている果実や植物」を使っているという。
Compound Foodsは、コーヒー愛好家を雇用してその技術を磨き、今後はマーケティングとプロダクトとビジネス担当のチームを作りたい、とのことだ。
そしてセンツ氏は、コーヒーと競合するつもりはないと明言している。
「コーヒーは好きだし、農家のこともよく知っている。私たちが提供するのは、あくまでも代替製品です。私たちはそれを別の方法で作り、将来は火星でも飲めるようにしたいと考えています。その宇宙旅行は、コーヒー農家や業界の人たちとご一緒したいですね」とセンツ氏は語る。
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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)