メダルを逃した選手の「悔し涙」もまた、見る者の涙を誘うニッポンのオリンピック。
その中である外国人選手の「笑顔」が日本人の心を鷲づかみにしている!
13歳の西矢椛選手の金メダルと、16歳の中山楓奈選手の銅メダルという、若き力が日本の未来を感じさせたスケートボード女子ストリート。
その表彰台にはいなかったものの、フィリピン代表のマージェリン・アルダ・ディダル選手が、いまSNSで注目を集めている。
失敗しても楽しげな笑顔。それも1回や2回ではなく…、何度失敗しても必ず笑顔で演技を終える、その姿に…
「点悪かったのに、ずっと笑ってて、明るくて!」
「ダメだったー!あはは!って感じの、ポジティブ笑顔!」
「待受にしよう いつも笑顔でいられるように…」
フィリピン選手の笑顔になぜ日本人は魅了された?
スケートボード女子ストリートの競技中。実況で、彼女についてこんなエピソードが語られていた。12歳でスケートボードを始めるも、家庭の経済状況で、自分のボードを買うこともできなかったと。そんな情報が気になって、7月30日、Mr.サンデーはフィリピン「セブ島」にある、ディダル選手の実家を訪ねてみた。
彼女が稼いできた賞金で改築したという自宅で迎えてくれたのは、娘のスケートボードにずっと反対していたというお母さん。
ディダル選手の母親:
私はもともと、全然応援してなかったの…。だってスケートボードは男性のスポーツだし、危ないし。ケガをして病院に罹ったらお金がかかるでしょ。それより、きちんと学校に行って、家族を支えるために良い仕事をしてほしかったのよ…。
そう、彼女とスケボーとの出会いのきっかけは、母の屋台を手伝っていた12歳の時。当時母が屋台を出していたのは、スケボー少年が多く集まる公園だったという。
Mr.サンデーはその頃からディダルの才能に気付き、オリンピック選手にまで育てたダニエルコーチにも話を聞いた。
ディダル選手のコーチ ダニエル・バーティスタさん:
当時、彼女はいつも僕らのボードを借りていたんです。自分のを持っていないし、買うお金もなかったから。でも皆、彼女の才能には気付いていた。だからある者は古いホイールをあげ、ある者は古いデッキをあげるなど、余っているパーツをかき集めて、ひとつのボードにしてプレゼントしたんです。
寄せ集めの中古ボードで始まったライダー人生。その才能はみるみる開花し、地元のコンテストで賞金を稼ぎ始めると、2018年には早くもアジア大会で「優勝」!
その時からすでに、彼女は常に笑っていたと語るのは、同じ大会で銀メダルとなった伊佐選手だ。
伊佐風椰選手:
いや、衝撃でしたね。失敗してるのに、あんなニッコニコで場を盛り上げられるような選手はいないです。私が失敗した時にはやっぱり、「ああ」っていう声が響く感じで、そうすると選手のモチベーションもやっぱり下がるんですよね…。でも彼女はもう「イェイ」みたいな、「次々!」みたいな感じだったんで、いつも“next one”って…。
失敗しても「NEXT ONE!」
例えどんな失敗でも、それは次への通り道…
だからこそ、彼女にはライバルたちの存在も、よりよい記録に挑むための「仲間」なのだと言う。
その証拠に今回も、トリックで転倒してしまった選手を励まし、一方、ライバルが、自分を超える大技を決めても…駆け寄って、我が事のようにはしゃぐディダル選手。
伊佐風椰選手:
他の選手が失敗したら「あぁっ」て言って、「次は乗れる」とか「今のめちゃめちゃ惜しかった」とか、一人ひとり駆け寄ってって、そういうことを言ったりとか。
そして迎えた決勝戦。自身の技の失敗が続く中でも…前半のランを楽しげに終え、迎えた後半のトリック。4本終わって1本しか成功しないまま5本目に…
難関パートにチャレンジするも、着地で惜しくも転倒。
それでも、NEXT ONEに挑戦し続ける、彼女の笑顔が曇ることはなかった。
転んだままの姿勢で会場へ手を振ると、世界が注目したあの満面の笑顔で…
マージェリン アルダ・ディダル選手:
(日本語)ありがとうー!!
” 敗者の笑顔 ”が私たちにくれたもの
彼女はかつて、取材にこう答えている…
マージェリン アルダ・ディダル選手:
スケートボードは人生と同じで、何度失敗しても立ち上がって進み続けるもの。結果がどうあれ、私はここにいられることが嬉しいのです。
最高の舞台で、限界へ挑めることがうれしくて仕方ない。そう言って笑う彼女の姿に、世界中がハッとしたのではないだろうか…?
メダルを取ること、それだけが全てなのか…
そもそもオリンピックとは、なんのためにあるものだったのか…
ディダル選手から日本へのメッセージ
7月30日、伊佐選手が取材の最後に、ディダル選手から日本のファンへ送られたメッセージ動画を見せてくれた。
マージェリン アルダ・ディダル選手:
ハーイ、マージェリン・ディダルです!
愛とサポートに「どうもありがとう」とお伝えしたいです。特に日本に、オリンピック2020を開催してくれてありがとうございます!スケートボードの試合を開催してくれてありがとうございます。
食べ物はすごく美味しいし、最高の経験でした。
本当にありがとうございます!そしておめでとう!
日本の皆さん愛しています!
(「Mr.サンデー」 8月1日放送分より)