私たちは日常的に、現実および想像上の空間で、物を動かしたり整理する「空間的スキル」を使っています。
部屋の間取りを頭に思い描いて、テレビやソファを置く位置を決めたりした経験もあるでしょう。
こうした空間的スキルは、数学の能力の深いかかわりを持つと言われています。
今回、カリフォルニア大学リバーサイド校(UC Riverside・米)の最新研究により、これまで不明瞭であった、空間的スキルと数学的スキルの関連性が確認されました。
それによると、年齢や性別を問わず、空間的スキルを高めることで、数学の達成度も向上するとのことです。
研究は、11月19日付けで学術誌『Psychonomic Bulletin & Review』に掲載されています。
目次
- 空間-数学的スキルの関連性は「年齢・性別」に関係しない
空間-数学的スキルの関連性は「年齢・性別」に関係しない
空間的スキルと数学的スキルの関連性は、以前から多くの識者が指摘するところでした。
たとえば、空間把握力の高い子どもや学生では、数学の成績が良いことが確認されています。
しかし、両者のスキルの関連性を示唆する多くの研究があるにもかかわらず、空間的スキル、数学的スキル、および一般的な知能の間の詳しい関係はわかっていませんでした。
また、性別、年齢、その他の言語能力や推論能力が、空間的スキルと数学的スキルの関係に与える影響についても、十分に検討されていません。
そこで本研究チームは、過去20年間に発表されたこのテーマに関する論文をスクリーニングし、研究基準をすべて満たした45本の論文を選定。
これらの論文から関連するデータを抽出し、2つの統計解析を行いました。
1つ目の分析の結果、空間的スキルと数学的スキルの関連性は、性別や学年に強く影響されないことが分かりました。
2つ目の分析では、空間的スキルと数学的スキルの関連性は、流動的推論力(fluid reasoning)と言語能力が媒介することが示されました。
(流動的推論力とは、新たな問題を解決し、その問題を支えるパターンや関係性を柔軟に見極める能力を指す)
それでいて、空間的スキルと数学的スキルの間には、両者に固有の関係も残っていたとのことです。
今回の結果は、空間的スキルを向上させることで数学的スキルも高まることを証明するものです。
研究主任のキナーリ・アティト(Kinnari Atit)氏は、次のように述べています。
「空間的スキルは鍛えられるものであり、訓練や空間的な作業の経験によって向上するという証拠があります。
それから、空間能力の発達は、正式な学習経験にのみ依存するものではありません。
これまでの研究により、空間能力は、ブロック遊びやパズル、ビデオゲームなどの活動に参加することで向上することが分かっています」
また、空間および数学的スキルの関連性は性別・年齢に関係しないため、空間的スキルの訓練は、小学校以後の中等および高等教育でも役立つでしょう。
加えて、流動的推論力や言語能力を向上させることで、空間的スキルと数学的達成度をさらに高められることが期待されます。
数学に苦手意識のある子どもには、積み木遊びやパズルゲームを積極的に勧めると良いかもしれません。
参考文献
Study confirms link between spatial and math skills
https://phys.org/news/2021-12-link-spatial-math-skills.html
元論文
Examining the relations between spatial skills and mathematical performance: A meta-analysis
https://link.springer.com/article/10.3758%2Fs13423-021-02012-w