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<「お下品」な動画で人気を博していた女性のアカウントが「永久停止」に。ネットの不適切コンテンツ一掃を進める当局の粛正だと話題に> TikTokの中国本土版「抖音(ドウイン)」で700万人以上のフォロワー数を誇る型破りなライブ配信者が9月2日、何の前触れもなくソーシャルメディアから削除された。中国の規制当局は現在、国内のエンターテインメント業界の粛清を進めている真っ最中だ。 ここ1週間ほどの間にソーシャルメディアで起きている大きな変化を見守ってきたユーザーたちは、中国共産党の幹部にとって「正しい」エンターテインメントとは何なのかと、首を傾げ始めている。 20代の配信者であるグオ・ラオシ、通称「グオ老師(日本語で先生の意)」は、ドウインをはじめとするソーシャルメディアでカルト的な人気を博していた。その投稿スタイルは、いわゆる「アンチ・セレブリティ」。ソーシャルメディアの世界での常識に縛られず、すっぴんで動画に登場し、型にはまった女性配信者のスタイルを拒絶していた。 中国中部に位置する湖北省出身のグオは、流行の音楽に合わせてリップシンクしたり、食べたことのないものに初挑戦して変な反応をしたりする姿を配信していた。短い動画のなかで、自分の足の臭いを嗅いだり、コミカルなパフォーマンスをしたりして話題になることもあった。 700万人を超えるグオのフォロワーが、彼女の身に起こった不運を知ったのは、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」のグオ個人のアカウントに、1枚のスクリーンショットが投稿されたときだ。そこには、ドウインの「コミュニティガイドラインに違反した」ため、アカウントを「永久停止」する旨が書かれていた。 グオは、自分がどの規約に違反したのかわからないとして、こう投稿している。「説明してほしい。私は無実だ」。その直後には、ウェイボーのアカウントも停止されたが、それが永久的措置なのかどうかは不明だ。 ファン以外からも「厳し過ぎる」の声 中国ではこのところ、インターネットやセレブ文化の一斉粛清が進められており、それを知るユーザーたちは、グオに起きたのはこの粛清の一環だったと見ている。しかし、ファンではない人たちの一部からも、こうした一斉規制は度を越しているのではないかという疑問の声があがっている。 あるユーザーは、「どうしてグオを禁止するの? 彼女は何も盗んでいないし、人をだましたわけでもない。グオのコンテンツが自分にとって価値がないと思うのなら、見なければいい」と投稿した。別のユーザーは「バイラルなインターネット世界全体が沈下しつつある」とコメントした。 ===== 一方で、「グオは合理的な理由もないまま拡散され、合理的な理由もないままカルト的な人気を得た。ずっと前に禁止されてもよかった」とする投稿もあった。 中国のメディアを監視する国家ラジオテレビ総局(NTRA)は9月2日、放送局に対して、中国の大スターに支払われる出演料は規制される必要があり、脱税した者は罰せられなくてはならないと通告した。 NTRAが発表した新ガイドラインは、「下品」「不健全」と考えられるコンテンツを禁止している。これは、政治的に正しくないとされる意見を持ったり、中国政府の厳しい基準から外れると見られるインターネット・セレブを排除することで、愛国的環境の醸成を目指すキャンペーンの一環だ。 配信者らに職業倫理の研修を 悪影響を及ぼし有害だとされる「セレブのファンカルチャー」も、非難の矢面に立たされている。国家インターネット情報弁公室(CAC)は8月27日、こうした「無秩序な」文化を許容しないとする通達を出した。ドウインは9月1日、有名人のゴシップや噂を広めていた1900のファングループを削除したと発表していた。 また、中国の文化省は2日、ライブ配信者やインターネットの有名人に対して、職業倫理に関する研修を受け、一定の倫理的な規律を維持するよう求めた。行いやスタイルについても一定の基準が設けられる。 中国政府によるインターネット取り締まりが行なわれるなか、著名な中国人女優で、映画監督や実業家としても知られるヴィッキー・チャオ(趙薇)の身にも「何か」が起こり、話題となっている。 真相は依然として謎に包まれているものの、8月26日にはチャオが携わった作品などが、何の説明もなく人気の動画配信プラットフォームから一斉に削除されたのだ。ただし、彼女自身はまだ何かの罪に問われているわけではない。 (翻訳:ガリレオ) ===== <グオのアカウント停止を伝えるドウインの動画より> douyin