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鳥類愛好家となって鳥を収集するボードゲーム「ウイングスパン」は2019年度のドイツ年間ゲーム大賞でエキスパート部門大賞を授賞し、2021年3月時点で全世界で売上個数が60万個を突破するなど、大ヒットを記録しました。そんなウイングスパンが作られた経緯とその魅力について、海外ニュースサイトのSlateが解説しています。

Wingspan: Elizabeth Hargrave’s board game is changing how we play.
https://slate.com/culture/2021/08/wingspan-board-game-elizabeth-hargrave-review-profile.html

ウイングスパンは、以下の記事でレビュー済み。

美しい野鳥をいざなって「鳥のパラダイス」を作り上げるボードゲーム「ウイングスパン」プレイレビュー – GIGAZINE


また、拡張版である「欧州の翼」「大洋の翼」のプレイレビューは以下の記事にまとめられています。

鳥たちを生息地に誘いポイントを稼いでいく「ウイングスパン拡張:欧州の翼」&「ウイングスパン拡張:大洋の翼」プレイレビュー – GIGAZINE


Slateによれば、ウイングスパンは「エンジン構築ゲーム」と呼べるとのこと。時間の経過と共にエンジンが温まってより速く動けるように、ゲームが進むにつれて、鳥の組み合わせが毎ターンポイントを生み出すのに効率的になっていく仕組みだからです。ある鳥が卵を産むと、その卵から得点が得られるだけでなく、より多くの鳥をプレイできるようになり、その鳥もまたより多くの得点をゲットし、さらに別の方法で得点を生み出すようになります。


ウイングスパンで戦略がうまくはまれば、生態系の中の鳥たちが、複雑で相互に利益をもたらす関係の網の目のようにつながっていきます。連鎖効果を発揮させることがウイングスパンをプレイする上で最も大きい楽しみの1つだとSlateは述べています。

ウイングスパンをデザインしたエリザベス・ハーグレーブ氏は医療政策アナリストで、もともと熱心なボードゲーマーというわけではありませんでした。しかし、2005年の冬に友人とスキー旅行に出かけた際に、それほどウインタースポーツが好きではなかったハーグレーブ氏は友人と遊ぶボードゲームに夢中になったとのこと。ハーグレーブ氏は「外に出たくないという気持ちが強く、ゲームそのものに夢中になってしまいました」とコメントしています。


数学パズルが好きだったハーグレーブ氏は、ワシントンにある自宅に戻ってからも「カタン」や「カルカソンヌ」などのボードゲームをプレイしまくりました。しかし、プレイしているうちに、ハーグレーブ氏は中世ヨーロッパの村や列車、地中海沿岸の貿易経済をテーマにしているものが多すぎることに気づいたとのこと。ハーグレーブ氏は「なぜ私が魅力を感じるテーマのゲームはないのだろう。それなら、自分で作ってみよう」と考え、ゲームを作ろうと思い至ったそうです。

ゲームを作る上で、ハーグレーブ氏は「鳥を扱ったゲームを作ろう」と考えたそうです。テーマを鳥に設定したのは、ハーグレーブ氏が自然愛好家であり、バードウォッチングを趣味にしていることがきっかけ。「鳥を扱ったゲーム」という漠然としたアイデアから、膨大な数のスプレッドシートを使いながら4年間にわたってゲームを組み立て、家族や友人とテストプレイを何度も重ねました。

ハーグレーブ氏はバードウォッチングで野生の鳥を見つけるだけではなく、見つけた鳥をリスト化していくことも好きで、野鳥観察記録サービス「eBird」のアプリには755羽も登録しているそうです。この経験がゲームに反映され、テストプレイに参加した人は皆、「鳥を集めてボードを鑑賞するのがこのゲームで一番好き」とコメントしたそうです。また、ウイングスパンでは、ゲームに運の要素が絡んでいても、最終的に全員が確実にポイントを獲得できるように注意して設計したとのこと。


テストプレイを重ねてゲームを完成形にもっていったハーグレーブ氏は、さまざまなゲーム会社にメールを送り、2016年にボードゲーム大会のイベント会場で実際にいくつかの企業と面接を行ったとのこと。その中でStonemaier Gamesがいくつかの修正すべき点を挙げ、ゲームを修正すれば製品化を検討すると返信したとのこと。ハーグレーブ氏がゲームを作ったのはウイングスパンが初めてだったので、契約の前金はなく、売れなければ報酬はない状態でした。

しかし、ウイングスパンは見事に大ヒット。その勢いは、初版を1万個生産したにもかかわらず販売開始前に予約ですべて売れてしまったため、Stonemaier Gamesがあわてて謝罪コメントを出すことになるほど。ハーグレーブ氏によれば、ウイングスパンによって1年間に得た収入は、本業の収入よりも多かったそうです。

ウイングスパンのビジュアルは非常に美麗で、特にゲームに使われている鳥の絵は非常に正確であることから、ゲーマーだけではなく、バードウォッチャーからも好評を得ました。そのため、ウイングスパンの存在は、バードウォッチャーの間でも話題になったとのこと。ハーグレーブ氏は「私は、熱心なゲーマーがチャレンジしたくなるようなゲームにすることでしたが、複雑すぎてもいけないと考えていました。必ずしも多くのボードゲームをプレイしたことがない人にも親しみやすいものにすることを目標にしていました」と述べています。


さらにウイングスパンは、女性からの人気も高いそうです。ウイングスパンの公式Facebookグループは女性メンバーが40%を占めているとのこと。また、ハーグレーブ氏は男性のゲーマーから「やっと妻が一緒に遊んでくれるゲームができた!」という喜びのメールを何度も受け取ったそうです。従来のボードゲームの多くが戦争や城をイメージした重々しいパッケージであるのと異なり、ウイングスパンは美しい鳥の絵が描かれたパッケージになっているのが一因だとSlateは指摘しています。


また、Slateは、「ジェンダーとゲームの関係を一般化するのは簡単です。男性の方が女性よりも競争心が強いのです」とコメントしています。ハーグレーブ氏は過去の調査や学術研究でも「女性はコミュニティを促進し、リラックスできる身近なゲームにモチベーションを感じやすい傾向にある」ことに注目しており、「私の夫もゲームにはすごく勝ちたがっていて、勝てないとゲームの楽しさが半減するそうです。でも私は、ゲームに勝った方がわずかにいいけど、ゲームができただけでも満足だと思っています」と述べました。

そして、Slateは「ウイングスパンは、他人と直接対立するようなプレイはしにくいのがポイントです。例えば、自分だけではなく、プレイヤー全員のために餌を集めてくれる鳥を集めるなど、相手を助けるようなプレイをすることが可能で、ゲームもそれをオススメしています。また、大勢でプレイしたほうがより多くの得点を得ることができます」と指摘。加えて「ハーグレイブ氏のゲームデザインは『隣のプレイヤーに勝つこと』ではなく、『一緒に成功するように優しく働きかける』というものです。このゲームのスマートな協調性は、自然保護主義の精神と密接に関係していると思います」と述べ、勝敗を求める競争心ではなく他のプレイヤーと協力することにゲームの楽しさを求めたことがウイングスパンの成功した要因の1つだとしています。


ハーグレーブ氏は「ゲームが与えてくれるヒントに従えば、ゲームが終わる頃には美しい鳥たちの絵画ができあがります。ポイントは1位じゃないかもしれませんが、何かを築き上げたことになります」と述べています。Slateは「ウイングスパンの箱に入っているものは芸術作品ではなく、絵の具や楽器のようなものです。ウイングスパンをプレイすると、家族や友人と一緒にアートを作ることができます。これは、一時的なものとはいえ、美しく満足のいくものを生み出す創造的な旅です」と述べています。

ウイングスパンは記事作成時点ではAmazon.co.jpで税込5270円で購入可能。

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また、デジタル版が、Steam・Nintendo Switch・iOS・Androidでリリースされています。

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「WINGSPAN (ウイングスパン)」をApp Storeで
https://apps.apple.com/jp/app/id1459520638

Wingspan (ウイングスパン) – Google Play のアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.MonsterCouch.Wingspan

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