アフガニスタンから米軍が撤退し、タリバン勢力が全土を制圧して5カ月余りが過ぎた。暫定政権は、国際社会に正規の政権として承認するよう求める一方、国内を拠点とする過激派組織の一掃には至っていない。2021年12月24日のパキスタンの英字紙ドーンは、この問題を社説で論じた。
相互に戦闘員を共有
米国国務省は2021年12月16日、2020年に世界各地で起きたテロ活動に関する年次報告書を発表した。それによれば、過激派組織「イスラム国」(IS)などが従来の拠点を失い、アフリカをはじめ、新たな地域に活動を広げつつあるなど、テロの脅威は世界各地に分散化する傾向にあり、犠牲者は前年度より増加しているという。
これを受け、社説は「米軍が撤退したアフガニスタンもそうした拠点の一つになりつつある」と指摘し、次のように述べる。
「アフガニスタンのガニ政権が倒れて以来、この地域で過激派組織の活動が活発になっている。米国務省の最新の報告書は、パキスタンとアフガニスタンがすぐに反テロ対策をとらなければ何が起きるか分析し、アフガニスタンやパキスタンで活動を展開している勢力として、パキスタン北西部を拠点とする過激派組織“パキスタン・タリバン運動”(TTP)や、タリバン、そして“ウズベキスタン・イスラム運動(IMU)”などのメンバーを挙げている。このうちTTPは、パキスタン・アフガニスタン両国国境地帯で3000人から5000人の戦闘員数を誇り、思想的にはアルカイダの考え方を引き継いでいるという」
なお、これらの組織は、単独ではなく、相互に連携しながら戦闘員を「共有する」特徴があるという。「過激派組織は、単独では行動しない。ISもアルカイダも何年もかけてそれぞれの名を知らしめようとしてきたが、常に他のグループと連携して戦闘員を確保しており、多くの戦闘員が複数の組織を行き来している。ISが掲げた“イスラム帝国”は、こうした組織間の交流の実態にきわめて馴染みやすい構想だったと言える」
「米国だけの問題ではない」
社説によれば、アフガニスタンのタリバン勢力は、国際社会からの承認を得ようとする一方、かつて自分たちを国境地帯でかくまった経緯のあるTTPとの対立は拒否している、という。「それがゆえに、アフガニスタンを国際テロ活動の拠点にしない、という国際社会との約束がなかなか果たされずにいるのだ」と、社説は指摘する。
また、ISについても、「米国がアフガニスタンから撤退するやいなや、ISは国内に拠点を確保して組織を再構築し、地域を脅かす存在として復活した」と指摘。その上で、「米国には、確かに、テロとの戦いを掲げる十分な理由がある。しかし、これは一カ国に限った問題ではない。米国も、パキスタンも、そしてアフガニスタンも、手を携えて立ち向かわなければならない」と、訴える。
アフガニスタンと国境を接するパキスタンにとって、テロは日常的な脅威であり続ける。米国は、関係各国の実情を鑑み、寄り添い、歩調を合わせながら、長い取り組みを続ける必要がある。地理的、あるいは軍事的に、直接的に脅かされないように思われる国々であっても、国際社会が一丸とんたて手を携え、取り組まなければ、2011年の世界同時多発テロ事件が示したように、私たちの世界は再びテロに飲み込まれるだろう。
(原文https://www.dawn.com/news/1665514/report-on-terrorism)
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