もっと詳しく
ボクシングやアメフトをするとアルツハイマー病のリスクが高くなる
Credit:Depositphotos

全ての画像を見る

ボクシングやアメフトなどの、競技者同士が力いっぱいぶつかり合うフルコンタクトスポーツでは、毎回脳に強い衝撃が加わります。

新しい研究では、アメリカ・ボストン大学(Boston University)アルツハイマー病研究センターに所属するマイケル・アロスコ氏ら研究チームが、脳をMRIで見えたときの白い斑点が、アルツハイマー病に関連していると発表しました。

特にフルコンタクトスポーツの選手はこの傾向が大きく、アルツハイマー病のリスクは3倍だと判明したそう。

研究の詳細は、11月24日付の科学誌『Neurology』に掲載されています。

目次

  • 加齢によって進行する「大脳白質病変」
  • ボクサーやアメフト選手は大脳白質病変が進行しやすく、アルツハイマー病のリスクも高い

加齢によって進行する「大脳白質病変」

MRIスキャンで判明する脳の症状の1つに「大脳白質病変(英訳:white matter hyperintensities)」があります。

これは脳のMRI画像では白い斑点となって表れます。

大脳白質病変のMRI画像と進行度
Credit:Aurauma Chutinet(Chulalongkorn University)_White Matter Disease as a Biomarker for Long-Term Cerebrovascular Disease and Dementia(2014)

症状が進行するにつれて白い部分は大きくなり、複数のかたまりになったり、脳の大部分に広がったりすることもあります。

そして、この白い斑点は脳の毛細血管に血液が流れないことで変異した部分だと考えられています。

大脳白質病変は加齢とともに自然と進行していくのですが、高血圧により過度な進行が見られる場合もあるようです。

また脳梗塞の原因になることも知られており、若い人でも進行度によっては経過観察が必要となります。

さて、主に加齢や高血圧との関連が明らかになってきた大脳白質病変ですが、他の病気との関連はあるのでしょうか?

また脳の状態やダメージによって、大脳白質病変が進行しやすい場合があるのでしょうか?

今回の研究では、特にボクサーやアメフト選手など、「繰り返し脳に衝撃を受けてきた人」との関連性が調べられました。

ボクサーやアメフト選手は大脳白質病変が進行しやすく、アルツハイマー病のリスクも高い

調査の対象となったのは、脳提供に同意していた平均67歳の故人75名です。

対象者の89%はアメフト選手であり、残りもボクシングやサッカーなどのコンタクトスポーツ選手、また退役軍人でした。

彼らの脳は、生前に繰り返し衝撃を受けてきた、ある意味「特別な脳」です。

そして解剖の結果、対象者の75%(53人)は、慢性外傷性脳症(俗に言うパンチドランカー)になっていました。

亡くなった元アメフト選手の脳は、大脳白質病変が進行していた
Credit:Depositphotos

さらにチームは、彼らの大脳白質病変や他の病気との関連性を調査。

その結果、コンタクトスポーツ歴が長い人ほど、大脳白質病変が進行しており、日常生活が難しくなっていた(介護者談)と判明しました。

また大脳白質病変が進行するごとに、重度の小血管病(small vessel disease)になる確率が2倍高くなると分かりました。

さらにアルツハイマー病のバイオマーカーとなる物質が前頭葉に蓄積する可能性も3倍増えるようです。

以前からボクシングやアメフトが脳に与える影響は問題視されてきました。

今回の研究でも、それらのスポーツによって大脳白質病変が進行し、アルツハイマー病のリスクも高くなると判明したのです。

もしコンタクトスポーツの関係者なら、脳障害のリスクをいつも考慮しているべきでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Brain Lesions on MRI Linked to Years of Playing Football

Brain Lesions on MRI Linked to Years of Playing Football


Men who were in boxing clubs as youngsters may be THREE times as likely to develop Alzheimer’s disease, study warns
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10246103/Health-Men-boxed-youngsters-THREE-times-likely-develop-Alzheimers.html?ns_mchannel=rss&ns_campaign=1490&ito=1490

元論文

Association Between Antemortem FLAIR White Matter Hyperintensities and Neuropathology in Brain Donors Exposed to Repetitive Head Impacts
https://n.neurology.org/content/early/2021/11/23/WNL.0000000000013012