自然の生命力と雨漏りの恐ろしさが一目で分かるコンテストがある。それが一般社団法人日本防水協会が開催する「『雨漏りでこんなキノコが育った!』フォトコンテスト」だ。
戸建てや集合住宅などで、雨漏りや湿気が原因で自生したと思われるキノコの写真を、同協会が初めて募集していた。75作品の応募があり、グランプリ1作品と準グランプリ5作品が10月7日に発表されたのだ。
その中でグランプリに輝いたのは、風呂場に生えたというキノコ。壁からひょっこり白く細い柄が伸び、その先にはクリーム色の大きな傘が開いている。
準グランプリでもトイレや風呂場、カーテンレールの隙間と、水回りや湿気が多くなりがちな家の箇所で、種類の異なるキノコが思いもよらぬ形で姿を見せていた。
しかしキノコが生えていたということは、相当な湿気があったということだろう。住宅の環境としてはあまり良くないはずだ。
選定基準は「どれだけ立派に育ってしまったのか」「哀愁感」といったものだそうで、たしかにどの受賞作品も立派なキノコでありながら、「なぜこんなところに生えてきたのか…」といった哀愁を帯びているように見える。
「悪ふざけではない」建物管理の大切さを知ってほしい
こんな場所から…といった自然の生命力だけでなく、雨漏りを放置することの恐ろしさが1枚で分かる面白いコンテストだが、なぜこのようなコンテストを開催することにしたのだろうか?そして、実際にキノコが生えてきたといった相談はあるのだろうか?
日本防水協会の事務局・広報担当の稲垣佳成さんに話を伺った。
ーーなぜ「『雨漏りでこんなキノコが育った!』フォトコンテスト」を開催したの?
見方によっては悪ふざけの一環にとらわれてしまうかもしれませんが、至って真面目に当フォトコンテストを通して、日々の建物管理の大切さ、雨漏りに対する知見を高めていただきたいといった啓蒙活動と、当協会をより多くの方に知っていただきたいといった想いで開催いたしました。
ーー“キノコ写真”のコンテストとなった理由は?
防水協会の打合せのなかで「キノコは湿気の多い場所を好み、雨漏りによる室内の湿気上昇による菌の繁殖などによって、キノコの被害が発生する」といった話題から、今回の企画に繋がりました。
ーー75作品の応募があったが、その数と実際の作品を見てどう思った?
想定以上のご応募に感謝しております。また、同時に同じような悩みをお持ちの方が多数いらっしゃり、どうにかしたいといった気持ちが伝わりました。ただ75作品すべてならべるとさすがに圧倒されましたね。
もしキノコが生えてしまったら?
ーー実際のところ、雨漏りに悩む人はキノコにも悩んでいる人が多いの?
過去キノコで悩んでいるといったご相談は今のところございませんが、雨漏り漏水に関するご相談は月に10件ほどございます。
もし今後(キノコの相談が)あるとすれば、梅雨の時期から秋くらいにかけて相談がでてくるかもしれません。中には賃貸にお住いの方もいらっしゃると思います。もし賃貸にお住いの方でしたら、保証の問題などもございますので、先ずは大家さんか管理会社にご相談いただきたいです。
ーーキノコが生えないようにするにはどうすればいい?
対策としては、きちんと建物の管理をしていただき、ひび割れがあるなど少しでも異変に気づいたら、専門家の方に連絡していただき判断を仰ぐのが良いです。
ーーもしキノコが生えてしまったら?
まずはキノコをとっていただき、塩素系の薬剤で殺菌していただきます。そのあとは、腐朽菌を防除する薬剤を散布いただくことになります。ただし一時の対処法なので、キノコが生えてしまった大元の原因を対処されることをおすすめします。
雨漏りの対策は“健全なメンテナンス”
ーーキノコが生えるほかに、雨漏りによる被害にはどういったものがある?
雨漏りを放置すると建物の劣化が加速します。建物は劣化してしまうことで不動産としての資産価値も下がってしまいます。また害虫・害獣被害、菌(カビ)の浸食などもあり、人体への影響が出る可能性も大いにあります。
ーーどういったことが原因で雨漏りになるの?
建物の構造などによっても原因は様々です。一例ですが、防水シートの劣化、コーキングの劣化、コンクリートの劣化などがあげられます。
同協会によると、原因の一例として、例えば鉄筋コンクリート造の建築物の場合は、コンクリートの劣化が雨漏りの原因となるという。
雨水がコンクリート内部に浸透すると中の鉄筋のサビが進行し、そのサビが膨張しコンクリートを押し上げ、進行していくと爆裂につながるのだ。雨漏りの原因はこういった爆裂前のヒビが広がり、そこを雨水が伝ってくるケースが多いとのことだ。
こういった「雨漏りの対策」は、原因と同様に、建物の構造などによって様々な方法がある。だが何より重要なのは、“健全なメンテナンス”だという。
管理状態が良好であるか否かで、建物の構造物の寿命は大きく変わるとされる。雨漏りという形で現れる前に、建物にヒビやサビなどの経年劣化した部分はないか、今一度確認しておくことが大切だ。そして、現段階で防水工事が本当に必要か、もうひと頑張りしてもらうのか、立地や劣化具合、費用や将来などを考え、判断してほしいという。
なお、「『雨漏りでこんなキノコが育った!』フォトコンテスト」の次回は現在予定していないとのことだが、反響が大きかったこともあり前向きに検討していくそう。
キノコが生える前に建物の異変に気づくことが重要となる。一度、隅々まで家の状態を確認してみてはどうだろうか。