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幹細胞が脱毛に影響を与える可能性のある新しいメカニズムが発見された
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多くの男性が加齢に伴って、薄毛や脱毛を経験しています。

これは毛包と呼ばれる毛を作り出す器官内で、細胞を分化させている幹細胞が失われることで発生しているとわかっています。

しかし、なぜ毛包幹細胞が老化によって失われてしまうのか、そのメカニズムは未だによくわかっていないのです。

米国ノースウェスタン大学(Northwestern University)の研究チームは、初めて生きた生物の幹細胞が老化とともにどうなるかを追跡監視し、幹細胞が本来あるべき位置から移動してしまい、移動先に環境に慣れずに死んでしまうことを発見しました。

これは幹細胞を固定する接着剤が失われるためで、チームはこの接着剤を作り出す遺伝子も特定しています。

この遺伝子をもとに戻すことができれば、脱毛現象を逆転させられるかもしれません。

研究の詳細は、10月4日付で科学雑誌『Nature Aging』に掲載されています。

目次

  • 毛根が死ぬ理由
  • 細胞の接着剤がなくなっていた

毛根が死ぬ理由

私たちの毛は常に死と再生を繰り返しています。

これは毛包と呼ばれる皮膚内の器官(一般的には毛穴と呼ばれる)が、常に毛を作り出しているためです。

俗にハゲと呼ばれる状態が発生してしまうのは、この毛包が縮小し、毛を生み出す機能が失われてしまうために起こります。

そのため、よく一般ではハゲることを「毛根が死んだ」と表現されるのです。

もう少し詳しく説明すると、毛髪は毛母細胞から作られますが、この細胞は毛包内のバジルと呼ばれる領域に存在する「毛包幹細胞」が分化して作り出しています。

毛包が機能しなくなるのは、毛包幹細胞が老化とともに減少してしまうためなのです。

毛髪は毛包内のバジルに存在する毛包幹細胞が根本的な起源となっている。毛包幹細胞は老化とともに減少するがその理由はよくわかっていない。
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つまり、理屈としては毛包幹細胞を維持することができれば、ハゲを癒やすことが可能になるということなのです。

これまでの研究では、若い状態ではたくさんあった毛包幹細胞が、老化後に減少していることは確認していました。

しかし、生きた動物の老化のプロセスを直接追跡した人はまだいないため、老化によって実際何が起きているのかはよくわかっていませんでした。

そこで、今回ノースウェスタン大学の研究チームは、ハゲのモデルとして生きたマウスを使い、幹細胞の変化をリアルタイムに監視する実験を行ったのです。

チームはマウスの毛包幹細胞に緑色蛍光タンパク質でマークを付け、これを長波長レーザーを使って何日も繰り返し監視し続けたのです。

そして研究チームは、場合によっては1つの毛包を26日間も観察し続け、毛包の分解の全過程を見ることに成功しました。

そこで彼らが見たのは、幹細胞が毛包から逃げ出しているという事実でした。

細胞の接着剤がなくなっていた

新しい発見はハゲを逆転させる可能性がある
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これまでの研究では、多くの科学者がハゲる原因は、毛包幹細胞が死んだり、老化で細胞分裂できなくなることで起きると考えていました。

今回の研究中でも細胞死は確認されていて、今回の研究の主執筆者であるルイ・イー(Rui Yi)氏は、「これまでの研究で示されてきた理論を否定しているわけではありません」と述べています。

ただ、彼らの新しい発見は、老化したとき毛包内の状況が、思っていたのと少し異なっていたことを報告しており、ハゲる問題について新しいメカニズムを提供しています。

それは、毛包幹細胞が、老化とともに毛包から真皮へと逃げ出していたということでした。

これにより、毛包内の幹細胞は大きく減少することになり、それが髪の毛の薄くなる原因になっていたのです。

毛包幹細胞は、毛包という微小環境の中で機能していた細胞です。そのため真皮に移動してしまった幹細胞は結局、適応できずに死んでしまいます

ではなぜ、毛包幹細胞は毛包から逃げ出してしまったのでしょうか?

研究チームは若いマウスと、老いたマウスの間で遺伝子発現レベルを比較しました。

すると、老いたマウスでは毛包幹細胞の接着に関連する遺伝子の発現が少なくなっていることを発見したのです。

つまり、毛包幹細胞には、正しい位置に細胞を固定している接着剤のようなものがあり、それが老化とともに失われてしまうため、毛包幹細胞は本来の場所からズレていき、真皮に移動して死んでしまうというのです。

細胞にも位置を固定している接着剤のようなものがある
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この事実を確認するため、次に研究チームはこの特定された細胞接着遺伝子(FOXC1とNFATC1)を、発現できないようにしたマウスを作成して様子を監視しました。

するとそのマウスは4カ月程度で急速に脱毛が進行し始め、12~16カ月以内に、完全にハゲてしまったのです。

これはこの2つの細胞接着に関連した遺伝子がハゲの原因である可能性を示唆するものです。

研究チームはこのことから、該当する遺伝子を修復することで、再び毛髪が蘇る可能性があるとして、追加の実験を行っています。

今回の調査結果は、髪や組織がどのように老化するかについての新しい洞察を提供しています。

もし追加の研究がうまく行けば、ハゲるという現象を逆転させて、再び毛が生える状態を取り戻せるかもしれません。

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参考文献

Stem cells lose their ‘glue’ and escape from hair follicle to cause hair loss
https://news.northwestern.edu/stories/2021/10/of-balding-mice-and-men-and-women/
Maintaining stem cell stickiness could be the key to battling baldness
https://newatlas.com/medical/stickiness-stem-cells-hair-loss-baldness-treatment/

元論文

Escape of hair follicle stem cells causes stem cell exhaustion during aging
https://www.nature.com/articles/s43587-021-00103-w?proof=tr