男女差がない子どもの声でも性別が判断できる理由

ほとんどの人が5歳以下の子供の声を聞いて性別を判断することができる
Credit:depositphotos

全ての画像を見る

大人の声を聞いたとき、声の主が男か女か判断できないということは通常ありません。

では、それが子どもの声だった場合はどうでしょうか?

カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の研究チームは、5~18歳までの子どもの音声サンプルを使って、声の変化や、聞き手がどのように認識するかを調査しました。

すると面白いことに、多くの人が5歳以下の子供の声でも、正確に声の主が男の子か女の子か判別することができたのです。

子どもの声には男女で解剖学的な違いがありません。

これは話者の言動や行動の違いから、多くの人が性別を判断している証拠である可能性があります。

この研究の詳細は、11月23日付で科学雑誌『Journal of the Acoustical Society of America』に掲載されています。

目次 子どもの声の性別 子どもの声の性別 誰もがよく知るように、男性には成長すると声変わりが起こり、女性とは明らかに異なる周波数の声を発するようにな…

全ての画像を見る

参考文献

Can We Perceive Gender from Children’s Voices?
https://publishing.aip.org/publications/latest-content/can-we-perceive-gender-from-childrens-voices/

元論文

Perception of gender in children’s voices
https://asa.scitation.org/doi/10.1121/10.0006785

「ハゲを逆転させて元に戻せる」可能性を持った遺伝子が見つかる!

幹細胞が脱毛に影響を与える可能性のある新しいメカニズムが発見された
Credit:depositphotos

全ての画像を見る

多くの男性が加齢に伴って、薄毛や脱毛を経験しています。

これは毛包と呼ばれる毛を作り出す器官内で、細胞を分化させている幹細胞が失われることで発生しているとわかっています。

しかし、なぜ毛包幹細胞が老化によって失われてしまうのか、そのメカニズムは未だによくわかっていないのです。

米国ノースウェスタン大学(Northwestern University)の研究チームは、初めて生きた生物の幹細胞が老化とともにどうなるかを追跡監視し、幹細胞が本来あるべき位置から移動してしまい、移動先に環境に慣れずに死んでしまうことを発見しました。

これは幹細胞を固定する接着剤が失われるためで、チームはこの接着剤を作り出す遺伝子も特定しています。

この遺伝子をもとに戻すことができれば、脱毛現象を逆転させられるかもしれません。

研究の詳細は、10月4日付で科学雑誌『Nature Aging』に掲載されています。

目次 毛根が死ぬ理由細胞の接着剤がなくなっていた 毛根が死ぬ理由 私たちの毛は常に死と再生を繰り返しています。 これは毛包と呼ばれる皮膚内の器官(一…

全ての画像を見る

参考文献

Stem cells lose their ‘glue’ and escape from hair follicle to cause hair loss
https://news.northwestern.edu/stories/2021/10/of-balding-mice-and-men-and-women/
Maintaining stem cell stickiness could be the key to battling baldness
https://newatlas.com/medical/stickiness-stem-cells-hair-loss-baldness-treatment/

元論文

Escape of hair follicle stem cells causes stem cell exhaustion during aging
https://www.nature.com/articles/s43587-021-00103-w?proof=tr

記憶喪失の原因となるタンパク質を特定! トラウマを消す薬ができる可能性も

記憶喪失薬のターゲットとなるタンパク質を特定!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

全ての画像を見る

嫌な記憶を忘れられる日がくるかもしれません。

英国ケンブリッジ大学で行われた研究によれば、新たに特定されたタンパク質(シャンク)の存在が、既存の記憶喪失薬の効果を測定する指標になるとのこと。

「記憶の喪失レベル」を客観的に判断する指標が判明したことにより、より効果の高い記憶喪失薬の開発につながると期待されます。

 

研究内容は2021年10月2日から5日までオンラインで開催される第34回ECNP年次会議にて発表されました。

目次 記憶喪失が起こるときシナプスでは特定のタンパク質が分解していた記憶を操作できれば不幸な人はいなくなる 記憶喪失が起こるときシナプスでは特定のタ…

全ての画像を見る

参考文献

Scientists Find Protein That Indicates Whether Emotional Memories Can Be Changed or Forgotten
https://scitechdaily.com/scientists-find-protein-that-indicates-whether-emotional-memories-can-be-changed-or-forgotten/

元論文

34th ECNP Annual conference
https://www.ecnp.eu/Congress2021/ECNPcongress

腸と乳腺はつながっている! 腸の免疫細胞が「母乳の抗体」を作っていた

腸で生産された免疫細胞が乳腺に移動して「母乳中の抗体」を作っていると判明!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

全ての画像を見る

母乳に抗体が含まれる仕組みが解明されました。

9月7日に日本の東北大学の研究者たちにより『Cell Reports』に掲載された論文によれば、腸で生産された免疫細胞が乳腺に移動し、母乳に含まれる抗体(IgA)を生産していたとのこと。

母乳には赤ちゃんの健康を助ける抗体が含まれていることが古くから知られていましたが、本研究によってその出所が世界ではじめて、明らかになりました

また研究では、特定の腸内細菌2種(後述)が母乳に含まれる抗体の生産に重要な役割を果たしていることも示されました。

腸内細菌と母乳に含まれる抗体との間に、いったいどんな関係があるのでしょうか?

 

目次 母乳の抗体を作る細胞は乳房以外の場所で作られている腸から乳腺に抗体を作る免疫細胞が移動している母乳に十分な抗体ができるには腸内細菌が必須母乳の…

全ての画像を見る

参考文献

腸管と乳腺はつながっている! ~腸内微生物が母乳中の抗体産生を促す~
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/09/press20210908-01.html

元論文

The gut microbiota induces Peyer’s-patch-dependent secretion of maternal IgA into milk
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(21)01098-6

3次元磁場で室内すべての家電を「ワイヤレス給電」する部屋が実現!

オールワイヤレス給電
Credit:笹谷 拓也(東京大学)_Room-scale magnetoquasistatic wireless power transfer using a cavity-based multimode resonator(2021)

全ての画像を見る

現在、スマホなどの小型電子機器はワイヤレスで充電できます。

そして最近、東京大学大学院工学系研究科に所属する笹谷 拓也氏ら研究チームは、スケールアップしたワイヤレス送電技術を実現しました。

部屋全体にワイヤレスで電力を送り、部屋のどこにいてもデバイスに給電できるようになったのです。

研究の詳細は、8月30日付の科学誌『Nature Electronics』に掲載されました。

目次 部屋のどこにいても電子機器を充電できる2種類の3次元磁場によって部屋全体のワイヤレス給電を可能に! 部屋のどこにいても電子機器を充電できる こ…

全ての画像を見る

参考文献

‘Charging room’ system powers lights, phones, laptops without wires
https://techxplore.com/news/2021-08-room-powers-laptops-wires.html

元論文

Room-scale magnetoquasistatic wireless power transfer using a cavity-based multimode resonator
https://www.nature.com/articles/s41928-021-00636-3

フキノトウから「がんを壊死させる」強力な化合物を発見!

フキノトウから「がんを壊死させる」強力な化合物が発見! 動物実験でも効果確認
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

全ての画像を見る

がん治療の未来はフキノトウが握っているかもしれません。

9月1日に、日本の岐阜大学の研究者たちにより『The Journal of Clinical Investigation』に掲載された論文によれば、日本原産のフキノトウの苦味成分から、極めて強力かつ副作用の少ない、抗がん作用のある化合物「ペタシン」が発見されたとのこと。

効果は動物実験においても確認されており、がんになったマウスの腹腔(横隔膜の下)にペタシンを投与することで、がん細胞の増殖と転移を防ぎ、縮小させることにも成功

さらにマウスの体には、目立った害も現れなかったそうです。

しかし、どうしてペタシンに、これほどの抗がん作用があったのでしょうか?

以下では、発見につながった研究者たちの地道な努力を紹介しつつ、ペタシンの秘密に迫っていきます。

目次 フキノトウから抽出されたペタシンはがん細胞のミトコンドリアを攻撃するペタシンは動物実験でも抗がん作用が確認されたペタシンは既存のミトコンドリア…

全ての画像を見る

参考文献

日本原産フキノトウから  がんの増殖・転移を強く抑制する物質を発見
https://www.gifu-u.ac.jp/about/publication/press/20210826.pdf

元論文

Petasin potently inhibits mitochondrial complex I–based metabolism that supports tumor growth and metastasis
https://www.jci.org/articles/view/139933

簡単なコーティングだけで歩くと発電できるハイテク木製フローリングが登場

新しい研究はフローリングをミニ発電機にした
Credit:Jianguo Sun et al.,Matter(2021)

全ての画像を見る

圧力を電気に変えるというデバイスがありますが、スイスの研究チームはそれを非常にエコな材料によって実現しました。

チューリッヒ工科大学(ETHZ)の新しい研究は、木製のフローリングにシリコンとナノ粒子のコーティングを施し、歩くだけで電気を生み出すナノ発電機を開発したと報告しています。

これはLED電球や小型電子機器を動かすのに十分なエネルギーを生み出せます

研究の詳細は、科学雑誌『Matter』に7月22日付で掲載されています。

目次 木材をナノ発電機にする歩いたり叩いたりするだけで発電する木の板 木材をナノ発電機にする ナノ発電機とは、微小な物理現象からエネルギーを取り出し…

全ての画像を見る

参考文献

Hi-tech wooden flooring can turn footsteps into electricity
https://www.theguardian.com/environment/2021/sep/01/hi-tech-wooden-flooring-can-turn-footsteps-into-electricity

元論文

Functionalized wood with tunable tribopolarity for efficient triboelectric nanogenerators
https://doi.org/10.1016/j.matt.2021.07.022

世界が仰天! パルクールに挑戦するロボット

複雑なパルクールコースを俊敏に駆け回るボストンダイナミクス社のヒューマノイドロボットAtlas
Credit:Boston Dynamics

全ての画像を見る

とうとうロボットはパルクールに挑戦します。

ロボットの研究開発を手掛ける米企業ボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)は、自社の人型ロボット「ATLAS(アトラス)」の能力を限界まで引き出し、複雑な障害物コースを駆け回る動画を公開しました。

ロボットは段差や隙間をジャンプで飛び越え、狭い平均台を器用に駆け抜けています。

その動画は驚きとともに猛烈な勢いで共有されていますが、ロボットがこんな器用な動作を獲得するには、人間同様に多くの失敗を積み重ねたトレーニングがあるのです。

目次 驚異の身体能力を発揮するヒューマノイドロボット開発者とこだわりとATLASのトレーニング 驚異の身体能力を発揮するヒューマノイドロボット もう…

全ての画像を見る

参考文献

LEAPS, BOUNDS, AND BACKFLIPS
https://blog.bostondynamics.com/atlas-leaps-bounds-and-backflips

医療目的でも利用できる親指サイズの高性能「口臭チェッカー」が開発される

呼気中の硫化水素を検知する小型口臭チェッカーが開発される
Credit:Depositphotos

全ての画像を見る

友人や家族に会うとき、また恋人とデートするとき、多くの人は自分の口臭が気になります。

私たちの望みは、「速やかに」そして「誰にも気づかれずに」口臭をチェックすることです。

韓国科学技術院(KAIST)材料科学工学科に所属するキム・イルドゥー博士ら研究チームは、親指サイズの小型口臭チェッカーを開発しました。

呼気中の硫化水素(H2S)を検知して素早く口臭を評価できます。

研究の詳細は、6月25日付の学術誌『ACS Nano』に掲載されました。

目次 正確な口臭チェックは難しい親指サイズの口臭チェッカーは86%の精度を誇る 正確な口臭チェックは難しい 口臭のほとんどは口腔内から発生する「生理…

全ての画像を見る

参考文献

Newly-Developed Portable Device Can Rapidly Detect Bad Breath
http://www.sci-news.com/medicine/bad-breath-sensor-09887.html

元論文

Surface Activity-Tuned Metal Oxide Chemiresistor: Toward Direct and Quantitative Halitosis Diagnosis
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.1c01350

「手汗」で発電する発電機が登場

手汗で発電するデバイス
Credit:JacobsSchoolNews(Youtube)_Fingertip-powered wearable(2021)

全ての画像を見る

現在、汗からエネルギーを生み出すデバイスはいくつか存在しています。

しかしそれらは汗をかくために激しく運動する必要があり、「大きな労力を費やして少量のエネルギーを生み出す」という構造でした。

最近、アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校(​UCSD)ナノエンジニアリング学部に所属するルー・イン氏ら研究チームは、指先の汗から発電できる薄型デバイスを開発しました。

装着者が寝ているだけで発電できるため労力が小さく、常に少量のエネルギーを生成できます。

研究の詳細は、7月13日付の学術誌『Joule』に掲載されました。

目次 絆創膏のように指先を包む発電デバイス寝ているだけで電子腕時計に十分な電力を供給可能 絆創膏のように指先を包む発電デバイス 開発された新しいデバ…

全ての画像を見る

参考文献

Finger sweat can power wearable medical sensors 24 hours a day Read more
https://www.newscientist.com/article/2283777-finger-sweat-can-power-wearable-medical-sensors-24-hours-a-day/
Your next phone charger could be at your (sweaty) fingertips! Scientists develop a thin, wearable strip that generates electricity from your moist hands as you sleep
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-9783891/Plaster-like-strip-generate-power-finger-sweat.html

元論文

A passive perspiration biofuel cell: High energy return on investment
https://www.cell.com/joule/fulltext/S2542-4351(21)00292-0#%20