鮭が持つ磁気センサーはどこからやって来たのか?

鮭
Credit:Oregon State University (2022)

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鮭や渡り鳥、蝶などの動物は磁気感覚というものを持っており、地球の磁場を利用して餌場や繁殖地へ正確に移動できることが知られています。

しかし、この磁気感覚はどのようにして獲得された機能なのでしょうか?

今回、米国オレゴン州立大学を筆頭とした国際研究チームは、鮭やその他の動物の特殊な受容体細胞内に形成されるマグネタイト結晶が、バクテリアによって開発された古代の遺伝子システムに根ざしており、大昔に動物に取り込まれた可能性があると明らかにしました。

この説は、鮭の鼻の細胞内から見つかったナノスケールの磁性体から得られた証拠に基づいています。

研究の詳細は、1月18日付で科学雑誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されています。

目次 動物の磁気感覚はどこから来たのか? 動物の磁気感覚はどこから来たのか? 一部の動物は地球の磁気を敏感に感じ取り、自分の目指す場所へのナビゲーシ…

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参考文献

New research on magnetite in salmon noses illuminates understanding of sensory mechanisms enabling magnetic perception across life
https://today.oregonstate.edu/news/new-research-magnetite-salmon-noses-illuminates-understanding-sensory-mechanisms-enabling

元論文

Conservation of magnetite biomineralization genes in all domains of life and implications for magnetic sensing
https://www.pnas.org/content/119/3/e2108655119

ロシア北極圏にて「光る雪」を発見 その正体とは?

ロシア北極圏で「光る玉」を目撃
Credit: Alexander Semenov/Facebook

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ロシアの北極圏で神秘的な光景が発見されました。

真冬の雪原の中で、いくつもの光の玉が青白く発光していたのです。

遊星からの物体X(The Thing)』をご覧の方なら、地球外生命体の可能性もあるため、容易に手は出さないでしょう。

しかし、現地の科学者たちは意を決して調査に乗り出しました。

果たして、光る玉の正体は何だったのでしょうか?

目次 光る玉の正体は「甲殻類」? 光る玉の正体は「甲殻類」? 光る玉が見つかったのは昨年12月のこと。 ロシア北西の白海(はっかい)沿いにあるモスク…

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参考文献

Scientists Perplexed By Glowing Snow In Russian Arctic
https://www.iflscience.com/plants-and-animals/scientist-perplexed-by-glowing-snow-in-russian-arctic/
SNOW that glows was found in the Arctic (PHOTOS)
https://www.rbth.com/science-and-tech/334605-snow-that-glows-was-found-in-the-arctic

「生物ってなぜ死ぬの?」東京大学・小林武彦教授に聞く 生物学からみる「死」と進化 NEWS おはよう日本 – NHK

https://www.nhk.jp/p/ohayou/ts/QLP4RZ8ZY3/blog/bl/pzvl7wDPqn/bp/p9zmDDLzrP/?cid=ohahk-tvqc-220110-1 生物はなぜ死ぬのか―― 日頃考えることは少ないけれど、誰もがドキッとする“死”について、生物学の視点で解説した新書が10万部以上、売れています。少し怖いけれど、気にせずにはいられない“死”について、著者の東…

太陽と月の重力が動植物の行動に影響を与えていると判明

月と太陽の重力は地球の動植物の行動に影響していた
Credit:depositphotos

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地球の生物はすべて、太陽・月による重力変動を受けながら進化してきました。

これは生物の活動リズムと関係する可能性があるということは、以前から指摘されていましたが、それはとても小さな力であるため科学的には軽視されがちでした。

今回、ブラジルのカンピーナス大学(UNICAMP)とイギリスのブリストル大学( University of Bristol)の二人の研究者は、重力潮汐力が生物の活動リズムを常に形成してきた知覚可能な力であることを、新たな研究から示しました。

この研究では、広範な文献のメタ分析を通じて、サンゴの繁殖力や、ひまわりの苗の成長、等脚類の遊泳パターンが太陽・月の重力と関連することを明らかにしています。

研究の詳細は、科学雑誌Journal of Experimental Botany』に11月2日付で掲載されています。

目次 月と太陽が地球に与える影響生命が示すリズム 月と太陽が地球に与える影響 今回の研究の話題に入る前に、まず太陽と月が地球に与えている重力の影響に…

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参考文献

Gravitational action of sun and moon influences behavior of animals and plants, study shows
https://phys.org/news/2022-01-gravitational-action-sun-moon-behavior.html

元論文

Are cyclic plant and animal behaviours driven by gravimetric mechanical forces?
https://academic.oup.com/jxb/advance-article/doi/10.1093/jxb/erab462/6417250

2021年の「マッドな生物実験ランキング」ベスト5!

【2021年】マッドな生物実験ランキング
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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2021年を送り2022年を迎える時期となりました。

そこで今回もナゾロジーのマッドサイエンス担当が、2021年に行われたマッドな実験(誉め言葉)を紹介していきます。

コロナ禍が続くなかにあっても、科学者たちによるマッドな実験はたゆむことなく続けられ、数々の衝撃の結果をもたらしました。

・世界を見る目がある人工培養脳

・脳に刺し込んだ電極による精神操作

・幹細胞から卵子や胎児そのものを作成する生命操作

などなど、ワクワクする研究がたくさん発表されています。

倫理の限界に挑戦し、時には踏み越え、マッドな実験は人類に貴重な英知をもたらしてくれました。

それではまず5位からの発表です。

目次 2021年の「マッドな生物実験ランキング」ベスト5! 2021年の「マッドな生物実験ランキング」ベスト5! 第5位:「目がある人工脳」を作り出…

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参考文献

ナゾロジー
https://nazology.net/archives/category/technology

歌声でミトコンドリアの熱生産を制御する鳥がいると判明!

歌でミトコンドリアの性能を調節する鳥がいると判明!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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歌がミトコンドリアの性能を制御するようです。

オーストラリアのディーキン大学で行われた研究によれば、暑い日に親鳥が発する特殊な鳴き声がヒナのミトコンドリアの性能を調節し、熱生産を抑えている、とのこと。

熱生産を抑えることで、ヒナが暑い環境に適応するのを助けていると考えられます。

ミトコンドリアについてはさまざまな研究がなされていますが、音によって機能が調節されることが示されたのは、今回の研究がはじめてです。

研究内容の詳細は12月8日に『Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences』に掲載されています。

目次 歌でミトコンドリアの性能を調節する鳥がいると判明!実際の気温よりも親の歌声が優先される 歌でミトコンドリアの性能を調節する鳥がいると判明! オ…

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参考文献

Parents’ “Heat Warning Calls” Change Zebra Finch Chicks’ Mitochondrial Function
https://www.iflscience.com/plants-and-animals/heat-warning-calls-change-zebra-finch-chicks-mitochondrial-function/

元論文

Prenatal acoustic programming of mitochondrial function for high temperatures in an arid-adapted bird
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2021.1893

うんちの頻度は「遺伝子によって決まっている」可能性がある 豪州研究

「うんち」の頻度は遺伝子によって決まっている可能性があると判明!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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うんちの頻度は遺伝子が決めているようです。

オーストラリアのモナッシュ大学で行われた研究によれば、うんちの頻度は14の異なる遺伝子の領域によってコントロールされている、とのこと。

どうやら私たちの遺伝子は「うんち」の生成だけでなく「うんち」の頻度も規定しているようです。

研究内容の詳細は12月8日に『Cell Genomics』に掲載されました。

目次 「うんち」の頻度は遺伝子によって決まっている可能性があると判明! 「うんち」の頻度は遺伝子によって決まっている可能性があると判明! あまり意識…

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参考文献

How often you may poop may be (partly) written in your genes
https://www.livescience.com/genetics-of-bowel-movement-frequency-poop-and-ibs

元論文

GWAS of stool frequency provides insights into gastrointestinal motility and irritable bowel syndrome
https://www.cell.com/cell-genomics/fulltext/S2666-979X(21)00085-9#%20

アブラムシを引き寄せて翅を生やして拡散する驚くべき「寄生RNA」

Credit:Canva

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寄生RNAにとっては生物もウイルスも道具のようです。

日本の北海道大学で行われた研究によれば、ウイルスの内部に潜む「寄生RNA(Y-sat)」に、アブラムシの形態を変化させる能力があることが発見された、とのこと。

「寄生RNA」とは、ウイルス遺伝子の中に配列情報となって寄生する、生命よりも情報に近い存在です。

今回の「寄生RNA(Y-sat)」は植物とアブラムシに感染するウイルスに寄生して、植物内に入り込むと葉の色をアブラムシの好む黄色に変色させ、葉の汁とともにアブラムシの体内に侵入。

その後、今度はアブラムシに翅を生えさせて、自らをさらに広範囲に拡散させているようです。

しかしそのような配列情報が、いったいどのようにして生物の体を操作しているのでしょうか?

研究内容の詳細は12月6日に『Nature Communications』にて公開されています。

目次 アブラムシに翅を生やさせて拡散する「寄生RNA」の仕組みを解明!「寄生RNA」は宿主の宿主までコントロールする アブラムシに翅を生やさせて拡散…

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参考文献

アブラムシを引き寄せ,翅を生やして自らを運ばせるRNAがいた!~植物ウイルスに寄生するY-サテライトRNA分子の驚くべき生き残り戦略の解明~
https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/12/rnay-rna.html

元論文

A plant virus satellite RNA directly accelerates wing formation in its insect vector for spread
https://www.nature.com/articles/s41467-021-27330-4

薬指が長い女性は「筋力が強い」という研究結果

指の長さで、女性の力強さがわかる
Credit: jp.depositphotos

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「指の長さ」は、驚くほど多くのことを知らせてくれます。

たとえば、今年2月に発表されたノルウェーの研究では、人差し指が長いと女性的な食事を、薬指が長いと男性的な食事を好むことが示されました。

そして今回、オーストリア・ウィーン大学(University of Vienna)の研究により、また新たな事実が判明しています。

2D:4D比(後述します)および筋力を調べた結果、人差し指より薬指の方が長い女性は、そうでない女性に比べ、握力が強いことが分かりました。

これは、出生前に母親の胎内で、テストステロンへの曝露率が高かったことが一因と考えられています。

研究は、12月8日付けで学術誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されました。

目次 薬指が長い女性は「力が強い」 薬指が長い女性は「力が強い」 2D:4D比とは、人差し指と薬指の長さの比率を示すもので、DはDigit(指)を、…

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参考文献

Women with an index finger shorter than their ring finger may be STRONGER, study claims
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10284421/Women-index-finger-shorter-ring-finger-STRONGER-study-claims.html

元論文

Handgrip strength and 2D : 4D in women: homogeneous samples challenge the (apparent) gender paradox
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2021.2328

遺伝操作で「絶対に片方の性別しか生まないマウス」を開発

遺伝操作で絶対に片方の性別しか生まないマウスを開発! 精度100%
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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ファンタジーの世界では、男の子だけあるいは女の子だけしか産まれないようにする「呪い」の話は、しばしば見かけます。

しかし今日に至るまで人類は、この「呪い」と同じ現象を脊椎動物で再現するような科学水準には達していませんでした。

X染色体やY染色体などの性染色体の組み合わせによって性別が決まることが解明され、いくつかの産み分け方法が開発されてはいましたが「絶対に一方の性別しか産ませない」ようにさせるのは、意外に難しかったのです。

しかし英国フランシス・クリック研究所(FCI)で行われた研究によって、人類はマウスの産む子供を100%の精度で、どちらかの性別に限定する技術が開発されました。

絶対に片方の性別しか産まないようにさせる技術は、生物を機械部品のように扱うものだとの懸念もあるでしょうが、不要な性別を排除することで無用な殺処分を減らすことにもつながります。

しかし研究者たちは、いったいどんな方法でファンタジー世界にしかなかった「呪い」のような絶対的な効果を、現実の世界で成し遂げたのでしょうか?

研究内容の詳細は12月3日に『Nature Communications』で公開されました。

目次 遺伝操作で絶対に片方の性別しか生まないマウスを開発!無駄のない畜産業、無駄のない動物実験 遺伝操作で絶対に片方の性別しか生まないマウスを開発!…

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参考文献

Gene-editing used to create single sex mice litters
https://www.crick.ac.uk/news/2021-12-03_gene-editing-used-to-create-single-sex-mice-litters

元論文

CRISPR-Cas9 effectors facilitate generation of single-sex litters and sex-specific phenotypes
https://www.nature.com/articles/s41467-021-27227-2