NASAがクマムシを「光速の30%」まで加速させる宇宙飛行計画を発表

クマムシを「光速の30%」まで加速するNASAの恒星間航行計画が発表(減速装置は未搭載)
Credit:Canva

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恒星間航行をはじめて行う生物はクマムシになりそうです。

NASAが資金提供するカリフォルニア大学の宇宙計画「スターライトプロジェクト」によれば、手のひらサイズの薄い帆を持つ宇宙船を「光速の30%」まで加速させ、恒星間航行を行う計画があるとのこと。

また、宇宙船の搭乗員かつ被検体には、過酷な環境に耐えるクマムシが有力候補として挙がっているようです。

もし計画が実現すれば、恒星間航行(片道切符)を最初に行った生物としてクマムシが歴史に刻まれるでしょう。

研究の詳細は、今年1月付で科学雑誌『Acta Astronautica』にて公開されています。

目次 クマムシを「光速の30%」まで加速する計画 クマムシを「光速の30%」まで加速する計画 クマムシは絶対零度から水の沸点を超える温度に耐え、水や…

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参考文献

Can we – should we – send life to the nearest star?
https://earthsky.org/space/send-life-to-the-nearest-star-tardigrade-wafercraft/

元論文

Interstellar space biology via Project Starlight
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0094576521005518#!

ロシア北極圏にて「光る雪」を発見 その正体とは?

ロシア北極圏で「光る玉」を目撃
Credit: Alexander Semenov/Facebook

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ロシアの北極圏で神秘的な光景が発見されました。

真冬の雪原の中で、いくつもの光の玉が青白く発光していたのです。

遊星からの物体X(The Thing)』をご覧の方なら、地球外生命体の可能性もあるため、容易に手は出さないでしょう。

しかし、現地の科学者たちは意を決して調査に乗り出しました。

果たして、光る玉の正体は何だったのでしょうか?

目次 光る玉の正体は「甲殻類」? 光る玉の正体は「甲殻類」? 光る玉が見つかったのは昨年12月のこと。 ロシア北西の白海(はっかい)沿いにあるモスク…

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参考文献

Scientists Perplexed By Glowing Snow In Russian Arctic
https://www.iflscience.com/plants-and-animals/scientist-perplexed-by-glowing-snow-in-russian-arctic/
SNOW that glows was found in the Arctic (PHOTOS)
https://www.rbth.com/science-and-tech/334605-snow-that-glows-was-found-in-the-arctic

歴史で学ぶ量子力学【改訂版・2】「自分が物理学など何も知らない喜劇役者だったらよかったのに」

水素原子内の電子の波動関数。軌道ごとに電子が取れるエネルギー状態のパターンでもある。
Credit:en.Wikipedia

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歴史で学ぶ量子力学【改訂版・1】
歴史で学ぶ量子力学【改訂版・2】※本記事
歴史で学ぶ量子力学【改訂版・3】
歴史で学ぶ量子力学【改訂版・4】

20世紀のはじめ、第一次大戦が終りを迎えた頃、物理学は光の「波動説」と「粒子説」の2つの間で揺れていました。

光が矛盾するどちらの性質でも成立してしまったために、皆が困惑していたのです。

1922年、アーサー・コンプトンがコンプトン効果を発見したことで、光の粒子性は決定的なものになっていました。

コンプトン効果とは、電子にX線をぶつけたとき、弾かれて散乱したX線の波長が伸びるという現象のことです。

波長が伸びるということは、X線が電子にぶつかってエネルギー(運動量)を失ったことを意味しています。

しかし波は運動量を持ちません。

この現象を説明するためには、X線が実は粒子であり、ビリヤードの玉のように電子にぶつかって運動量を奪われたと解釈するしかないのです。

こうして、この時代の物理学者たちは、月曜と水曜と金曜は光の波動論を教え、火曜と木曜と土曜は光の粒子論を教えなければならない、と冗談交じりに愚痴るような状況になりました

それは目で見て頭でイメージできる馴染み深い古典物理学の世界が、崩壊したことを意味していましたが、まだこのとき多くの物理学者たちはその事実を受け入れることができなかったのです。

目次 物質の全ては波パウリの排他原理誰もノーベル賞をもらえなかった電子スピン理論もう一人の天才 ハイゼンベルク 物質の全ては波 物理学の常識では同時…

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参考文献

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102200819/nazology-22/ref=nosim/

歴史で学ぶ量子力学【改訂版・1】「量子論に出会って衝撃を受けないものは、量子論がわかっていない」

量子力学の誕生に貢献した科学者たち
Credit:depositphotos,canva,Wikipedia,ナゾロジー編集部

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はじめに 「量子力学」を考える上での注意

量子力学が難解な学問という認識は、誰もが抱いているでしょう。

では、なぜ量子力学は難しいのでしょう?

その理由は、量子力学が本来は頭の中でイメージできるような概念を持っていないためです。

とはいえ、量子力学に関するさまざまな図解やたとえ話は、誰でも一度は目にしたことがあると思います。

しかし、実のところ、それらはすべて厳密には正しくないのです。

物理学とは、ニュートンからはじまり、目に見える現象の数々を説明する学問として発展してきました。

ところが、あるときこの理論が崩れ去り、既存の理論では一切説明のつかない事実が次々と発見されたのです。

それはたとえば、光が波として性質と、粒子としての性質どちらでも成立してしまう、というような問題です。

これは頭でイメージしようとしても(あるいは図に描こうとしても)、思い描くことが不可能です。

そのため、物理学者たちはこのイメージできない新しい理論を「量子力学」と呼び、これまでの物理学(古典力学)と切り離しました

しかし、物理学者も私たちも(数学者を除き)、何が起きているのかイメージできない問題を考えることは非常に不得意で、あまり好きではありません。

そこで、物理学者たちは、馴染み深い古典力学の概念を使って、なんとか量子力学の現象を可視化しようと試みました

これが私たちのよく知る、量子力学の図説になったのです。

つまり私たちが知っている量子力学に関する説明は、すべて、本来はまったく異なる概念である、古典力学によって無理やり描き出したイメージなのです。

そのため、同じ量子力学の問題でも、解説してる本やサイト、人物によって、全然説明の仕方や解釈が異なってしまう場合もあります。

物理学者たちは、こうした問題をきちんと自覚した上で、うまく利用していますが、私たちはこの事実を理解していないため、頭がこんがらがってしまうのです。

これからはじめる量子力学のお話しも、できる限り視覚的なイメージを交えて解説していきますが、それはあくまで古典力学に置き換えた場合のイメージであって、正しい姿ではないのだということに注意してください

量子力学はすべて、本来はイメージすることが不可能な問題であることを念頭におきながら見ていけば、多少は量子力学の理不尽な説明にも納得できるかもしれません。

目次 量子の発見波? 粒子? 浮上した2重性の問題物理学を揺るがしたもう一つの問題 「原子の中身」コペンハーゲン学派の開祖 ニールス・ボーアの登場 …

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参考文献

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102200819/nazology-22/ref=nosim/

夏と冬で太陽光透過率を変動させ冷暖房効率を高める「省エネガラス」

夏と冬の両方で温度を調節してくれる窓ガラス
Credit:Depositphotos

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窓ガラスは、私たちが快適に過ごすための重要な要素です。

なぜなら建物の冷暖房の効率は窓によって大きく変化するためです。

実際、2013年の研究では、アメリカの年間一次エネルギー使用量の4%は、「窓ガラスの冷暖房効率で消費されている」と言われています。

そこでシンガポール・南洋理工大学(Nanyang Technological University)材料工学部に所属するイー・ロン氏ら研究チームは、気候に適応して温度調節する省エネガラスを開発しました。

研究の詳細は、12月16日付の科学誌『Science』に掲載されています。

目次 「暑いときは涼しく」「寒いときは暖かく」してくれる自動調節ガラス従来の省エネガラスよりも9.5%エネルギー削減できる!カスタマイズも可能 「暑…

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参考文献

NTU Singapore scientists invent energy-saving glass that ‘self-adapts’ to heating and cooling demand
https://www.eurekalert.org/news-releases/938287

元論文

Scalable thermochromic smart windows with passive radiative cooling regulation
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abg0291

太陽型星から宇宙災害「スーパーフレア」の詳しい様子を初検出 太陽系でも発生する恐れ

若い太陽型星「りゅう座EK星」で、スーパーフレアの発生に伴い巨大なフィラメント噴出が起こる様子の想像図
Credit:国立天文台

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スーパーフレアや、それに伴うコロナ質量放出(CME)と呼ばれる現象は、太陽表面で発生する爆発・噴火現象であり、太陽嵐という地球にも大きな被害を及ぼす大災害を引き起こします。

現在のところ、私たちの太陽でスーパーフレアが観測されたことはありませんが、この潜在的に危険な自然現象は、太陽とよく似た星を監視することで研究が進めています。

そして今回、日本の国立天文台や米国コロラド大学などの研究チームが、若い頃の太陽によく似た星「りゅう座EK星(EK Draconis)」から、スーパーフレアに伴って巨大なフィラメントが噴出する様子捉えることに成功しました。

太陽型星でスーパーフレアの可視光線による分光観測がされるのは初めてのことであり、その規模は太陽で起こった史上最大級の質量放出の10倍以上だったとのこと。

これは私たちの太陽でも発生する可能性があるといいます。

研究の詳細は、2021年12月9日付で科学雑誌『Nature Astronomy』に掲載されています。

 

目次 宇宙の危険な自然災害「スーパーフレア」若い太陽から観測された「スーパーフレア」 宇宙の危険な自然災害「スーパーフレア」 太陽の周囲には、コロナ…

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参考文献

太陽型星のスーパーフレアから噴出する巨大フィラメントを初検出 —昔の、そして今の惑星環境や文明に与える脅威—
https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20211210-okayama.html
A young, sun-like star may hold warnings for life on Earth
https://www.colorado.edu/today/2021/12/09/ek-draconis

元論文

Probable detection of an eruptive filament from a superflare on a solar-type star
https://www.nature.com/articles/s41550-021-01532-8

光でマウスの記憶を消すことに成功! MIBの世界に一歩前進!

光でマウスの記憶を消すことに成功! MIBの世界に一歩前進!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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光で記憶が消せるようになりました。

日本の京都大学で行われた研究によれば、脳の特定の場所に光をあてることで、マウスの特定の時期に形成された記憶を消去することに成功した、とのこと。

映画「メン・イン・ブラック」では閃光を放って記憶を消す装置「ニューラライザー」が登場しますが、現実の世界でも同じことができるようになるかもしれません。

研究内容の詳細は11月11日に『Science』に掲載されました。

目次 光でマウスの記憶を消すことに成功! SFの世界に一歩前進!マウスの脳に細い光ファイバーを刺し込む長期記憶は2日目の夜に作られる 光でマウスの記…

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参考文献

Using optogenetics, scientists pinpoint the location and timing of memory formation in mice
https://www.statnews.com/2021/11/11/using-optogenetics-scientists-pinpoint-location-timing-of-memory-formation-in-mice/

元論文

Stepwise synaptic plasticity events drive the early phase of memory consolidation
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abj9195

Blu-rayの1万倍も保存できて無限の寿命を持つ「5次元光ストレージ」が登場

2013年に実証されて以来研究が続けられている5D光ストレージ。500TBの容量を持つという。
Credit:University of Southampton

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かつては活躍したCDやDVD、Blu-rayといった記憶媒体ですが、現在では使用頻度はかなり減っている印象があります。

その原因は1つにネット回線が飛躍的に向上したこともありますが、基本的なデータ容量が大きくなりすぎたこと、そして何より記憶媒体の寿命が短いことがあげられます。

一般的なCD、DVDの寿命はせいぜいが十数年程度とされています。

しかし、英国サウサンプトン大学では、フェムト秒レーザーというものを使ったBlu-rayの1万倍も密度の高い新しい記憶媒体を研究しています。

定期的にその成果が更新されているこの記憶媒体は、「5次元光ストレージ」と呼ばれていて、ディスク容量は約500TB、常温での寿命は実質無限だとされています。

この研究の詳細は、10月28日付で科学雑誌『OPTICA』に掲載されています。

目次 5次元光ストレージとは? 5次元光ストレージとは? 現在ほとんどのデータはハードディスクや、ネット上のサーバーに保存されています。 しかし、ハ…

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参考文献

5D data storage technology offers 10,000 times the density of Blu-ray
https://newatlas.com/electronics/5d-data-storage-technology-density-blu-ray/

元論文

High speed ultrafast laser anisotropic nanostructuring by energy deposition control via near-field enhancement
https://www.osapublishing.org/optica/fulltext.cfm?uri=optica-8-11-1365&id=462661

「光の速度が低下する」ありえない世界を表現したゲームが開発される

光速度の低下した世界を再現するゲーム「A Slower Speed of Light」のゲーム画面。光のドップラー効果が実際に色彩に影響している。
Credit:MIT Game Lab © 2021 Massachusetts Institute of Technology

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私たちは、光を使って世界を見ています。

そのため、人間が光の速度に近づいて動いた場合、世界の見え方にはいろいろと奇妙なことが起こります。

光のドップラー効果で色彩が変化したり、空間や時間が歪んで見えるようになるのです。

ただ光は宇宙でもっとも速い存在のため、人間がそれを知覚できる状況は普通ありえません。

そこで、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)の研究チームは、こうした物理学者の思考実験の世界を実際体験するために、光の速度が低下する世界を表現したゲームを開発しました。

光の速度が低下していったとき、世界は一体どのように見えるのでしょうか?

目次 人間が光速に近づくと何が起きるのか?光の速度を遅くする 人間が光速に近づくと何が起きるのか? 光は真空中を毎秒約30万キロメートルで移動します…

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参考文献

A Slower Speed of Light
http://gamelab.mit.edu/games/a-slower-speed-of-light/
What would happen if the speed of light was much lower?
https://www.livescience.com/what-if-speed-of-light-slowed-down