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<森林だけでなく、街路樹や庭木といった単木でも、一定の冷却効果があることが明らかとなった> 樹木の下では、樹冠の陰と葉の蒸散作用によって気温や地表面温度が下がる。2021年7月9日に学術雑誌「エンバイロメンタル・リサーチ・レターズ」で発表された研究論文によると、森林だけでなく、街路樹や庭木といった単木でも、一定の冷却効果があることが明らかとなった。 街路樹や庭木といった単木でも、冷却効果があった 米アメリカン大学の研究チームは、2018年8月28日、夜明け前の5〜6時、午後14〜15時、夕方18〜19時の3つの時間帯にわたり、ワシントンD.C.の様々な地点で計7万件以上の気温データを収集。また、2019年4月時点のデータをもとにワシントンD.C.内327カ所の樹冠をマップ化して、「舗装面の樹冠」と「未舗装面の樹冠」に分類し、さらに「未舗装面の樹冠」を公園などの「密集した樹冠」と庭木のような「分散した樹冠」に細分化した。 一般化加法モデル(GAM)を用いてそれぞれの樹冠における各時間帯の気温偏差を予測した結果、木々が生い茂る公園の樹冠では、午後に1.8度の冷却効果が認められた。分散した単木からの樹冠で半分以上が覆われているエリアでは、木がほとんどないエリアに比べて、夕方の気温が1.4度下がることもわかった。夜明け前の時間帯でも、分散した単木からの樹冠で約20%が覆われるエリアは、木がないエリアよりも涼しい。つまり、午後や夕方の冷却効果は夜通し続いていると考えられる。 「単木が果たす暑さの緩和の役割を過小評価すべきではない」 研究論文の筆頭著者でアメリカン大学のマイケル・アロンゾ准教授は、一連の研究成果をふまえ、「都市部の暑さの緩和において単木が果たす役割を過小評価すべきではない」と指摘。特に公園の敷地に限りがあるエリアでは、都市部の暑熱対策として、道路脇や庭などに単木を植えることを勧めている。 緑の少ない都市部では、ヒートアイランド現象により、昼夜を問わず、郊外に比べて気温が高い状態が続く。アロンゾ准教授は「夜は、かつてのように暑さから解放されるひとときではなくなった」とし、「単木を分散させることで、都市部の暑さの緩和につながる。これは人々の健康にとっても重要だ」と述べている。