南アフリカにある遺跡で、約25万年前の絶滅したヒト属の頭蓋骨が発見されました。
「ホモ・ナレディ(Homo naledi)」という非常に小柄なヒト属のもので、大きさは握り拳ほどしかありません。
子どもの頭蓋骨と推定されており、岩壁の間に安置されるように置いてあったとのこと。
ここから、ヒト属における埋葬文化が、従来考えられていたより、ずっと前から存在していたことが示唆されています。
研究は、11月4日付けで学術誌『PaleoAnthropology』に掲載されました。
目次
- 大人でも身長150cmの「ホモ・ナレディ」とは?
大人でも身長150cmの「ホモ・ナレディ」とは?
ホモ・ナレディの化石が初めて見つかったのは、2013年のこと。
南アフリカ北東部・ハウテン州にある人類化石遺跡群、通称・人類のゆりかごの洞窟で発見されました。
これまでに約2000個の骨断片が見つかっており、そこから20数人分の骨格が復元されています。
最大の特徴は「小柄な体格」で、成人男性でも身長150センチ以下、体重45キロほどしかありません。
脳容積は200万年前のアウストラロピテクス(猿人)に似て小さい一方、頭蓋骨のかたちは初期人類に近く、両方の特徴を兼ね備えています。
ホモ・ナレディとは、現地のソト語で「星の人」を意味します。
見つかったのは「4〜6才の子ども」の頭蓋骨
今回の頭蓋骨は、同じ洞窟群に属する地下約30メートルの場所で発見されました。
見つかったのは28個の頭蓋骨片と6本の歯で、死亡時は4〜6才だったと推定されています。
年代は約25万年前とされ、男児か女児かはまだ分かっていません。
頭蓋骨は驚くほど小さく、研究チームによると、岩壁の間の小さな隙間に安置されていたという。
発掘に参加した洞窟探検家のマサベラ・チコアネ(Mathabela Tsikoane)氏によると、岩壁の隙間は幅10センチほどしかない所も多く、ある区間では、腹ばいになって前進しなければならなかったとのこと。
「洞窟探検に慣れていない人ではとても通れない」と話しています。
しかし、ホモ・ナレディは現代人よりずっと小さかったので、岩壁の隙間もラクラクと進んでいたでしょう。
子どもの頭蓋骨は、スウェーデン語で「失われた者(letimela)」という言葉にちなんで、「レティ(Leti)」と命名されました。
埋葬文化の記録を大幅に更新か
発掘プロジェクトを率いたウィットウォーターズランド大学(University of the Witwatersrand・南ア)の古人類学者、リー・バーガー(Lee Berger)氏は、次のように述べています。
「今回の化石は、ホモ・ナレディの子どもの頭蓋骨としては初めてのものです。
頭蓋骨には、肉食動物に襲われたり、口に咥えて運ばれた形跡は見当たりませんでした。これはホモ・ナレディの謎をさらに深めるものです。
この頭蓋骨は、明らかに仲間によって岩壁の隙間に置かれていました。
20万から30万年前に、この洞窟で何か驚くべきことが起こっていたのかもしれません。
つまり、ホモ・ナレディがすでに埋葬の文化を持っていたということです」
これまでの埋葬に関する最古の証拠は、5万年前から古くても10万年前でした。
今回のケースは25万年前のものですから、20万年近くも遡ることになります。
もし、バーガー氏の説を裏付ける証拠が見つかれば、人類の埋葬の歴史を劇的に見直す必要があるでしょう。
しかし今のところ、頭蓋骨が埋葬の儀式として安置されたのか、何の意図もなく偶然に置かれたのかは分かりません。
参考文献
Child fossil find in South Africa sheds light on enigmatic hominids
https://phys.org/news/2021-11-child-fossil-south-africa-enigmatic.html
A child’s partial skull adds to the mystery of how Homo naledi treated the dead
A child’s partial skull adds to the mystery of how Homo naledi treated the dead
元論文
Immature Hominin Craniodental Remains From a New Locality in the Rising Star Cave System, South Africa
https://paleoanthropology.org/ojs/index.php/paleo/article/view/64