アルバータ大学(University of Alberta・カナダ)にて、一粒で二度美味しい発見がなされました。
同大の南キャンパスにあるクオンセット(プレハブ工法によるカマボコ型の建物)から、100年前の古新聞に包まれた古代亀の化石が再発見されたのです。
標本に記載してある文字によると、これは、同大初の古生物学者ジョージ・スタンバーグ(George Sternberg)氏が率いた1920年と21年の化石発掘の成果であるという。
しかし、詳しい調査がされないまま、今日まで手付かずの状態で保管されていたと考えられます。
目次
- 非常にレアな古代亀の化石を発見!
非常にレアな古代亀の化石を発見!
クオンセットの棚奥から発見されたのは、20個ほどの様々な化石断片です。
サイズはリンゴからメロンほどで、古新聞で何重にも覆われ、麻ひもで縛られていました。
ラベルを見ると、これらの化石は、1960年代後半〜70年代前半に保管されたようです。
化石を再発見した同大古生物学者のクライヴ・コイ(Clive Coy)氏は、こう話します。
「数百万、数千万年も地中に埋まっていた化石を発見するのは、常に驚きの連続ですが、今回の再発見により、新たな驚きを得ることができました。
私たちが特に注目したのは、古代亀の頭蓋骨です。
亀の頭蓋骨は非常に珍しく、古生物学的にかなり重要なものである可能性があります」
これらの化石が見つかったのは、アルバータ州カルガリーにある州立恐竜自然公園(Dinosaur Provincial Park)であり、同地の最上層には、7600万〜7200万年前に存在した「ダイナソーパーク累層(Dinosaur Park Formation)」と呼ばれる地層が広がっています。
そのため、古代亀の化石は、約7500万年前に生息したアーケロン(Archelon)の可能性が高いとのことです。
アルバータの恐竜研究を確立した2人の人物
コイ氏は、古代亀の化石が発掘されるに至った同大の古生物学の歴史について、以下のように説明します。
冒頭で紹介したアルバータ大初の古生物学者、ジョージ・スタンバーグは、これまた同大初の地質学者であったジョン・アラン(John Allan)に師事していました。
第一次世界大戦の以前、州政府は、アルバータの化石を収集する外国企業の規制をしておらず、1910〜1918年にかけての世界的な化石発掘ラッシュの一環として、次々と外国に流れ出ていったという。
「アルバータ州の恐竜を見ようと思ったら、シュツットガルトやパリ、ニューヨーク、ロンドンに行かなければならなかった時代があったのです」とコイ氏は言います。
そんな中、アランは、アルバータ州の人々のために化石動植物のコレクションを作るというビジョンを持っていました。
そこで、アランは1919年、アメリカで有名な化石ハンターであったスタンバーグを同大に誘致し、古生物学者として雇用します。
これが、1920年と21年に今日の州立恐竜自然公園で行われた発掘調査のきっかけでした。
古代亀の化石は、この時に発見されたと考えられます。
ところが、1922年にスタンバーグがフィールド自然史博物館(シカゴ)に異動したことで、アルバータ大での古生物学の調査は頓挫してしまったのです。
それから、1934年になってアランが再びスタンバーグを雇用し、同大に恐竜研究室が正式に設立されました。
「古新聞に包まれた亀の化石を見たのは、過去100年の間で、おそらくスタンバーグが最後だったでしょう。
今回の出来事は、化石の再発見に加え、アルバータ大学における古生物学史の一部として大きな価値のあるものです」とコイ氏は話します。
今日のアルバータといえば、世界でも有数の化石発掘地として知られています。
アランとスタンバーグの働きがなければ、こうした認識も少し変わっていたかもしれません。
参考文献
Fossils dug up 100 years ago rediscovered wrapped in old newspaper
https://www.ualberta.ca/folio/2021/12/fossils-dug-up-100-years-ago-rediscovered-wrapped-in-old-newspaper.html