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千葉大学が制御装置のいらないロボットアーム向け無線電力伝送システムを開発

千葉大学は10月5日、ロボットアーム向けの無線電力伝送システムの開発に成功したことを発表した。負荷に関わりなく一定電圧を伝送できるため、特別な制御装置を必要とせず、システムを単純化できる可能性がある。

千葉大学大学院工学研究院の関屋大雄教授国際電気通信基礎技術研究所波動工学研究所、埼玉大学の大平昌敬准教授からなる研究チームは、ロボット用の2ホップ(中継器を2つ介する)、2出力の無線電力伝送システムを開発した。無線電力伝送は、コイルを介して無線で電力を供給し、電池を充電したり、モーターやセンサーを動かしたりするもの。基本原理は、スマートフォンのワイヤレス充電と同じだ。

ロボットの関節部分にこれを使用することで、電力線がねじれたり摩耗して断線するといった心配がなくなる。特に近年は、1つの送電装置から複数の機器に電力を供給できる多出力システムや、中継器(ホップ)を介して遠くまで電力を伝送できる多ホップシステムの研究が進んでいるが、そうしたシステムの運用には、負荷に応じて出力を調整するなどの制御が必要となり、その制御用の情報も無線でやりとりすることになるため、伝送遅延などの性能低下やシステムの複雑化が問題になっている。

そこで研究チームは、制御装置を使うことなく、モーターやセンサーの負荷の変動に対して常に一定の電力を供給する「負荷非依存動作」の設計論を構築した。この設計論は、低周波数から高周波帯域に適用できるため、高い汎用性を有するという。実際に、2ホップ2出力で、6.78MHz(免許なしで利用できる高周波帯域ながら電力伝送の設計が難しいとされるISM帯に属する)の無線電力伝送システムを設計し実験を行ったところ、負荷が変わっても一定の出力を保ち、高効率を維持できることが確認された。

この研究により、負荷変動に対して制御システムが不要になる可能性が示された。設計の簡素化とコストダウンが見込まれ、無線電力伝送システムの社会実装の加速が期待される。「あらゆる制御を不要とする制御レス無線電力伝送システム実現に向けた第一歩」だと研究チームは考えているという。

この研究は、総務省の委託研究「ミリ波帯におけるロボット等のワイヤフリー化に向けた無線制御技術の研究開発」により実施された。