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<イングランド南西部で行われた音楽フェスティバルが、世界屈指の「スーパースプレッダー・イベント」となっていたことが明らかになった。このイベントからデルタ株の亜種も見つかっている> 5万人以上参加のイベント後、若年層でコロナ拡大 英国では、2020年の音楽フェスティバルは新型コロナウイルスでほとんどがキャンセルになったが、今年は8月に大規模なものがいくつか開催された。なかでも、イングランド南西部で行われたものが、世界屈指の「スーパースプレッダー・イベント」となっていたことが明らかになった。このイベントからデルタ株の亜種も見つかっている。 イングランドでは7月に、対人距離の確保やマスクの着用義務、イベントの人数制限など、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するための行動制限が、ほぼ解除された(一部の公共交通機関ではマスクの着用は引き続き求められている)。また、ワクチン接種も順調に進んでいる。 こうした背景の中、イングランド南西部コーンウォールにある海辺の町ニューキーで、8月中旬に音楽フェスティバルとサーフィンの大会であるイベント「ボードマスターズ・フェスティバル」が5日間にわたって行われた。参加者は5万3000人に上ったが、その後、若年層での新型コロナ感染者が急増したという。 地元メディア「コーンウォール・ライブ」は8月23日付の記事で、コーンウォール自治体が記者会見で、ボードマスターズ・フェスティバルに参加して感染した人や、参加者から感染した人の合計は、4700人に上ると発表したと報じた。感染者の4分の3は16~21歳だった。英統計局のデータを見ると、8月中旬時点でワクチンを2回とも接種した16~24歳の割合は、25.5%だ。 デルタ株亜種「フェスティバル株」が発生との疑いも さらに英iNewsは8月29日、この音楽イベントの参加者から、デルタ株の亜種が新たに出現した恐れがあると報じた。南西イングランド地域におけるパンデミック対応を担当する匿名の上級職員が明らかにしたもの。 iNewsによると、デルタ株はすでに亜種がいくつも生まれている。しかしボードマスターズ・フェスティバルに参加した人たちが感染しているのは、一様にデルタ株の新しい亜種であるため、この地域の医療関係者はこれを「フェスティバル株」と呼んでいるという。 一方でイングランド公衆衛生局(PHE)はiNewsに対し、今回見つかったデルタ株の亜種が、ボードマスターズで出現したものであるという証拠はまだ見つかっていないと述べており、引き続き監視を続けるとしている。 なおiNewsによると、ニューキーは8月末の時点で、10万人あたりの感染者数は2000人以上と、イングランドでもっとも高い感染率になっている。 ===== フェス参加条件は陰性/ワクチン接種の証明だったが…… コーンウォール自治体は、ボードマスターズをキャンセルすることも考えたものの、自治体と主催者が密に連携し、可能な限り安全に開催した、と英ガーディアン紙に述べた。 ボードマスターズの公式ウェブサイトによると、フェスティバル参加の条件は、「24時間以内に行ったラテラルフローテストでの陰性」「2回のワクチン接種完了」「PCR検査で陽性判定が出てから10日以上経過して自然免疫保有」のいずれかの証明を入場ゲートにて提示することだった。マスク着用は奨励されていたものの、義務ではなかった。 フェスティバル会場内でキャンプをする人は、開催期間中にもラテラルフローテストを受けることが求められた。米フォーブス誌によると、こうした証明を提示できずに入場を断られた人や、イベント中に退場を求められた人は450人以上に上ったという。 なお、ラテラルフローテストとは迅速かつ手軽な新型コロナウイルス検査で、英政府は精度99.9%としている。これを定期的に受ければ、たとえ無症状でも感染が確認できるため、英政府はイングランド地域の住民を対象に、毎週2回受けられるよう検査キットを無料で配布している。 フォーブスは、ボードマスターズを「今年行われたイベントの中でも世界屈指のスーパースプレッダー・イベントになった」と報じている。こうしたイベントが、世界中でパンデミック拡大の要因になっていると指摘。米国でも、8月末にサウスダコタで行われたバイクのイベントが原因で、同地域での新型コロナ入院者数が3倍に跳ね上がったという。 とはいえ、英政府は4月~7月、屋内と屋外合わせて30以上の大型イベントを対象に、実証実験を実施しており、大人数が集まるイベントでの感染率は、国内全体のものとほぼ変わらなかったため、適切な対策を講じれば「イベントは安全に行える」との結論を8月20日に発表している。