<「人に迷惑をかけるな」と言い聞かされているためか、特に男子は諸外国に比べて誰にも悩みを相談しない比率が高い> 新学期が始まったが、子どもの自殺は毎年9月1日に最も多発する。理由は言うまでもない。学校が始まることへの恐怖からだ。子どもの不安や自殺願望はインターネット上に吐露されることから、この時期、ネットパトロールが強化されている。 加えて昨今の自殺対策の特徴は、「SOSの出し方教育」に力が入れられていることだ。「命や暮らしの危機に直面した時、誰にどうやって助けを求めればよいか具体的かつ実践的な方法を学ぶ教育」のことで、学校で実施することとされている(内閣府『自殺総合対策大綱』)。 これまでの自殺対策は、当人へのカウンセリングや相談体制の充実が主だったが、SOSを出させるというのは真新しい視点だ。こういう考えが出てきたのは、日本の子ども・若者は自分から助けを求めない、という事実が認識されたからに他ならない。悩みを誰にも相談しない人の比率を国ごとに比べると<図1>のようになる(瑞典はスウェーデン)。男女で分け、年齢層別の数値を折れ線でつないだグラフだ。 日本の折れ線(赤色)は他国より高い位置にある。男子は顕著で、加齢とともに上昇する。20代後半の男子では33%にもなる(女子は21%)。 日本人は「人に迷惑をかけるな」と言い聞かされて育っているし、特に男子は「弱音を吐くべからず」という有形・無形の圧力を感じているのかもしれない。学校で「SOSの出し方教育」が重視されるようになった所以だ。困った時は遠慮せずSOSを出すべし、1人で抱え込んではいけない、ということだ。 自己責任論や根性論に囚われて、SOSを出せない子どものメンタルもほぐさないといけないが、SOSの受け止め方も問わねばなるまい。当の子どもは「相談したところで説教をされるだけ、事態が悪化するだけ」と思っているのかもしれない。 ===== 子どもの場合、悩みの相談相手としては親や教師が想起されるが、日本の10代に「悩みを誰に相談するか」を問うと、これらを選ぶ子は少ない。では誰に相談しているか。<図2>を見ていただきたい。 日本の子どもは、友人に相談するという回答の率が他国と比較して高い。言い方は良くないが,親や教師はあまり頼りにされていないのかもしれない。 文科省の自殺対策の手引では、悩みの相談相手として友人が大きいことにかんがみ、悩みをしっかり受け止める「傾聴」の仕方を生徒に教えるべきとしている。結構なことだが、親や教師も学んでおくべきだ。子どもの話を決して遮ったりせず、まずはじっくり聞くこと。大学の教職課程で必修にしてもいい。 悩みがあっても誰にも相談しない。これを国民性や文化のせいだけにせず、周囲のSOSの受け止め方、気付きの問題とも捉えるべきだ。来年度から成年年齢が18歳になり、10代の消費者被害の増加も懸念される。若者の声を受け入れる体制の整備がますます重要となる。 <資料:内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2018年)> =====