豆まきとは、節分の日に行う行事で、鬼を払う意味があります。まく豆はどんな豆でもよいのか、食べ切れないときはどうするのかなど、正しい作法について見ていきましょう。また、豆まきにふさわしくない苗字や由来などについても詳しく解説します。
【目次】
・豆まきとは節分の日の行事
・豆まきの作法
・豆まきのトリビア
・豆まき以外の節分行事を紹介
・正しい作法を知って豆まきをしよう
豆まきとは節分の日の行事
豆まきとは、節分の日の行事です。節分とは季節が変わるときのことで、その中でも特に春になる前日(立春の前日)のことを指します。
節分になると、家の中や窓の外などで豆をまく行事「豆まき」を行うご家庭も多いでしょう。立春は年によっても変わりますが、2月4日頃なので、節分は2月3日頃になることが多いです。
豆まきをすることで、良くないことが追い出されて、良いことが家の中に入るといわれていますので、ぜひ節分には行いましょう。
豆まきの由来は「追儺」と呼ばれる宮中行事
豆まきの由来は「追儺(ついな)」と呼ばれる宮中行事にあるとされています。追儺とは「おにやらい」と呼ばれることもある鬼払いの儀式です。追儺には、疫病を意味する鬼に扮する人と鬼を追い払う人、桃の木でできた弓と葦(あし)でできた矢で援護する人が登場します。
なお、追儺は元々大晦日に行われる行事です。しかし、太陰暦の大晦日なので現在では立春の前日、つまり節分にあたります。現在でも追儺を節分の日に実施している寺もあるので、ぜひ一度、見に行ってみてはいかがでしょうか。
豆まきの作法
豆まきは、地域によっても家庭によっても作法が異なります。日本全国で実施される行事なので、何が正しいというものはありません。家族みんなが楽しく豆まきできれば、それが一番正しいと考えられます。
しかし、小さなときから豆まきをあまりしてこなかったという人や、今からでもぜひしたいという人もいるかもしれません。一般的とされる作法を紹介するので、参考にしてください。
豆をまくのは「年男」
豆まきで豆をまくのは「年男(としおとこ)」が一般的です。年男とは、生まれた年の干支がその年の干支と重なる男性のことで、年男がいない場合は年女(としおんな)でも構いません。
年男や年女がいない場合には、特に資格は問わず、家族の誰かが豆をまきましょう。地域によってはその年に厄年を迎える人がまくこともあります。
家長が行うこともある
家の大黒柱である家長が豆をまくこともあります。とはいえ、現代では家長が誰かという風な意識をしたことがない家庭も多いでしょう。こだわりがなければ、家族みんなで楽しく豆まきをしてみてはいかがでしょうか。
特に子どもにとっては、普段はできない「食べ物を投げる」という非日常感を味わえるイベントになるでしょう。
まく豆は大豆を炒った「福豆」
豆まきでまくのは、大豆を炒った「福豆(ふくまめ)」です。しかし、単に炒るだけでは福豆にはなりません。早めに大豆を炒っておき、神棚に供えることで福豆と呼べるようになります。
なお、豆まきは日中にするものではありません。できれば真夜中に行いましょう。これは鬼が牛寅の刻と呼ばれる真夜中にやってくるためで、そのときに豆をまき、退散させます。
地域によっては落花生をまく
豆まきの豆は炒った大豆が一般的ですが、地域によっては落花生をまくこともあります。落花生は殻付きのものを選び、まくときも殻のままです。落ちても食べるところは汚れないので、衛生的というメリットもあります。
落花生をまく地域は広く、北海道や東北地方、信越地方、また、千葉県、鹿児島県、宮崎県の一部でも落花生をまく家庭が多いようです。
「鬼は外 福は内」と掛け声をかけてまく
豆まきをするときは「鬼は外 福は内」という掛け声をかけてまくことが一般的です。「鬼は外」と言いながら窓の外に向かって豆をまき、「福は内」と言いながら家の中で豆をまきます。追い出した鬼が戻ってこないように、窓の外に向かって豆をまいたらすぐに窓を閉め、そのあとで「福は内」と家の中で豆まきをするケースもあるようです。
また、家の中にいる鬼を順序だてて追い出すために、手間をかけて豆まきをすることもあります。まずは玄関から一番遠い部屋で「鬼は外」と言いながら窓の外にまき、窓を閉めて家の中で「福は内」と豆をまきましょう。
その次に1つ手前の部屋に行って同じく「鬼は外」と「福は内」の豆まきをします。玄関まで順に繰り返し、最後は玄関から「鬼は外」と豆をまいて、しっかりと戸締りをしてから「福は内」と家の中でまいて終わりです。
数え年の分だけ福豆を食べる
豆をまいたら、数え年の分だけ福豆を食べましょう。地域によっては数え年に1を加えた数の福豆を食べることもあります。福豆を食べることは「年取り豆」です。昔は大晦日に豆まきの行事をしたので、豆を食べることで年を取る(数え年では新年に一つ年を取るので)と考えたことに由来します。
なお、落花生をまく場合は、数え年の分だけピーナッツを食べますが、地域によっては数え年の分だけの殻の数のピーナッツを食べるようです。1つの殻に2個のピーナッツが入っていることもあり、ある程度の年齢であれば食べる量が多くて大変かもしれませんね。
豆まきのトリビア
豆まきについて知っておきたいトリビアを集めました。
・豆が多すぎるときはお茶に入れて「福茶」にする
・坂田さんや渡辺さんは豆まきをしなくてよい
・大豆には霊的な力が宿ると考えられていた
それぞれの豆知識を詳しく解説します。ぜひ覚えて、豆まきをもっと楽しみましょう。
豆が多すぎるときはお茶に入れて「福茶」にする
福豆は少量ならおいしく食べられますが、あまりにも数が多いと、食べ切るのが大変です。数え年で40歳、50歳になると一気に食べるのは難しいでしょう。特に落花生を食べる地域で、なおかつ殻の数で年の数をカウントする場合は食べる量が多くなるので大変です。
また、硬くて消化が良いとはいえないので、たくさんの量を一気に食べるのは避けるほうが良いかもしれません。
豆が多すぎる場合や、味に飽きてしまったときは、「福茶」を作ってみてはいかがでしょうか。福茶とは少量の福豆に塩昆布や昆布のつくだ煮、種を取った梅干しを湯呑みに入れてお湯を注いだ飲み物です。
簡単にできるだけでなく豆が柔らかくなり、消化も良くなるというメリットもあります。ぜひ福茶を作って、福豆をさらにおいしくいただきましょう。
坂田さんや渡辺さんは豆まきをしなくてよい
坂田さんや渡辺さんは豆まきをする必要がないといわれることがあります。鬼は坂田姓や渡辺姓を恐れているので、豆まきをしなくても鬼は来ないからというのがその理由です。
平安時代、坂田金時(さかたきんとき)と渡辺綱(わたなべのつな)という武人がいました。坂田金時は幼名の金太郎でも知られる力自慢で、大江山の鬼退治でも名をあげています。
また、渡辺綱も胆力で知られた武人で、一条戻り橋で鬼の腕を切り落としたという逸話でも有名です。渡辺綱も坂田金時と同じく、大江山の鬼退治に参加しています。
この2人は鬼の世界でも知られているため、今でも鬼は坂田や渡辺の名前を聞くと、坂田金時や渡辺綱の子孫だと思って逃げるそうです。
大豆には霊的な力が宿ると考えられていた
豆まきに大豆を使うのは、大豆には霊的な力が宿ると考えられていたからといわれています。現代に生きる私たちには、大豆のどのあたりが霊的な雰囲気になるのか想像することは困難です。
もしかしたら、豆腐や醤油などのように加工するレパートリーが豊富なこと、あるいは栄養が豊富なことなどが神聖に思えたのかもしれません。
また、鬼の目のことを「魔目(まめ)」と呼び、豆をあてて鬼を滅ぼすという意味で豆が投げられたという説もあります。
豆まき以外の節分行事を紹介
豆まきだけが節分の行事ではありません。地域によって、また家庭によってさまざまな行事を節分の日に行います。全国的によく見られる3つの行事について見ていきましょう。
・イワシの頭を飾る
・恵方巻を食べる
・こんにゃくを食べる
それぞれの行事について詳しく解説します。ただし、地域などによって細部が異なることもあるので、紹介する行事が正解というわけではありません。
イワシの頭を飾る
ヒイラギの枝にイワシの頭を指して、玄関先に飾ることがあります。これはにおいがきついものを玄関に飾ることで、鬼や災厄を寄せ付けないという意味があるようです。また、西日本では、イワシを節分の日に食べることもあります。
恵方巻を食べる
恵方巻と呼ばれる太巻き寿司を食べることもあります。これは元々大阪で始まった風習といわれていますが、現在では全国的に知られています。
恵方巻は、その年の恵方(縁起が良い方角)を向き、最後まで黙って一気に食べることが作法とされています。量が多くて食べにくいときは、少し細めの巻きずしを選んだり、短めの太巻き寿司を選んだりできるでしょう。
こんにゃくを食べる
節分の日にこんにゃくを食べる地域も多いようです。こんにゃくには体に溜まった砂を出す効果があるとされ、食べることで身を清めるとされています。また、地域によってはけんちん汁やクジラ肉、そばなどのさまざまなものが節分の日に食べられているようです。
正しい作法を知って豆まきをしよう
豆まきには作法があります。まき方だけでなく掛け声や食べ方、数え方など、地域によって、また家庭によってもルールが決まっているでしょう。
どのルールであっても間違いはありません。しかし、住宅が密集した地域であれば、豆をまくときは周囲の人や住宅にぶつけないようにするなどのマナーを守ることは大切です。
掛け声をするときも、時間帯や声のボリュームなどに配慮ができるかもしれません。1年が良い年であることを願って、家族で決めている作法を守って豆まきを楽しんでいきましょう。
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