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<ワクチンについてはいいまだ受け取りを拒否。接種状況の監視要員の受け入れに難色か。中国製シノバックは効き目が悪いと選り好みしたフシも> WHO(世界保健機関)が北朝鮮に、新型コロナウイルス対策の支援物資を送り始めたとAP通信が報じた。北朝鮮は、新型コロナ感染者は一人も発生していないと主張しているのだが。 WHO平壌事務所のエドウィン・サルバドール所長は、北朝鮮がWHOをはじめとする国連の各機関に対して、救急医療キットや薬などの医療物資の送付を許可したことを明らかにした。 サルバドールはAP通信に対して、「(北朝鮮側の許可を受けて)救急医療キットや医薬品、医療用品などの物資を南浦へと船で運んでいる。一次医療を提供する各施設での、きわめて重要な医療サービスを支援するための物資だ」と述べ、さらにこう続けた。「WHOやその他の国連機関が送った支援物資は、現時点ではまだ港で検疫下に置かれていると聞いている」 北朝鮮はウイルス対策を「国家の存続にかかわる」問題としており、過去2年間は国境を完全に封鎖し、物資の移動も厳しく制限してきた。 以下にAP通信の報道を引用する。 ワクチン供給に付随する監視の受け入れに難色か WHOは、新型コロナに関する状況をまとめた週間報告書の中で、中国の大連港を通じて、北朝鮮に新型コロナ感染症の治療に不可欠な医療物資の送付を始めたと発表した。 北朝鮮はWHOに対して、9月23日までに累計で4万700人に対して新型コロナの検査を実施しており、陽性者は一人も確認されていないと報告している。WHOの報告書によれば、9月17日から23日に北朝鮮で検査を受けた人のうち、94人はインフルエンザに似た症状などを発症していた人で、573人は医療従事者だったという。 専門家は、医療制度が十分に整っていないことや、医療物資が慢性的に不足している事情を考えると、新型コロナ感染症の流行は、北朝鮮に壊滅的な打撃をもたらす可能性があると指摘している。 だが北朝鮮は一方で、ワクチンの確保についてはさほど切迫した様子を見せていない。 アナリストたちは、海外からワクチンの提供を受けた場合、接種状況などの監視役を受け入れなければならないことを嫌っている可能性があると指摘する。金正恩は、最高指導者就任から10年目にして(経済政策の失策などの)最大の難局に直面しており、国民に団結を呼びかけ、自らの権力基盤を強固なものにするため、締め付けを強化しているとみられる。 ===== サルバドールは、WHOは北朝鮮の当局者たちと今後も連携を続けると表明。そうすることで、北朝鮮がワクチンの公平な分配を目指す国際的枠組み「COVAX」を通して、ワクチン供給を受けるための要件を満たせるようにしていくと述べた。 WHOが最新の週間報告書を発表する数週間前、金正恩はCOVAXから分配された新型コロナワクチンの受け取りを断っている。その後の与党・朝鮮労働党の会議の中では、「我々のやり方で」ウイルス対策を強化していくよう当局者たちに指示していた。 COVAXを代表してワクチンの調達や輸送を管理しているユニセフ(国連児童基金)は9月、北朝鮮に対して中国のシノバック・バイオテック(科興控股生物科学)製の新型コロナワクチン約300万回分を分配したものの、北朝鮮からは、深刻な影響を受けている国々に譲るという回答があったと明らかにしていた。 これについて一部のアナリストは、シノバック製ワクチンの有効性に疑問の声があがるなか、北朝鮮としてはより有効性の高いワクチンの供給を受けたいという考えがあるのだろうと指摘している。 ユニセフによれば、北朝鮮保健省は、今後のワクチン受け取りに向けて、COVAXと連絡を取り続ける意向を示した。