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理化学研究所ら日本の研究グループが参加するX線偏光観測衛星IXPE打ち上げ、ブラックホールの詳細な観測が可能に

理化学研究所(理研)は12月8日、X線偏光観測衛星「IXPE」(Imaging X-ray Polarimetry Explorer)がケネディー宇宙センターから打ち上げられることを発表した(日本時間9日午後3時に打ち上げられた)。ブラックホールに落ち込む物質の形、ブラックホール周辺の空間の歪み具合、中性子星の強い磁場で歪められた特異な真空などの「これまでの観測とはまったく質の異なるデータが得られる」と期待されている。

これは、理化学研究所開拓研究本部玉川高エネルギー宇宙物理研究室の玉川徹主任研究員、山形大学学術研究院の郡司修一教授、名古屋大学大学院理学研究科の三石郁之講師、広島大学宇宙科学センターの水野恒史准教授らからなる共同研究。アメリカとイタリアとの国際プロジェクトである「IXPE」衛星に、理研がX線偏光計の心臓部である「ガス電子増幅フォイル」を、名古屋大学が X線望遠鏡の「受動型熱制御薄膜フィルター」を提供している。またプロジェクトには日本から20名を超える研究者が参加している。これによりIPXEは、観測例が極めて少ないX線偏光を捉え「誰も見たことがない新しい宇宙の姿」を明らかにするという。

偏光とは、電磁波の偏りのこと。偏光サングラスは、この光の性質を利用して眩しい光をカットし、風景がはっきり見えるようにしている。同じように、X線偏光を利用することで、X線を放射する天体の詳細な観測が可能となる。X線は大気に遮られてしまうため、宇宙で観測するしかない。そのためX線天文学が始まったのは、人工衛星での観測が可能になった1960年代からのこと。日本ではJAXAの宇宙化学研究所を中心に研究が進められていて、X線天文学は「日本のお家芸」ともいわれている。

試験中の「IXPE」衛星

そんな中で、X線偏光観測の手段として本命視されているのが、NASAマーシャル宇宙飛行センターが中心となって提案されたIXPEだ。この衛星のX線偏光観測能力によって観測できるものには、たとえば、恒星とブラックホールが互いの周りを回っている連星系で、恒星から流れ出した物質がブラックホールが吸い込まれる際に形成されるプラズマの円盤「降着円盤」がある。降着円盤はブラックホールに近づくほど高温になり、ブラックホールの近くではX線を放出する。そのX線の偏光を観測できれば、どんなに高性能な望遠鏡でも観測できない遠くにある円盤の構造が「まるでその場にいるように」観測できるという。

IXPEは、SpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられ、赤道上空高度600kmの軌道を周回する。最初の1カ月で機能や性能の評価を行った後に観測が開始される。運用期間は2年間となっているが、衛星の機能が維持されているかぎり延長されるとのことだ。

IXPEを載せたFalcon 9は、日本時間9日午後3時、ケネディー宇宙センターから打ち上げら、3時34分ごろに衛星を無事、切り離した。

画像クレジット:NASA / BallAerospace