前回紹介したキイロシリアゲアリの結婚飛行の続き。
夕方、暗くなるころに巣から飛び立った羽アリたちは、灯りに集まる習性があるので、街灯やコンビニのガラスなどに集まります。
もちろん家の光にも集まってきますが、小さなオスは網戸の網を抜けることがあるため室内にも入ってきます。
大規模に結婚飛行をした日は、すさまじい数の羽アリが灯りに集まります。
街灯に集まるキイロシリアゲアリの羽アリたち。
少し大きくて飛ぶのが遅いのが女王で、それ以外はすべてオスです。
圧倒的にオスが多いことが分かります。
地面に落ちた羽アリを見ると、このように一匹の女王に複数のオスが集まっています。
女王の周りに集まるオスたち。
すでに一匹のオスと交尾をしていますので、周りのオスたちは交尾はできません。
女王よりもオスが圧倒的に多いため、ほとんどのオスは交尾できずに死んでしまうのです。
そして、街灯や灯りの周りというのは当然人や車の多い場所。
地面にはたくさんの羽アリたちが踏みつぶされてしまっています。
この時、落下した場所によって運命が大きく分かれます。
幸運にも巣穴を掘るのに適した場所に落ちた女王は、穴を掘って巣作りをして産卵をできますが、コンクリートなどの上に落ちてしまった女王の多くはその場で死んでしまうのです。
他の多くのアリは、結婚飛行で交尾を終えると、うろうろ歩き回って巣作りに適した場所を探すのですが、キイロシリアゲアリは歩き回るということをあまりせず、落ちた場所で何とか穴を掘ろうとするのです。
この女王たちが落ちた場所はコンクリートの上にわずかに土があるだけで、これ以上掘ることはできません。
上のわずかな段差を乗り越えれば土があるのですが、それができないのです。
こちらは、コンクリートのわずかな窪みを掘ろうとしている女王たち。
もちろん掘れないので、諦めて別の場所に歩けばよいと思うのですが、キイロシリアゲアリにはそれがほとんどできないのです。
そして、結婚飛行を終えた翌日・・・。
人通りの多い地面で、どうすることもできない女王たち。
コンクリートの窪みから動けない女王たちは、土ぼこりまみれになり、さらに人に踏まれてしまったようでつぶれてしまっている個体もいます。
かわいそうですが、これが毎年この時期に当たり前に見られる光景なのです。
さらに、結婚飛行を終えた数日後。
地面には土など一切ない街灯に飛んできてしまった女王たち。
巣穴が掘れず炎天下で苦しんでいました。
街灯の下に土がない場所など、街中ではそこら中にあります。
このような場所に落ちてしまった女王は、このまま干からびて死んでしまう運命。
日本全国では、一体どれほど多くの女王たちが無駄死にしてしまっているのか。
それでも、これだけたくさん生息しているのですから、アリはたくましいですね。
街中で生きているアリたちも大変です。
過去の観察は以下をご覧ください。
2021年 キイロシリアゲアリの結婚飛行 前編
2020年 キイロシリアゲアリの結婚飛行
2019年 秋ですね!キイロシリアゲアリの結婚飛行
2017年 秋はキイロシリアゲアリの結婚飛行
2015年 キイロシリアゲアリの天敵はキイロシリアゲアリ!?
2014年 キイロシリアゲアリの結婚飛行
2013年 キイロシリアゲアリの結婚飛行