もっと詳しく

<ワクチン接種の「義務化」に舵を切った米バイデン政権だが、共和党からは早くも「憲法違反」との声が上がっている> ジョー・バイデン米大統領は、独立記念日の2021年7月4日、国民に対して、新型コロナウイルスから独立する日は近いと呼びかけた。しかし、それから2カ月後の9月9日、バイデン政権はワクチン接種の「義務化」を否定するこれまでの方針を180度転換した。急増する感染率と入院者数に対応するためだ。 バイデンはすべての連邦政府職員に向けて、今後数カ月以内のワクチン接種を義務付ける命令を発出し、従わない場合は職を失う可能性もあるとした。バイデン政権はまた、連邦政府と取引のある業者にも、従業員のワクチン接種を義務付けるとした。AP通信によれば、この義務化によって約1億人が影響を受けることになるという。 政権は今回の発表で、従来の方針を完全に覆したことになる。ホワイトハウス報道官ジェン・サキは7月23日、連邦政府が介入してワクチン接種を義務化すべきかどうかたずねられた際、そういったことを義務化するのは「連邦政府の役目ではない」と述べていた。 「私の考えでは、ここでの問題はまず、(ワクチン義務化は)連邦政府の役目ではないということだ。義務化の役目を担うのは組織や民間企業などではないかと思う」とサキは述べている。「それこそが妥当なやり方だ。さらに地域社会も、住民を守るために必要な措置を取ることになる」 バイデンは7月4日、「アメリカの独立記念日と、コロナからの独立を祝う」演説を行っていた。サキは9月9日の記者会見で、7月の演説は「時期尚早だったのでは」という問いかけに反論し、ワクチン接種を受けていないアメリカ人が現状を引き起こしたのだと指摘した。 未接種者は8000万人近く 米疾病対策センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長は7月30日、新型コロナウイルスのワクチン接種が全米規模で義務化されることはないだろうと述べていた。その際、全米の連邦政府職員、ならびに連邦政府と取引がある請負企業の従業員へのワクチン接種が義務化される可能性については言及しなかった。 バイデンは、9月9日の演説で次のように述べた。「今回のパンデミックは、ワクチン未接種者によるものだ。(中略)アメリカには、まだワクチンを接種していない人が8000万人近くいる。さらに、選挙で選ばれた議員や知事などのなかには、新型コロナウイルス感染症と戦うための取り組みを台無しにする行動を積極的にとる者もいる」 「彼らは、ワクチン接種やマスクの着用を促す代わりに、新型コロナウイルス感染症で亡くなった地元のワクチン未接種者のために、移動式の遺体保管所を準備している」とバイデンは続けた。「こうしたことはまったく容認できない」 ===== 「バイデンに義務化の権限はない」 バイデンによるワクチン接種義務化の発表を受け、サウスダコタ州知事で共和党のクリスティ・ノームは、「(義務化は)憲法違反であり、(中略)連邦政府による押しつけだ」とツイートし、バイデン政権を必ず訴えて義務化の発効を阻止すると述べた。 ノームは9月9日午後のツイッター投稿で、「私の法律チームが、ジョー・バイデンが発表した憲法違反の命令について訴訟を起こすための準備をしている」と述べた。「これは、連邦政府によるきわめて不愉快な介入のひとつであり、決して容認することはできない」 ケンタッキー州選出の共和党下院議員トーマス・マッシーも、9月9日午後にこうツイートした。「バイデンには、ワクチン接種を義務化する権限はない。政府が連邦政府職員や請負業者にワクチン接種を義務付けるなら、議会での採決が必要だ。これは医療的な専制政治だ」 アメリカでは7月はじめから、新型コロナウイルスの新規感染者と入院患者が急増している。9月8日時点で、全米の新規感染者数の7日間平均は14万8563人だ。CDCによると、同日時点での入院者数の7日間平均は1万2156人となっている。 入院者数の増加により、全米の医療機関では重症者の治療にあたる集中治療室(ICU)の病床が不足する事態となっている。一部の医療機関では、治療を制限する必要が生じており、緊急性のない外科手術や、ほかの救急治療を求める患者の受け入れを拒否するところもあると報道されている。 (翻訳:ガリレオ) バイデン政権による「積極的・包括的な6つの計画」 1. 連邦政府職員および取引業者従業員のワクチン接種義務化や、従業員100人以上の企業に対する被雇用者へのワクチン接種の促進などを含む「未接種者へのワクチン接種」 2. ブースター接種に関する情報開示や、効果的な配布モデルの開発などを含む「ワクチン接種者への保護の強化」 3. すべての学校職員へのワクチン接種の呼び掛けや、資金の提供などを含む「学校が安全に開ける状態の維持」 4. 在宅での検査の促進のためのキットの増産や、公共交通機関でのマスク非着用者への厳罰化などを含む「検査の増加とマスクの要求」 5. 中小企業に向けた資金的なサポートや、中小企業向けの給与補償策の合理化などを含む「国家経済の回復の保護」 6. 逼迫している医療機関への支援の拡大や、感染者の重症化を防ぐためのモノクロナール抗体治療の拡大などを含む「コロナ患者へのケアの改善」