もっと詳しく

<1年間にわたって仮想火星居住環境で活動を行う「乗組員」に求められる資質は> 米NASAが、火星での生活を想定した1年間の模擬実験に参加する希望者を募集している。 このミッションは、3回にわたるCHAPEA(乗組員の健康およびパフォーマンス探査研究)の第1弾で、開始は2022年秋を予定している。 各ミッションに参加する乗組員は4人。この4人が、テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センター内にある仮想火星居住環境「マーズ・デューン・アルファ」で一緒に生活および活動を行う。ここは建設用3Dプリント専門企業のICONが3Dプリンターを使って製作した、広さ約158平方メートルの施設だ。 マーズ・デューン・アルファには、複数の個室、共有のキッチンが1つ、浴室が2つ、作業エリアが1つ、医療・娯楽・フィットネス専用のエリアに加えて、穀物栽培のためのエリアが備えられている。 同施設は、火星での長期滞在で直面し得るさまざまな困難の模擬体験用に設計されている。乗組員たちは限られた資源で生活しなければならず、通信の遅延や孤立、機器の故障や大量の作業などの環境的ストレスを経験することになる。 地上での模擬実験は「課題の把握と対処に役立つ」 また乗組員たちは同ミッションの中で、船外活動の模擬訓練を行い、ほかにもNASAチームとのやり取り、居住施設の維持管理、穀物の栽培や科学実験などの活動も行う予定だ。心と体の健康やパフォーマンスなど、さまざまな要因についてのデータ提出も求められる。 このミッションの目的は、地球外の惑星での長期滞在に個人がどう反応するかを評価することだ。CHAPEAの第2弾と第3弾は、それぞれ2024年と2025年に実施が予定されている。各ミッションから得られるデータは、将来の月や火星への有人ミッションにとって大きな意味を持つものとなるだろう。 ヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターのフード・テクノロジー担当主任研究員であるグレース・ダグラスは、「今回の模擬実験は、火星表面での生活に伴う複雑なニーズへの解決策を試す上で、きわめて重要だ」と声明の中で述べ、さらにこう続けた。「地球上でのシミュレーションは、宇宙飛行士たちが実際に月や火星に行く前に、彼らが直面する物理的・精神的な困難を理解し、それに対処するのに役立つだろう」 NASAは2024年までの有人月面着陸を目指す「アルテミス計画」の成功を足がかりに、最終的には火星に宇宙飛行士を送り込みたい考えだ。 ===== CHAPEA第1弾のミッションへの応募は既に受け付けが始まっており、2021年9月17日の午後5時(米中部標準時)に締め切り予定だ。希望者は応募専用ページでアカウントの作成と、アンケートへの回答を求められる。 NASAが求めているのは、健康でやる気があり「ユニークでやりがいのある冒険を求めて」おり、NASAの取り組みに貢献したいと考えている人物。アメリカの市民権または永住権を持つ30歳から55歳の成人で、英語が堪能で非喫煙者であることが条件だ。 希望者はさらに、工学や生物科学、物理化学、コンピューター・サイエンスや数学などといったSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の修士号を保有しているか、パイロットとして少なくとも1000時間の飛行経験があることも求められる。STEM分野の博士課程の最初の2年を終えた人、医学大学院を修了した人や、テストパイロットのプログラムを修了した人も選考の対象となる。 加えて、学士号を保有している人、その他の特別な資格を保有している(たとえば関連分野での追加教育を受けている、軍の訓練経験がある、STEM分野で4年以上の職務経験があるなど)場合も選考対象となる。 新型コロナワクチンの接種証明も必要 一次審査に合格した人については、長期のミッションに参加できる身体的・精神的能力があるかどうか評価するために、健康診断、心理検査と精神鑑定が行われる。食べ物のアレルギーや好き嫌い、消化器疾患のある人は、ミッション期間中の生活に適応できないため選ばれない。血圧の薬や抗凝血剤、抗けいれん剤、(毎日服用が必要な)アレルギー治療薬、糖尿病患者用のインスリン製剤、睡眠補助剤やADHD/ADD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬、抗うつ剤や抗不安剤など、特定の薬剤を使った治療を受けている人も、選考の対象外となる。 希望者はまた、新型コロナウイルスのワクチン接種を完了していることを証明するよう求められる。 =====