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足の不自由な人が手だけで運転できるように、通常のペダル操作から切り替えることができる車が登場。

マツダは、足の不自由な人が、手だけで運転できる装置を搭載した車の予約受付を、9日から開始した。

運転席横にあるレバーブレーキを押し込み、イグニッションをONにすることで、通常のペダル操作から、ハンドル回りだけの操作に切り替えることができる。

ハンドルについているリング状の部分が、アクセルの代わりとなり、押し込むことで加速する。

切り替え後は、アクセルペダルは操作できなくなり、誤って踏み込む危険性を軽減できるとしている。

マツダは、2022年1月以降の発売を予定していて、今後、ほかの車種でも装備できるように、検討していくという。

このニュースについては、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚氏に話を聞く。

三田友梨佳キャスター「ものづくりの視点からビジネスを研究されている長内さんの目には、今回の試みは、どのように映りましたか」

長内氏「経営学者には、車好きが多いです。車って、単なる移動手段じゃなくて、車に乗って自分で運転する、そのときに意のままに操れるときの、充足感とか満足感、これは別に峠を攻めるとかではなくて、自分で運転して自分の思い通りに動いてくれることの面白さ、そうした情緒的価値が大きい商品です。マツダには“人馬一体”という考え方があって、これは、安心安全というのがベースにあって、軽快に車が自分の思い通りに動く。そうした中で、車と人がコミュニケーションを取りながら、あたかも自分が車の一部になるような、それが車の運転の面白さだという考え方なんです。この考え方が、足と手を使って車を運転する人でしか楽しめないというのではなく、さらに、いろんな人が楽しめる、ダイバーシティーのさらに進んだ形だと思います。こうした車への改造は、今まで福祉車両への改造という形では行われてきましたが、今回、メーカーオプションとして、新車にMX-30、どのグレードの車にも取りつけられる、いわば、『サンルーフをつけたい』、『アルミホイールをはきたい』と同じような感覚で、手だけで運転できる車がつくれるというのが、非常に大きいと思います。例えばドライブで、行きは足が不自由な方が、手だけを使って運転する。帰りはドライバーを交代して、通常の車のように運転する。こういった新しい楽しみ方ができると思います」

三田キャスター「皆で運転を楽しめるわけですね。このように誰もが使える製品というのは、広がっていくといいですね」

長内氏「今回、技術がダイバーシティーの可能性を広げて、より多くの人が車を楽しめる社会というものをつくろうとする取り組みが、実際に形になったわけです。これはまさに、“ユニバーサルデザイン”に近い考え方だと思います。先ほど申し上げたような“専用品”ってどうしても高くなるんです。工業製品は、大量に生産をすることで価格が安くなって、いろんな人の手に届くわけです。ですから、汎用(はんよう)品にちょこっと手を加えることで、誰もが使いやすくする、それがユニバーサルデザインの考え方です」

三田キャスター「こうして、さまざまな車が生まれていますが、未来の車は、どんな社会を築いてくれるんでしょうか」

長内氏「やはりこれからも、車は走る楽しみを体現する商品であり続けると思います。先ほどの“人馬一体”のように、車を操ることの楽しさというものも、これからいろんな人が体験できるようになっていってほしいですし、自動車に限らず、いろんなメーカー、いろんな産業で、障害があっても諦めない製品を作っていく、それをできるだけ専用品にしないで、汎用品の中で実現していく。“ユニバーサルデザイン”が、ダイバーシティーを進めていくような世の中になっていくことが、重要なのではないでしょうか」

三田キャスター「あらゆる全ての人にとっての移動できる喜び、運転できる喜びを、技術の進化がかなえてくれることを、期待したいと思います」