もっと詳しく

<台湾当局は軍事演習参加を否定したが、「将来的な協力の可能性は排除しない」とも> 台湾は8月10日、台湾が米沿岸警備隊の演習に参加した事実はないと否定、しかし今後の協力の可能性は「排除しない」と述べた。今月に入って、船舶位置の追跡データから、台湾艦船が複数で太平洋に向かったことが示され、アメリカとの合同軍事演習の「予行演習」ではないかと報じられていた。 一方、台湾における米政府の窓口機関である米国在台協会は11日、米台の沿岸警備作業部会の初会合が行われたことを確認した。この作業部会は3月に、米台が海洋での連携強化のために設置することで合意していたものだ。台湾の外交部(外務省)によれば、会合はオンラインで実施され、今後も定期的に行われる予定だ。 会合に先立ち台湾紙の自由時報が、米台初の海上での合同軍事演習が「近い将来」予定されていると報じたが、これについてはアメリカも台湾もコメントしていない。米インド太平洋軍の主導で8月27日まで実施されている「大規模広域訓練2021」に台湾が関与しているかどうかも明らかになっていない。 自由時報は10日、台湾の大型巡視船「嘉義」が「安平」など複数の巡視船を伴って、東部にある花蓮港の沿岸から28海里の地点で演習を行ったと報じた。船舶位置情報サイトの「マリントラフィック」によれば、「嘉義」は11日早朝にも同じ地点に向かっている。 中国による嫌がらせに対抗 この報道を受けて、台湾の艦船がアメリカと合同演習を行ったのではないかという憶測が浮上したが、台湾の海巡署(海上警察)は、アメリカの艦船の参加はなかったと否定した。 海巡署はウェブサイトに掲載した声明の中で、米台の沿岸警備作業部会が扱うのは、捜索・救助活動や違法操業・無報告・無規制の漁業の取り締まりなどの分野での協力だと説明。「将来、なんらかの形で(アメリカと)交流・協力する可能性は排除しない」と述べたが、沿岸警備に関する合意の内容については、双方の合意なしに開示されることはないとした。 自由時報は、海巡署の関係者の発言を引用する形で、10日に4000トン級巡視船「嘉義」の主導で実施された演習は、今後予定されている米沿岸警備隊との合同演習に向けた「予行演習」だったと報じた。 沿岸警備に関する米台間の合意は、災害時の救助活動や環境保護の分野での相互協力を強化する内容だ。有識者たちは、この合意は中国が軍の代わりに沿岸警備隊や海上民兵を使って行う、いわゆる「グレーゾーン」戦術(嫌がらせ行為)に対抗する上で有効だと指摘する。 中国は米台の協力を嫌っており、米台沿岸警備作業部会が設立された3月26日には、中国軍の戦闘機や核爆撃機など20機が、台湾の防空識別圏に侵入した。米台間の合意に対する反発を示したものとみられる ===== 防衛アナリストで、台北にある国防安全研究院に所属する蘇紫雲は、台湾とアメリカの協力は外交的に慎重に扱うべき性質のものであり、それを考えれば、台湾政府が情報の開示に慎重なのも当然だと指摘した。 10日の台湾海巡署の演習は、ある種の「外交的トリック」だと彼は本誌に語った。参加した巡視船は船舶自動識別装置(AIS)の送受信機をオフにしておくこともできたが、あえてそうはしなかった。演習を監視している者たちがこれらの巡視船の位置を確認し、追跡できるようにすることで、彼らに米台の沿岸警備当局の協力関係を認識させることが狙いだと分析した。