5年前、神奈川・横浜市の旧大口病院で、入院患者3人が中毒死した事件で、被告が10件以上の犯行を自供したとされているが、3件以外は、遺体などの直接証拠がないため、立件されなかった。
旧大口病院で不審な死を遂げた高齢者の遺族が、FNNの取材に応じ、やるせない思いを語った。
穏やかな笑みを浮かべ、写真に写っているのは、鈴木政子さん(当時94)。
2016年7月に、大口病院で亡くなった。
死因について、病院側は、心不全などと遺族に説明。
政子さんの息子「殺されたのなんだのというのは、死亡診断書には書いていない」
政子さんの孫「持病があって病気が急変したとかではなくて、だから、純粋に高齢で亡くなったんだなと、当時は思っていたんですけどね」
政子さんの死から2カ月後、病院で点滴への消毒液混入事件が発覚。
そのおよそ2年後、看護師だった久保木愛弓被告(34)が、殺人の疑いで逮捕された。
逮捕から半年後、警察が遺族のもとを訪れ、異例の報告をしたという。
政子さんの孫「久保木容疑者が、わたしの祖母の名前をフルネームで言ったと。殺害したというふうに、彼女が言ってるんですと。ただそれに対して、証拠となる遺体、祖母のご遺体がもうないので、立件できないと。警察の方も無念で、大変悔しいけれども、そういうふうに久保木容疑者が言ってるよっていう事実だけを報告しに来てくれた」
取り調べの中で、久保木被告は、「2016年7月ごろから、10人以上の患者の点滴に消毒液を混入した」と供述。
しかし、遺体など、犯行を裏づける証拠はすでになく、政子さんを含む多くの患者について、警察は、立件を断念せざるを得なかった。
政子さんは、寿命により安らかに亡くなったと思いたかった遺族は、警察からの知らせに、戸惑いを隠せなかったという。
政子さんの孫「最初はね、わたしは受け入れられなかったから、そんなことを聞きたくなかった」
政子さんの息子「おふくろがいかに苦しんで、亡くなっていったか。老衰じゃなくて、嫌な亡くなり方をした。そこは本当に悔しいですよ」
政子さんは、殺害されたのか。
証拠がなく、立件されなかった事件の真実は、永遠に闇のまま。