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スクウェア・エニックスが運営するMMORPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)において、プレイヤーから運営へのフィードバックについてプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏から発せられたコメントが話題になっている。1月9日に放送されたライブ配信「神木隆之介のRADIO MOG STATION 特別生配信『暁月の記憶』」において、吉田氏は一部プレイヤーからのフィードバックについて「ちょっと言葉が強すぎるかなと思うところもある」と言及。罵詈雑言は控えてほしいとお願いをしたことで、国内コミュニティはもちろん、海外掲示板Redditに立てられたスレッドにも多くのコメントが寄せられた。

罵詈雑言は控えてほしい

「神木隆之介のRADIO MOG STATION 特別生配信『暁月の記憶』」は、12月7日に発売された最新大型拡張ディスク「暁月のフィナーレ」について、出演者たちとネタバレ込みで語り合う配信だ。あらかたメインストーリーの感想や裏話について語り終わった放送終盤、サンクレッド役の中村悠一氏から、同氏のメインジョブであるナイトのジョブ調整について吉田氏へ突っ込みが入った。その会話中に吉田氏が「ナイトはちょっと火力上げたほうがいいかなと思っています」と発言すると、中村氏は食い気味に「上げたほうがいいです」と断言。パッチ6.05パッチノート公開時、ナイトの調整がなかったことに自身のTwitterで言及し、ガンブレイカーにジョブチェンジしてのエンドコンテンツ挑戦を明かしていた中村氏だけに、ナイトについてはかなり思うところがあったのだろう。

ジョブ調整についての話題のなか、吉田氏はフィードバックにおけるプレイヤーの言葉遣いに言及。「(ジョブ調整について)こうしてほしい、ここがWeakじゃないかと言っていただけるのはありがたい。ただ、罵詈雑言だけは……」「ちょっと言葉が強すぎるかなと思うところもある」「スタッフがへこんでしまって、『みんなのためにゲームを作るんだ!』とならなくなってしまう」と、なるべく柔らかい言い回しでフィードバックしてもらえるようプレイヤーにお願いした。

なぜこうした発言が生まれたのだろうか。『FF14』の最新拡張ディスク「暁月のフィナーレ」は、レビュー集積サイトMetacriticのPC版メタスコアは91、ユーザースコアは9.5と非常に評価が高い。しかし、Metacriticに寄せられている内容はほとんどがメインストーリーの内容を評したものであり、ジョブ調整については否定的な意見も多い。中村氏が放送内で指摘していたナイトはもちろん、他のロールでも苦い思いをしているジョブは少なくないのだ。

パッチ6.05におけるジョブ調整の問題

中村氏が指摘したように、タンクロール内ではナイトの火力が他タンクと比較して低いことが議論されている。そのぶんの補填としてかナイトはダメージ軽減アクションを他タンクジョブよりも1つ多く持っているものの、キャスターロールの赤魔道士に軽減スキルが1つ多く追加されたので、そこで帳尻を合わせればわざわざ火力の低いナイトを採用する理由はなくなってしまう。キャスターロールの調整がタンクロールにも波及しており、ロール間だけでなく全体でのバランス調整の仕方を疑問視する声もある。

火力面でいびつさが指摘されているのは、メレーロールとレンジロールだ。パッチ6.05現在、メレーロールではリーパーとモンクが頭一つ抜けて火力が高い。これら2つのジョブはパーティーメンバーの火力を上げるアクションを持った上で自身も高い火力を出すため、ピュアDPSである侍は立つ瀬がなくなってしまう。パッチ6.05での火力面での調整を期待していた侍だったが、調整項目は「射程」。詠唱が多いことを不満に持つプレイヤーは多かったものの、射程が足りないという意見はほとんど挙がっていなかったため、調整意図がわからず、不満を持った侍たちは大荒れした。

レンジロールは、本体火力もそれなりにあり、パーティーメンバーへの支援バフも豊富に持つ吟遊詩人の一強状態である。支援に特化した性能であるはずの踊り子だが、本体火力の低さとパーティー貢献度のバランスが悪く、エンドコンテンツでの採用率は低い。レンジロールの中では火力に特化しているはずの機工士も、性能を見ると吟遊詩人に及ばず不遇の時代を味わっている。

プレイフィールの悪さでは、召喚士と占星術師が挙げられる。召喚士は本体火力も振るわないため、支援性能が高く本体火力もそれなりにある赤魔道士に人口が移っている。また、占星術師はカード周りのプレイフィールが非常に不評だが、ヒール性能そのものは高い。「万魔殿パンデモニウム零式:辺獄編3層」ではヒールギミックをまるごと無視できるようなアクションを持つため、エンドコンテンツの採用率は低くない。しかし、そもそも特定ジョブが明確に有利なギミックがあるというコンテンツ自体の調整に疑問を抱く声もある。

これらのジョブ・コンテンツ調整のいびつさは、「性能が低いジョブがいるとコンテンツクリアが不可能になる」というレベルではない。どのジョブでも1月4日に実装されたばかりの「万魔殿パンデモニウム零式」の最終層を踏破しているプレイヤーは存在する。しかし、クリアしたとしてもジョブ性能の低さから、「あのジョブに着替えていればもっと早くクリアできたのでは」「このジョブで参加したことで、クリアまで周りの足を引っ張ってしまったのでは」と感じるプレイヤーも少なくないのではないだろうか。パッチ6.05で高難易度コンテンツ「万魔殿パンデモニウム零式:辺獄編」が実装され、ギリギリの戦いを求められるなかでジョブ調整のいびつさはより浮き彫りとなっているのである。

発言は海外にも波及

吉田氏の発言は、国内外のコミュニティで話題となった。海外掲示板Redditに立てられたスレッドには、吉田氏の発言について熱く意見はかわされており、2200件以上のコメントが投稿されている。意見はさまざまであるが、みな思うところがあるようだ。またこの発言に同意を示すゲーム開発経験者からのコメントも寄せられている。『League of Legends』など大型タイトルの開発に参加した経験もあるというJoanOfSarcasm氏が自身の見解を明示

多くのゲーム開発者は、ユーザーに反応にナーバスになっているという。というのも、些細なことで罵倒された経験があるからとのこと。そうしたことから、ユーザーとは話したくないと望む開発者に、これまで多く出会ってきたとも語っている。もちろん、フィードバックによってゲームのクオリティが向上することは少なくない。しかし、伝え方を間違えれば、ゲーム開発者の人格攻撃へと繋がり、彼らが改善を望んでいるとしても否応なく心を折ってしまう結果にもなりかねないのである。また同氏は運営型ゲームは規模が大きく複雑で変更には多くの承認がいるという。またパッチの提出には(コンソール版の場合)コンソール会社の承認も必要なので、修正や仕様変更をするにあたっても時間がかかるとも言及した。ユーザーを怒りは、開発者の要望を受けてからの反応の悪さやそうした空白期間から生まれやすいが、急いで対応した時ですら時間はかかると示唆しており、こうしたプロセスを改善するのは難しいともフォローを入れている。

自身のジョブが不遇であることへの憤りや、調整不足に対する不満から、ジョブバランスについてフィードバックをする際に語気が荒くなってしまうことは想像に難くない。しかし、ジョブ調整担当者の人格を否定したり、罵詈雑言を織り交ぜたりすることは、果たしてフィードバックに必要なことだろうか。吉田氏は現状について意見すること自体を封殺したいわけではなく、あくまで言い回しについて苦言を呈しているのである。遊んでいて面白くないと感じた部分や、こうすればもっと良くなるのに、という意見はどんどん送るべきだが、言葉選びには注意を払う必要がある。

『FF14』はこれまで、PLLでの発信や公式フォーラムへの投稿など、プレイヤーと開発者がお互いに意見を交わしあうことで成長を続けてきた。しかし、このところはプレイヤーから開発スタッフへの語気の荒さから、成長の好循環が崩れつつあるのかもしれない。「相手に意見すること」は「相手を否定すること」ではない。健全なコミュニティ運営のため、プレイヤーからのフィードバックは丁寧な言葉を選んで伝えていこう。

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