名門サッカーチームのバルセロナに所属する著名な選手のデンベレ選手とグリーズマン選手がSNSした映像が、人種差別だと問題視され拡散され、両選手はSNSで謝罪。
ところがその内容も謝罪とは言えず言い訳だと批判されている。
彼らの動画は本当に差別的なのか、3名の日本大好きフランス人と1名の在フランス日本人女性、フランス在住の日仏国際結婚カップルのYouTube動画から検証してみたい。
ウスマン・デンベレ選手とアントワーヌ・グリーズマン選手の差別動画?
問題の動画は、チームが2019年に親善試合のために来日した際に撮影されたものとみられ、ホテルの一室で日本人スタッフがテレビゲームの設定に対応する中、両選手がフランス語で会話し、日本人スタッフを侮辱するような発言が収録されている。
撮影者はウスマン・デンベレ選手、画面に顔を向けているのはアントワーヌ・グリーズマン選手だ。
SNSで動画が拡散されると、フランス語でのやり取りが日本人スタッフを侮辱、差別にしたものだとして、批判の声が殺到した。
メインスポンサーを務めている楽天グループの三木谷浩史会長も、
「このような発言は、どのような環境下でも許されるものではなく、クラブに対して正式に抗議すると共に見解を求めていきます」
楽天だけでなく多くのスポンサー企業から抗議が殺到したことでFCバルセロナは7月7日、
「FCバルセロナは、不愉快な思いをされた全てのフアンとパートナーの皆様に公式に謝罪いたします」
と、クラブとして正式に謝罪した。
「不快な思いをさせ、非常に遺憾」などの声明を出し、日本語でも謝罪文を掲載した。
しかし、騒動は収まらず、「ウイニングイレブン」などで知られるゲーム大手「コナミ」も公式ホームページで、遊戯王コンテンツにおけるグリーズマン選手とのアンバサダー契約の解除を発表した。
この謝罪も、フアンとパートナー(スポンサー)に対してだけ?と疑問を感じるが…。
在日本フランス人ユーチューバーの「オレちゃん」が批判し大反響
今回の騒動の発端は、英紙「デイリー・メール」などが報じた記事。
日本のメディアがその英語記事を日本語に訳したため、微妙にニュアンスが異なる部分もあったようで、日本が大好きで日本の文化をフランス語で紹介する日本在住のフランス人YouTuber「オレちゃん」がYouTubeで正しく翻訳し、多く再生されている。
彼は、「会話が人種差別的であることは間違いない」と述べている。
「映像を見て(フランス語で)何を言っているのか、ちゃんと訳してみます。この件に関して『誤訳がある』という意見もあるみたいなので、ちゃんと聞いてみます」
「あぁ、酷い顔ってハッキリ言ってますね。意味もそのままです。『ウイイレをやるためにこの酷い顔を呼ぶなんて、恥ずかしく思わないのかよ』と言っていますね。この『恥ずかしく思わないのかよ』は、グリーズマンに対して言っていて、日本人に対してではないです。『ウイイレやるためだけに酷い顔の人たちをこんなに呼ぶなんて、お前、恥を知れよ』って感じです。まぁでも“酷い顔”という表現がかなり人種差別的なのは間違いありません。わざわざ顔にズームして笑っていますね。これは酷い」
引用元:YouTube「べべチャンネルのオレちゃん」
「ウイイレ」とは「ウイニングイレブン」というサッカーのビデオゲームの略称だ。
「動画で『なんだよこの言語』と言ってるので、日本語を馬鹿にしていることがわかります。『君たち先進国なんじゃないの?』とも言っています。スタッフがPlayStation(プレイステーション)をインストールするのに苦労しているみたいですね。フランス人は、日本が技術的にもかなり進歩した国だと知っているので、苦労しているスタッフを見て『先進国なんじゃないのかよ』と言っているのだと思います」
「こんな感じで、訳によって多少の解釈の差はあれど、かなり人種差別的だと捉えて間違いないと思います」
引用元:YouTube「べべチャンネルのオレちゃん」
オレちゃんが公開した解説動画は、約150万回再生され、多くの関心を集めている。
「フランスのユーモアはダークで、ブラックジョークで笑っている。その文化は私も面白いと思うし、確かにそれは文化の一部でジョークの一部です。でも、今回の動画では2つ違うところがある。1つ目は彼らが言っているのはジョークとして面白くないし、特定の人を攻撃している。2つ目は、相手は彼らを助けようとしているのに、その人をバカにしているのはひどい。これが特にショックだった。しかも、動画を撮っている。これは私たちの文化であるフランス的なジョークとは一線を越えている」
引用元:YouTube「べべチャンネルのオレちゃん」
この問題を取り上げたフランス人YouTuberは、オレちゃんだけではない。
次に彼の妹や他の日本好きなフランス人の動画を観ていこう。
オレちゃんの妹で、モデルとして活躍するマノンさんも
彼の妹で、やはり日本大好きな「マノンちゃんねる」のマノン(モデルとして活躍)さんも、この件に関する動画を配信した。
「フランス人として本当に申し訳ないです」
と語った後、このサッカー選手がこうした発言をしたことには驚かなかったという。
彼は差別以外にも問題発言をする傾向があり、幼稚な部分がある選手だという。
フランスには人の見た目をバカにして笑いを取るジョークがあるのは確かだが、
フランス人がみな差別意識を持っているわけではないと述べている。
日本大好きなYouTuberアマンディーヌも批判
デンベレ選手の謝罪文
「ボンソワールTV」のアマンディーヌさんは、デンベレ選手とグリーズマン選手の謝罪文を翻訳して批判。
まず、デンベレ選手がインスタグラムのストーリーに掲載した謝罪文の訳をご覧ください。
アマンディーヌさんの訳をほんの少しいじっていますが、ほとんど彼女の訳によるものです。
皆さんこんにちわ
この数日、2019年に撮影したプライベート動画がSNSで拡散されています。
これは、日本で起こったことですが、同じようなことが世界中どこでも起こりうることです。
どの国であろうと、同じ言葉を使うと思います。
コミュニティを特定しているわけではありません。
どの国においても友人たちと同じ表現(何だこの言語、ひどい顔等)を使います。
この動画はすでに公開されてしまっていますが、動画内の方を傷つけてしまったことを深く理解しています。
心よりお詫び申し上げます。
引用元:デンベレ選手のInstagram の文章をアマンディールさんが翻訳
グリーズマン選手の謝罪文
次に、グリーズマン選手がTwitterに掲載した謝罪文です。
私はどんな形の差別にも反対することを誓っています。
(私は差別に反対している側ですが、私のイメージを変えようとしている人がいます)
私を非難している方の意見を拒絶します。
日本人の方を傷つけてしまったのなら謝罪します。
私は、どんな差別にも反対してきました。ここ数日、ある人たちが私を自分ではないように見せようとしています。私に対する非難には断固として反論し、日本の友人たちを怒らせてしまったならば申し訳ないと思っています。
アマンディーヌの意見
デンベレ選手がなぜインスタグラムの「ストーリー」に掲載したのか疑問だとアマンディーヌさんは批判する。
なぜなら、24時間後には消えてしまうからだ。
本当に多くの人に読んでもらいたいのであれば、「ストーリー」にはアップしないはずだ。
また、内容でショックだったのは、「どこの国に対しても同じ表現を使う」、「友達といる時の会話でも使う」と書かれていたことだと彼女は言う。
さらに、「ひどい顔だ」とか「なんだこの言語は」とかという言葉をアジアに対してだけでなく使うということは、全世界に対しての差別ではないかとも。
日本人スタッフが一所懸命ゲームを調整しようとしているのに、こうした発言や笑ったりすることは、差別以外にも失礼だとも彼女は批判している。
「こういう動画のせいで日本人がフランスを嫌いになったり、フランスはこういう国なんだと思わないでほしい。日本が大好きなフランス人としてそういうふうに思われてしまうのは悲しいです。確かにフランスに差別は存在しますが、みながみなそうではないことは分かってほしい」
引用元:YouTube「ボンソワールTV」
「ボンソワールTV」は、近いうちに本ブログで紹介しようと思っていて、チャンネル登録してチェックしていたので、簡単にアマンディーヌさんについて紹介しよう。
物心ついた頃からの日本好きで、中学生の頃には日本語をかなりマスターし、最近まで日本に滞在。
日本の大学時代に知り合った男性と出会って1年後に学生結婚し、その夫がフランス語を習得したいというので現在はフランスに住んでいる。
在仏日本人YouTuber「Nolie / のり フランス三人暮らし」
「Nolie / のり フランス三人暮らし」のNolieさん、フランス人パートナーとフランスで暮らす日本人女性。
国際カップルYouTuber/ユーチューバー馴れ初め(出会い)12選で紹介しているので詳細はその記事をご覧いただきたい。
さて、まだ幼い長男と夫、夫の両親とのフランスでの生活が中心の動画なので、この件については触れるつもりがなかったそうだが、視聴者から取り上げないことを批判されたことがきっかけで配信したようだ。
Nolieさんによると、拡散された動画を観た時、日本人として憤りを覚えたが、その時点でのフランスでは全然話題になっておらず、2人がSNSで謝罪文を出したことで初めて大手サイトがニュースとして取り上げ、フランス人が知ることとなったという。
この件について動画で取り上げることになったきっかけは、前日に書かれた視聴者のコメントだった。
「デンベレの差別発言い対して何事も関係ない内容の発信。どれだけ日本国内でフランス人に対して反発が生まれているのか分からないのがおめでたい。日本国籍を捨てて欲しい」
「あなたの精神はおかしいから精神病院へ行ったほうがいいい」とか、以前から心無いコメントをもらうことがあったが、それらはスルーして来た。
でも、今回スルーできなかったのは、フランス人のサッカー選手が差別的発言おしたことで日本人が憤っているからと言って、それによって他の人を傷つけていい理由にはならないと思ったからだという。
「少なくとも日本国籍を捨てて欲しいという筋合いはないですよね。フランス人のサッカー選手が差別的発言をしたという認識があるにもかかわらず、それと同じくらいの侮辱的発言を私にしているわけなんですよ。この矛盾は、気づかないんですかね」
引用元:YouTube「Nolie / のり フランス三人暮らし」
要するに差別の連鎖を防がねばならないということだ。
フランス人選手の発言は言ってはいけないことだったと前置きした上で、フランスのカルチャーから視ると、(ブラック)ユーモアの面があると説明する。
たとえば、彼女の息子の2歳の誕生日祝に作ったチョコレートケーキを見て、夫の家族が「Ah il l’aime pas ca」と言った場面があって、その時、Nolieさんは意訳して「本当美味しそう」と約した字幕を入れている。
ところが、直訳すると「(全然美味しそうじゃないね。彼は嫌いだろ?」みたいな文になってしまうのだそうだ。
フランスではこうした逆説的表現がユーモアとして使われるのだという。
ただ、フランスには白人主義的な雰囲気があることはあって、白人ではない人たちの中でヒエラルキー(ピラミッド型の階層、身分制度)の上位に立とうとする人がいることは確かだそうだ。
在仏の日本人妻とフランス人の夫「JoMI_JoMi」
通常は、日仏の文化の違いやカルチャーショック、海外あるある等を配信しているフランス人の夫と日本人の妻のチャンネル。
日本人妻はフランス人と2年半の遠距離恋愛の試練を乗り越え結婚して10年、フランスに住んで8年、3人の子持ちだ。
夫は日本に3カ月間、語学留学の経験があるという。
普段はメチャクチャ明るい2人だが、今回の差別問題に関しては非常にセンシティヴなため、この動画では終始真剣な表情だ。
夫妻は、デンベレの動画は差別だと言い切る。
プロのサッカー選手だが、アマチュアであり、幼稚であり、汚い言葉を使って動画を撮っている行為自体が差別だと指摘。
夫は「人格の問題だ。今までいろんな人々を馬鹿にして来たのだろう。フランスのジョークは確かに一線を超えるか超えないか際どいところを遊ぶものでもある。しかし、これは一線を超えている」
また、自分たちには日仏ハーフの子どもがいるので、この問題を放置すると将来、子どもたちがイヤな思いをするかもしれず、看過できないと語る。
妻は、すべてのフランス人がこんなふうに考えているわけではないとし、「私が出会った多くのフランス人は日本を愛し、日本の文化をリスペクトしてくれている。私はフランスに来て日本人であることに誇りを感じた。日本をフォローしているフランス人も悲しく思っている」
因みに、チャンネル名の「ジョミジョミ」は、ジョニーさんと未来(みく)さんの名前から。
Tweitter
辻仁成さんのTwitterが炎上
これが炎上を呼んでしまったらしい。
フランス在住のミュージシャンで作家の辻仁成(61)が、日本人の容姿や言語を嘲笑したとされるサッカー代表選手に関する発言で一部から批判や誹謗(ひぼう)中傷を受けたとし、あらためて真意を説明した。
辻は4日、ツイッターで、バルセロナの選手2人が日本人やアジア人を差別したとされる動画がネット上で拡散された件に言及。報道された記事に触れ、「彼らを擁護は出来ないけど、誤解や誤訳もあり、ちょっと冷静になってほしい」と呼びかけるとともに、当該発言を自ら翻訳した上での見解をブログにつづっていた。
8日に更新したブログでは、先の投稿により多くの批判や「日本に帰って来るな」などといった誹謗中傷を受けたと明かし、「差別は断じて許さない。彼らがやったことは決して許されることではない」と、あらためて自身の考えを示した上で、当該選手の発言の真意が、一部メディアで誤訳されたり誇張されていると指摘し、「発言していない言葉で吊るしあげられるのはどうなのか?」と疑問を投げかけた。
それでも、当該選手が問題の動画を撮影したこと自体を批判。また、当該選手の謝罪に関して「残念な謝罪で、失望した。厳しい現実をきちんと受け止めてもらいたい」とした。
引用元:日刊スポーツ
ひろゆき氏も炎上したそうだが、筆者は彼に興味がないので触れない。
まとめ
FCバルセロナのフランス人選手たちが動画で言っている内容は差別的であり、言ってはならないことだ。
スポンサー企業の抗議によって、選手もクラブも一応謝罪はしたが、その謝罪にも批判が向けられている。
日本人の感覚からすると、言い訳としか感じられず、謝罪とは受け取れない。
選手の謝罪文は、日頃からどこの国でも言っていることで、日本人を差別したわけではないという言い訳にしか聞こえない。
クラブの声明にある、「2019年夏時点でクラブの責任は前経営陣および執行役員の手にあった」「現在クラブを運営する経営陣は、これに類する事象が今後繰り返されないよう、尽力いたします」との内容も、自分たちの責任ではないといった気持ちが前面に出ている。
どちらも謝罪しているようで謝罪していないと日本人には感じられる。
フランス人にはダークなユーモア(ブラックジョーク)的表現があり、選手はスポンサーから抗議を受けたから仕方なく謝罪したものの、いつもどこでも言ってることなのになぜ批判されるの?といった感覚が根底にあり、本当には悪いと思っていないに違いない。
ただ、フランス人から見ても、オレちゃんが語っているように、たとえフランス人特有のフランス的なジョークだとしても、度を超えているようだ。
「フランスのユーモアはダークで、ブラックジョークで笑っている。その文化は私も面白いと思うし、確かにそれは文化の一部でジョークの一部です。でも、今回の動画では2つ違うところがある。1つ目は彼らが言っているのはジョークとして面白くないし、特定の人を攻撃している。2つ目は、相手は彼らを助けようとしているのに、その人をバカにしているのはひどい。これが特にショックだった。しかも、動画を撮っている。これは私たちの文化であるフランス的なジョークとは一線を越えている」