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<新型コロナウイルスの「武漢研究所流出説」に対抗する、中国側の主張の論拠となる人物だったはずだが……> 中国国営メディアは、ここのところ盛んに引用していた「ウィルソン・エドワーズ」なる人物の名をそっと削除している。エドワーズはスイス人生物学者で、新型コロナウイルスの発生源は米メリーランド州にある米軍の生物兵器研究拠点フォートディートリックだと糾弾していた人物……のはずだったが、8月10日に在中国スイス大使館が、そんな人物は「存在しない」との声明を発表した。 アメリカが武漢ウイルス研究所流出説での再調査を求めるのに対抗して中国で広がるアメリカ陰謀論は、国際社会でほとんど受け入れられないばかりか、既に悪化した米中関係に悪影響を与える一方。今回のデマは、着任したばかりの駐米中国大使、秦剛(チン・カン)の評判をさっそくおとしめている。 陰謀論を新たな武器にした中国のプロパガンダ作戦は、欧米では大失敗する可能性が高い。だがもう少し巧妙に進めれば、反米感情の強い途上国では受け入れられる可能性もあるかもしれない。 From Foreign Policy Magazine