イスラム主義組織タリバンは17日、首都カブールでアフガニスタン制圧後初の記者会見を開き、諸外国との平和的な関係を望むとともにアフガン政府の兵士らに報復しないと強調し、イスラム法の枠組みの中で女性の権利を尊重すると表明した。具体的な内容には触れていないが、20年前の支配時より姿勢が軟化していることが示唆された。タリバンは1996─2001年に、イスラム法(シャリーア)に基づき女性の就労を禁止し、石打ち刑などを実施。少女は学校に行くことも許されず、女性が外出する際には全身を覆うブルカの着用が義務付けられた。ムジャヒド報道官は「紛争や戦争を繰り返すことは望んでおらず、紛争の要因を排除したい」とし、「憎悪は終焉を迎える。内外の敵を望まない」と表明。女性が仕事や勉学に励むことを認め、「イスラム教の枠組みの中ではあるが、女性は社会の中で非常に活動的になる」と強調した。これに対し、国連のドゥジャリク事務総長報道官はニューヨークで記者団に対し、「実際に何が起こるのか、約束が守られるのかを確認する必要がある」と述べた。国連は声明で、国連人権理事会がアフガニスタン情勢に関する特別会合を来週24日に開催すると発表。タリバンによる制圧後の「深刻な人権問題」に対応するという。欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は17日、タリバンが基本的人権を尊重し、テロリストによる国土の利用を阻止した場合のみ、EUはアフガニスタン政府と協力する方針を示した。ムジャヒド報道官はまた、「米国および国際社会の誰にも危害を加えることはない」とした上で、欧米関係者らに報復はせず、アフガン政府の兵士だけでなく国際軍で働いていた通訳らにも恩赦を与えると指摘。現在のタリバンと20年前のタリバンは「大きく異なる」とした。<抵抗>アフガニスタンのサレー第1副大統領は17日、自身が国内にとどまっており、「合法的な暫定大統領」と言明した。ただ、サレー第1副大統領がどれほどの支持を得ているのかは現時点で明らかになっていない。一方、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、タリバンは国外への避難を望む者全てを出国させるべきと指摘。NATOの目的はアフガニスタンでの存続可能な国家建設を支援することだとした。また、タリバンにはアフガニスタンで「国際的なテロリストが再び足場を固めないようにする責任がある」とし、「テロリストグループが再び拠点を築き、NATO同盟国などに対する攻撃を画策していると確認されれば、われわれには遠距離から攻撃する能力がある」とけん制した。<運航再開>首都カブールの空港は17日朝、運航が再開され、主要国の大使館職員や民間人が国外に退避した。米国防総省のカービー報道官は17日、今後数週間でアフガニスタンからできる限り多くの米国人や米政府に協力したアフガニスタン人通訳らの国外退避に尽力すると言明した。また、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「タリバンが民間人を空港まで安全に運ぶ用意があると伝えてきた」と表明。カブールからの避難は8月31日まで可能とみているが、正確なスケジュールについてはタリバンと協議していると明かした。このほか、米国がタリバンをアフガニスタンの正統的な政権として認めるかどうかに言及するのは時期尚早とした。[ロイター]Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます 【話題の記事】 ・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体 ・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は…