ブラジル南部パラナ州にて、非常にめずらしい新種の恐竜化石が発見されました。
この恐竜は、約7000万年前の白亜紀後期に存在し、ノアサウルス科という肉食類に属します。
ところが、ブラジル国立博物館(Brazil’s National Museum)の声明によると、肉食類なのに歯がなく、代わりに「クチバシ」を持っているというのです。
一体どのような食生活をしていたのか、研究者たちの注目を集めています。
研究は、11月18日付けで学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。
目次
- 肉食なのに歯がない?
肉食なのに歯がない?
新種の化石は、2011年〜2014年にかけて、パラナ州の田舎道沿いにある岩石層から発見されました。
幸運なことに、全身にわたる多くの骨格が見つかっており、研究者も「ブラジルで発見された白亜紀(約1億4500万〜6600万年前)の非鳥類型恐竜として最も完全な骨格」と評しています。
調査の結果、化石は、ケラトサウルス類ノアサウルス科に属する肉食恐竜に属し、約7000万〜8000万年前に生息していた新種であることが判明しました。
全長約1メートル、体高80センチほど、2本足で歩く比較的小さな恐竜でした。
学名は新たに「ベルタサウラ・レオポルディネ(Berthasaura leopoldinae)」と命名されました。
これは、1976年に亡くなったブラジルの動物学者でフェミニスとのベルタ・ルッツ(Bertha Lutz)と、19世紀のブラジル皇后で科学の熱心な後援者であったマリア・レオポルディナ(Maria Leopoldina)にちなんでいます。
しかし、真に驚くべきは、肉食類なのに歯がなく、代わりに「クチバシ」を持っていたことです。
肉食恐竜は普通、獲物を噛み砕くために歯を持っており、新種が属するケラトサウルス類も鋭い牙を生やしています。
また、奇妙な点は歯だけでなく、前上顎骨(ぜんじょうがくこつ)の咬合縁(こうごうふち)が切断されていることや、吻側(ふんそく、顔の前側)の先端がわずかに後退していることなどが挙げられます。
以上のことから、新種が他のケラトサウルス類と同じような食生活をしていたとは考えにくいのです。
研究主任の一人で、リオデジャネイロ連邦大学(UFRJ)の古生物学者、ジョヴァーネ・アルヴェス・ソウザ(Geovane Alves Souza)氏は、次のように述べています。
「この恐竜の発見は、本当に驚くべきものでした。歯がないことは、本種がどのような食生活をしていたのか疑問を呈しています。
しかし、必ずしも肉を食べなかったというわけではありません。猛禽類のハヤブサやノスリのように、くちばしを巧みに使って肉を食べる鳥もいます。
最も可能性が高いのは、これらの恐竜が、食べられるものは何でも口にしなければならない過酷な環境にいたせいで、雑食性に進化したということです」
捕食できる獲物が少なかったために、草や木の実も積極的に食べなければならなかったのかもしれません。
参考文献
Remains of ‘very rare’ dinosaur species discovered in Brazil
https://phys.org/news/2021-11-rare-dinosaur-species-brazil.html
元論文
The first edentulous ceratosaur from South America
https://www.nature.com/articles/s41598-021-01312-4