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アメリカ政府は、新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種を、9月下旬から始めると発表し、バイデン大統領が、接種を受けるよう呼びかけた。

バイデン大統領「2回目の接種から8カ月たったすべての成人に、追加接種を受けさせる計画だ」

インド型変異ウイルス「デルタ株」の感染拡大を受け、アメリカ政府は18日、3回目のワクチン接種を「9月20日の週から開始する」と発表した。

対象は、ファイザーかモデルナの2回目のワクチン接種を受けてから8カ月が経過した人で、医療従事者や高齢者などを優先する。

また、バイデン大統領は演説で「世界を支援しながら国内の追加接種は可能だ」と強調し、途上国の接種を優先すべきだとするWHO(世界保健機関)の指摘に反論した。

このニュースについて、アメリカの大学病院で新型コロナウイルスと向き合っている内科医の山田悠史先生に話を聞いた。

三田友梨佳キャスター「ヨーロッパなどの一部の国に続いて、アメリカも3回接種へと進むということですが、山田先生、わたしたちはどのように受け止めればいいのでしょうか?」

マウントサイナイ大学病院勤務・山田悠史医師「背景には、デルタの感染拡大が各国で急速に広がっている状況があると思います。アメリカでも、一時は、1日あたり1万人程度まで減少していた新規感染者数が、再び15万人ほどに増加しています。あくまでワクチンの未接種の方の入院ですとか、重症化が多いことに間違いはありませんが、ワクチン接種の完了後に感染してしまうブレークスルー感染というのも広がっていて、感染拡大を止められない要因の一端を担っています。実際、それを裏付けるように、ワクチン接種6カ月後に感染予防に対する効果が減弱していることを示唆するような研究も複数出てきていまして、こうしたデータが3回接種を後押ししているものと思います」

三田友梨佳キャスター「3回接種で先行する国の経験からは、どのようなことが学べるのでしょうか?」

マウントサイナイ大学病院勤務・山田悠史医師「3回接種を先行するイスラエルからは、3回目の接種後に抗体が5から10倍に増えて、ブレークスルー感染を減らしたり、感染症の発症予防効果を高めるデータも得られてきています。こうしたことから、いずれかのタイミングでは3回接種が求められる時期がくると思います。ただ最も重要な重症化予防効果というのは接種半年後のデータでも高く維持されていまして、そこへの追加効果は現時点ではあまり期待できないと思いますし、米国が計画している2回目接種の8カ月後に接種する意義を支えるようなデータも十分ありません。このように実際いつ、どのタイミングで健康な人に接種するかを評価する研究が十分行われていないことにも留意する必要があると思います」

三田友梨佳キャスター「そうした中で、日本が今できることやるべきことについては、山田先生はどうお考えですか?」

マウントサイナイ大学病院勤務・山田悠史医師「日本では、まだ2回接種完了も道半ばですので、まずはしっかりと2回接種完了の方の数を増やすことが大切だと思います。そうしているうちに新たな研究の知見がまた蓄積していって、最適なタイミングというのが図られていくと思います。また、ブレイクスルー感染の予防にはワクチン接種だけではなくて、マスク装着などの感染対策も有効であるということをあらためてご確認いただければと思います」

三田友梨佳キャスター「日本でも3回目について検討されているということですが、まだ1回目も打てていない方がたくさんいらっしゃる中、まずは、ワクチンを滞ることなく供給できるシステムや環境を整えるとともに、やはり早い段階での治療薬の開発や承認が強く求められているように感じます」