アルキタス(紀元前428〜紀元前347年)は、古代ギリシアの哲学者、数学者として知られます。
マグナグラシアのターラント(現在の南イタリア)で生まれた彼は、幼少の頃、ピタゴラス教団の一員で、数学者であったフィロラオスの教えを受けました。
やがて彼自身もピタゴラス派となり、数学を絶対視するように。
算術のみが満足のいく証明の根拠となり、それは幾何学では達成できないと考えました。
数学的な原理を機械学(力学)に応用した最初の人物はアルキタスだったと言われています。
彼はそれを証明するためにある発明をしました。
それが、史上初の自走式飛行装置「空飛ぶハト(Flying Pigeon)」です。
目次
- 「数学で全ては説明できる」
「数学で全ては説明できる」
アルキタスにとって、すべては数学を中心に展開し、数学によって説明できるという。
また、数学は4つの枝(幾何学、算術、天文学、音楽)に分割されると見ていました。
アルキタスは、自身の著作の序文で、次のように書いています。
「数学者は優れた洞察力を持っており、彼らが”ある特殊性”について正しく考えることは、まったく不思議なことではない。
というのは、宇宙の物理について優れた見識を持っている以上、存在する特殊なものについても優れた視点を持っているからだ。
実際、彼らは天体の速度、日の出入り、幾何学、算術、天文学、そしてとりわけ音楽についての鋭い洞察力を私たちに伝えてきた。
これらは姉妹学問のように思える。なぜなら、それらは存在(being)に関連する最初の二つの形態[数と大きさ]に関係しているからである」
アルキタスは、指導者としても才能を発揮しました。
ある時、ピタゴラス学派が攻撃された際に、一団はマグナグラシアから追放され、ターラントが唯一の安全な場所として残されました。
アルキタスはそこでピタゴラス派の指導者となり、近隣の非ギリシャ人に対する同盟を結ぶために、その地域のギリシャの町々を団結させました。
ターラントの法律では、総司令官の任期は一年であったが、アルキタスは7年連続で総司令官に選ばれています。
この間、プラトンと親交があり、彼の命を救ったこともあったという。
史上初の自走式飛行ロボを開発
アルキタスの最も有名な業績は、自走式の飛行装置である「空飛ぶハト」の発明です。
この装置は蒸気を動力源としており、当時としては、非常に高度な発明でした。
飛行体の形が飛ぶ鳥に似ていることから、この名前が付けられています。
木で作られたこの装置は、鳥の飛び方を理解するための人類最初の試みの一つでした。
軽量なボディは、中が空洞の円筒形をしています。左右には翼があり、後部にも小さな翼が備わっています。
先端は鳥のクチバシのように尖っており、飛行距離と速度を最大化するために、空気力学的な構造となっていました。
また、飛翔体の尾部には、内部のエアポケットに通じる開口部が設けられていました。
この開口部は、加熱された気密性の高いボイラーに接続されます。
ボイラーで蒸気をどんどん出していくと、やがて蒸気の圧力が接続部の機械的抵抗を上回って、飛翔体が勢いよくが飛び出すのです。
飛行距離は200メートルにも及んだという。
アルキタスの発明は、世界初の飛行ロボットかつ、鳥の飛び方の最初の記録であるとされています。
アルキタスは、その後、紀元前347年に海岸付近の難破事故で亡くなったと伝えられています。
しかし、彼の残した作品は死後も生き続け、数学と力学に関する重要な貢献は、今日に至るまで役に立っています。
哲学的な記述がどの程度であったかは不明ですが、のちの大哲学者であるプラトンやアリストテレスの著作に影響を与えたとも言われています。
また、月のクレーターは彼にちなんで「アルキタス」と名づけられました。
数学の進歩や飛行ロボットなど、学問分野への貢献が大きかったことは明らかです。
参考文献
The Steam-Powered Pigeon of Archytas – The Flying Machine of Antiquity
https://www.ancient-origins.net/history-famous-people/steam-powered-pigeon-002179