スマートウォッチの心拍モニター機能は健康的な生活の維持や病気の早期発見などに役立つ一方で、心房細動患者の健康不安を増幅させることもあるようだ。ノースカロライナ大学チャペルヒル校などの研究グループが 70 歳女性患者の例を紹介している (論文: PDF、 The Verge の記事)。
この患者は発作性心房細動と診断され、その 1 年後に心拍モニターの使い過ぎによる病気不安症だと診断されたという。患者が使用していたスマートウォッチのデータによると、1 年の間に 916 回の心電図 (ECG) 記録を行っており、うち 701 件は洞調律、55 件は心房細動の可能性、30 件は高心拍数または低心拍数、130 件は「判定不能」だったそうだ (参考: Apple Watch サポート記事 HT208955)。
ECG の使用回数は時を追うごとに増加しているが、スマートウォッチから心拍数に関する通知 (運動による一時的な心拍増、判定不能、心房細動の可能性) を受け取った時に回数が急増している。特に心房細動の通知と判定不能の通知が似通った行動を引き起こしているという。そのため、判定不能の通知を健康上の問題と患者が誤解していた可能性もある。
問診と質問への回答結果から、患者は通知を心臓機能低下の表れと考えるようになり、心配や補償行動(ECG使用や医師への確認)を増加させていったとみられる。患者はたびたび救急外来で受診していたが、無症状で既に適切な治療を受けていたため、治療が変更されることはなかった。その一方で、頻繁な受診により患者の精神状態や人間関係、生活の質が大きな影響を受けることになる。患者は病気不安症と診断されたが、治療により症状は改善したとのこと。
このような症例は氷山の一角と考えられるが、いつ誰が発症するのか、患者の生活への影響や医療機関の負担増はどの程度なのかといった点に加え、スマートウォッチによる誤検知が発生した場合に患者が医療機関を信頼し、満足できるようにするには何が必要かといった点についてもさらなる調査が必要とのことだ。
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