最近、さまざまな場所で目にしたり、耳にしたりする機会も増えた「SDGs」。
日本語では「持続可能な開発目標」。産業革命以降、人間活動が急激に活発化したことで、経済・社会の基盤である地球の持続可能性が危ぶまれていることを受け、2015年の国連サミットにおいて、加盟国全会一致で採択された「2030年までに持続可能性でよりよい世界を目指す国際目標」のこと。
8月22日にフジテレビで行われた「SDGs Agora」。これは、公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)の設立50周年を記念してフジテレビと協働で開催する「Voice of Youth Empowerment (VYE)2021 サステナ英語プレゼンテーションチャレンジ~地球の未来は、キミが変える~」プロジェクトの第一弾。
SDGs普及活動家で「Design,more.」代表の横浜国立大学2年生・入江遥斗さん、ティーンナンバー1ファッション誌「Popteen」の専属モデルであり、“れあぱぴ”の愛称でSNSにおいて絶大な影響力を持つ権隨玲(ごんずいれあ)さん、フジテレビの新人アナウンサー・竹俣紅アナ、宮城教育大学名誉教授で仙台ユネスコ協会会長の見上一幸さんがゲストとして登場した。
MCは「VYE2021」アンバサダーでフリーアナウンサの木佐彩子さん、ファシリテーターはACCUの高松彩乃さんが務めた。
自分にとっての「幸せ」とは?
このイベントでは3つの質問を通して「幸福」について考えるワークショップを実施。自分の、周囲の人の、すべての人の幸せを発表する。言葉で表現することで、自身が大事にしていることに気づいたり、これからの行動変革につながっていく。
最初の質問は「最近、幸せを感じた出来事は?」。まずは自分自身にフォーカスすることから、“自分の幸せ”を見つめる。
屋根・4つの柱・土台が書かれた紙を用意し、屋根には自分の名前、柱には自分にとっての幸せを、土台には自分の幸せのベースを記入。思い浮かばない場合は、4つ記入できなくてもOK。
ここに記載する言葉に正解も不正解もないため、思うことを自由に書くことが大切。イベントでは立場や年齢などの違うゲストたちが個性豊かな、思い思いの「幸せのカタチ」を表現した。
4つの柱に「読書」「発信」「健康」「旅」、土台に「知ること、行動する(変わる)こと」を書いた入江さん。
「本当は旅や旅行でいろんな文化に触れたり、美味しいモノを食べたりしたいんですけど、今はそういうことができないので、読書を通じて知識や情報を取り入れるようにしています。それを企業に発信したり、日記などに大事だと思ったことをメモしたりして自分の幸福度を着々と高めています。知識を取り入れることが自分のステップアップにもつながり、価値観がアップデートされている気がして、最近の幸せにつながっています」
「健康」という言葉を入れたのも、コロナ前まで「健康だ、幸せだ」と思うことはなかったが、コロナ禍で改めて「自分にとって幸せ」だと感じたからだという。
4つの柱に「美容」「友達」「食べ物」「寝ること」、土台に「家族」と書いた権隨さんは、「ファッションやメイクが好きで息抜きになるので『美容』と入れ、高校生なので友人と遊ぶことも好きですし、食べることも大好き。『寝ること』は1日の中でベッドに入る瞬間が好き」と“好き”なものを率直に記した。
竹俣アナは土台に「健康」を入れ、4つの柱に「美味しく食べること」「仕事での向上心」「心の癒やし」「大切な人がいること」を挙げた。
見上さんは土台に「安心な社会・平和な社会」、4つの柱に「健康」「身近な人」「自由」「衣食住」を記入。見上さんの中で「身近な人」は家族や友人の他に、「自分と違う意見を持っている人」も含まれている。
中でも「健康」は経験や年齢を重ねているだけあり、「才能のある方々にたくさん出会っていますが、若くして亡くなっている方もいます。小さな幸せから大きな幸せと、たくさんの幸せに出会うためには健康でないといけない」と話した。
周囲の人も含めた「幸せ」って何?
自分自身の幸せを可視化したところで、次のステップは「自分と周囲の人」の幸せについて。「周囲の人」の範囲も自らが定め、その人たちと自分の“幸せ”を想像する。
「日常生活で、例えば駅ですれ違った人も含めました」と周囲の人を幅広く捉えた入江さん。4つの柱を「傾聴」「思いやり」「運」「知識」、土台は「分かりあえなさを分かり合う」。
自分自身の幸せで挙げた「読書」「旅」を「知識」に。周囲の人と範囲が広がったことで、「でも」「だって」と否定から入らず、意見が違っても一度相手を受け止める「傾聴」が大事だとした。
権隨さんは「健康な体」「食べ物」「支える仲間・身内」「趣味」を挙げ、土台は「おうち」に。竹俣アナは「趣味を楽しむこと」「仕事」「向上心」「助け合えること」で土台は「健康」。
見上さんは「面識のある人」を周囲の人と定め、土台に「コミュニケーション」、4つの柱に「相互理解」「平等公正」「支え合い」「自律」を挙げた。特に「自律」は「自律がないと仲間に寄りかかりっぱなしで負担に。4つがバランス良く揃うことが“幸せ”になるのではないか」と話した。
地球にいる全ての人の「幸せ」とは?
最後のステップ3は、自分の知らない人も含めて全ての人の幸せを支える土台と柱を考えていく。どうしたら幸せになるか、そのためには何が必要かを4つの柱に記入する。
全ての人を「地球人」と表現した入江さん。さらに「地球人の上に他の生物や地球そのものが乗っていることをイメージしました」と話す。
4つの柱は「場(都市)」「技術」「回復」「共創」に、土台は「回復可能な自然・文化の多様性」に。
権隨さんは土台を「世界」に、4つの柱を「病院」「食べ物」「思いやり」「小さな幸せ」を挙げた。「小さな幸せは大きな幸せにつながり、思いやりは人と人がつながっていく。病院は健康な体があっても、“ちょっとしんどい”という時に医療が整っていると安心する」とした。
竹俣アナは土台を「医療体制や衛生環境、食糧」にし、「地球のどこにいても人生の楽しみがあると幸せですし、それを楽しむ上で雇用は大事。教育がないと向上心を持つことも難しく、人と人、企業、国が協力することも大事」と述べた。
見上さんは「ステップ3を考えていたとき、最後の全ての人の幸せの土台が、最初の自分の幸せの屋根であることに気付き、驚きました」と明かし、土台に「夢・希望を持てる社会」を、4つの柱に「智の共有」「人権」「寛容」「平等公正」を挙げた。
ステップ1からステップ3までのワークショップを踏まえ、4つの柱にはバランスやしっかりした土台が大切だと高松さんは解説。
特に柱を支えるための犠牲が出ることや、柱に踏み潰されてしまうような人がいる場合は、幸せとは言い切れない。
層が厚く、安定感のある土台に多くの柱が乗っていることが重要だとし、たとえ柱の長さが足りなくてもそれを補う多様な柱があることで、幸せが支えられるという。SDGsで言うと、理念を土台とし、17ある目標が柱であると言える。
SDGsと言われると少し身構えてしまうだろうが、自分を基点に範囲を広げながら“幸せ”を考え、それを行動に移すことも未来へとつながっていく。改めて考えると実はすでにやっていることもあるかもしれない。それをずっと続けていくことが、未来を変える第一歩なのだ。