VRの“没入感”を活用
ゴーグルをして、誰もいないのに一人で楽しげに会話をしながら食事をする女性。
いったい誰と食事中なのか、ゴーグルの世界をのぞいてみると・・・
VRランチ会に参加している社員:
はい!はまっていることというか、大きい“学び”をしたことがあって。
VRの活用を進めているのは、タスク管理などのソフトウェアを開発する「株式会社ヌーラボ」。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年2月から全社的にテレワークに移行して以来、オンラインでのコミュニケーション構築にと様々なアイデア、ツールを活用してきた。
そのひとつが、VR技術の活用。
ヌーラボ・橋本正徳代表取締役:
隣にいるかのように話せた。同じ部屋にいるかのように話せた。
これはいい体験だなと思って。
仮想空間がもたらす「一体感」
ヌーラボ・吉田彩さん:
今から「VRのランチ会」を始めます。
この日、週に1度の社内ランチ会に参加した吉田さん。
装着したのは、この春、全社員に配布されたVRゴーグルだ。
食事こそ見えないが、仮想空間で賑やかにランチタイム。
ゴーグル搭載のカメラによって、指の動きや唇、顔の動きを予測して再現するため、アバターの動きはかなり繊細だ。
参加した社員:
距離感が、感じる気持ちというのがリアルの時の感情と全く同じ感覚があるので、すごいですよね。
テレワークに移行してから入社したという吉田さんは、実は顔を見たことがないメンバーがほとんどだという。
ヌーラボ・吉田さん:
VR空間だと、例えば10人集まったとしても「隣にいる2~3人と雑談する」というのが、それぞれ同時に実現できます。
オンライン上で話をするよりもアバター同士で同じものを一緒に見てそれに対して話をしたり、一気に親近感は深まるというか、一緒に会社を作り上げていく一体感というのはすごくあると思います。
橋本代表は今後、こうしたVRの活用がビジネス環境で浸透していくと見ている。
ヌーラボ・橋本代表取締役:
僕は普及していくと思っています。もしくはAR(拡張現実)とかに置き換わっていくんじゃないかなと。まずはミーティングが変わっていくと思っていて、ミーティング利用から、例えばカンファレンス(取締役会など重要事案の話し合いの場)に使われたり、ハードウェアがもっと気軽に使えるようになれば、今の状況からもっと変わっていくと思う。
交流の機会を作る一つの手段に
三田友梨佳キャスター:
株式会社キャスター取締役CROの石倉秀明さんに聞きます。
石倉さんの会社は社員の方全員がリモートワークをされていますが、今回の試みをどうご覧になりますか?
株式会社キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
リモートワークが増えたり、出社とのハイブリッドワークが広がる中、多くの会社が悩んでいるのが出社していた時にあった身体性や偶発性を伴う交流機会をどう増やすかという点です。
ロビーや廊下ですれ違ったときに立ち話をしたり、同じお店にランチに行くといった関係性が持ちにくくなっています。
こうした時間をオンラインで何とか持てないかという流れが出てきている中で、今回のようなVR空間を使うのはひとつの手として注目されています。
それぞれの会社に合うコミュニケーションツールの選択を
三田キャスター:
社内コミュニケーションにVRを活用するメリットはどういったところにありますか?
石倉秀明さん:
zoomなどのウェブ会議システムで交流するのと違って、VR上だと実際に動いたり触れたり没入感もあるので、その場に実際にいるような感覚が得られるのがメリットだと思います。
ただ課題はやはりデバイス。
1人1人にVRゴーグルを支給するとなるとコストもかかるし、それができる会社も限られてきてしまう。
ただ、今回のように完全なVR空間でなくても、ブラウザでアクセスできてバーチャルオフィス内を動きまわって話したりできるミニVRのような体験ができるサービスも少しずつ出てきています。
三田キャスター:
オンラインで完結する新しい働き方を広めるためには、コミュニケーションツールの選択はひとつのポイントになりそうですね。
石倉秀明さん:
リモートワークが進んだことで引っ越して会社から遠くに住んでいる人もいるでしょうし、コロナに対する危機感も人それぞれで、人が集まることが不安という人もいます。
その中でも交流するためには、コミュニケーションツールを試しに使ったり、遊んだりしながら、コストなども考えてその会社に合ったしっくりくるものを選ぶことが大事だと思います。
オフの時間を作るようなことではあるので、遊ぶ道具を選ぶように楽しさ重視で決めていくのもポイントだと思います。
三田キャスター:
テレワークでは孤独を感じやすい一面もあると思うので、コミュニケーションの機会を意識して増やすことで相談しやすくなったり、生産性の向上に繋がったりと、可能性が広がっていくのかもしれません。
(「Live News α」12月21日放送分)