2020年12月に小惑星リュウグウから帰還した「はやぶさ2」が持ち帰った試料の初期記載(カタログ化)に関する論文が、12月21日、イギリスのオンライン科学雑誌「Nature Astronomy」に掲載された(「Preliminary analysis of the Hayabusa2 samples returned from C-type asteroid Ryugu」「First compositional analysis of Ryugu samples by the MicrOmega hyperspectral microscope」)。同試料から、リュウグウが水と有機物に富む原始的な小惑星であることがわかってきたという。
リュウグウが、炭素、有機化合物、水を含む炭素質のC型小惑星であることは、地上からの観測でわかっていた。この小惑星を探ることで、原始的な太陽系の様子がわかり、今の地球の成り立ちや生命の発生に関する手がかりがつかめる。地球には、炭素質コンドライトというC型小惑星とほぼ同じ組成の隕石が少数飛来していて、それを調べて太陽系形成期のプロセスを解明しようとする研究がなされている。だが、炭素質コンドライトはC型小惑星から飛来したと考えられるものの、物的証拠はこれまで得られていない。「はやぶさ2」ミッションの目的は、それを確かめるために、C型小惑星のリュウグウから直接試料を採取してくることだった。
JAXAでは、リュウグウの2カ所の表層から採取した計5.4gの試料を、フランス宇宙天体物理学研究所(IAS)で開発された赤外分光顕微鏡マイクロオメガを使って分析した。近赤外線の波長帯で試料を観察することで、それを構成する鉱物や、そこに存在する分子を調べることができるというものだ。それによると、地上観測で得られていた小惑星全体の特徴が反映されていることがわかった。リュウグウは、水や有機物に富む原始的な小惑星だったということだ。だが既知の隕石との比較では、炭素質コンドライトの中のCIコンドライトにもっとも似ていたが、密度が小さいことと反射率が低い点で異なっていたという。
この帰還試料は「実験室で入手できる最も始原的な試料の一つであり、太陽系の起源と進化の概念を再考させることになるであろう、唯一で貴重なコレクションである」とJAXAでは話している。今後は、初期分析、2次キュレーション分析、公募分析とより詳細な分析が行われる予定だ。
画像クレジット:JAXA