友人や家族に会うとき、また恋人とデートするとき、多くの人は自分の口臭が気になります。
私たちの望みは、「速やかに」そして「誰にも気づかれずに」口臭をチェックすることです。
韓国科学技術院(KAIST)材料科学工学科に所属するキム・イルドゥー博士ら研究チームは、親指サイズの小型口臭チェッカーを開発しました。
呼気中の硫化水素(H2S)を検知して素早く口臭を評価できます。
研究の詳細は、6月25日付の学術誌『ACS Nano』に掲載されました。
目次
- 正確な口臭チェックは難しい
- 親指サイズの口臭チェッカーは86%の精度を誇る
正確な口臭チェックは難しい
口臭のほとんどは口腔内から発生する「生理的口臭」です。
生理的口臭は「卵が腐ったような臭い」であり、起床時の口臭などがこれに当てはまります。
この臭いは硫化水素が原因であり、口腔内で細菌が繁殖することで生じます。
つまり口臭チェックするには、呼気中に含まれる硫化水素を検知すればよいのです。
実際、私たちの周囲には硫化水素を検知する安価な「ポータブル口臭チェッカー」がたくさんあります。
しかしこれらは医療器具ではなく、必ずしも正確な測定値が出るわけではありません。
研究チームも論文内で、「高選択性(特定の化学反応が優先的に起こる)・高感度の硫化水素ガスセンサーの作製は依然として困難であり、実際の呼気による分析は、私たちの知る限り、適切に行われていない」と述べています。
もちろん、歯科医が利用するような高精度の口臭チェッカーもありますが、それらは院内に設置されている高価な機器によるものであり、一般の人は気軽に利用できません。
そこでチームは、高精度で誰もが簡単に利用できるポータブル口臭チェッカーの開発に取り組みました。
親指サイズの口臭チェッカーは86%の精度を誇る
以前の研究により、金属酸化物と貴金属触媒の組み合わせが、より敏感で選択的な反応を起こすと分かっています。
そこでチームは呼気中の硫化水素に対して最速かつ最強の反応を引き出す「物質の組み合わせ」を探すことにしました。
その結果、塩化ナトリウム(NaCl)や白金ナノ粒子、タングステン(W)などを混合して作り出した複合材料が、硫化水素に対して30秒未満で最高ランクの反応性を示すと判明。
またいくつかの硫黄含有ガスと反応させたところ、硫化水素に最も敏感に反応し、ジメチルスルフィド(C2H6S)の9.5倍、メタンチオール(CH4S)の2.7倍の反応が見られました。
ターゲットにしている硫化水素だけに高い反応性が見られるため、口臭チェックとして高い精度を提出できるのです。
最後にチームは複合材料と湿度・温度・圧力センサーを組み合わせて、人間の親指ほどの小さなデバイスを作成。
そしてこのデバイスをテストしたところ、86%の精度で口臭を正しく識別できました。
高精度かつ瞬時の口臭チェックが可能なだけでなく、非常に小さく目立ちません。
バッグに入れておき、気づいたときにすぐさま口臭チェックできるでしょう。商品化が待たれますね。
参考文献
Newly-Developed Portable Device Can Rapidly Detect Bad Breath
http://www.sci-news.com/medicine/bad-breath-sensor-09887.html
元論文
Surface Activity-Tuned Metal Oxide Chemiresistor: Toward Direct and Quantitative Halitosis Diagnosis
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.1c01350