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イギリス政府は、家や商業施設を新たに建築する際、EV(電気自動車)用の充電設備の設置を義務づけると発表した。

イギリス政府は、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を、2030年までに禁止するなど、EVの普及を急速に進めている。

こうした中、ジョンソン首相は22日、家やスーパーマーケットなど商業施設を新築する場合、EV用の充電設備の設置を義務づけると発表した。

2022年から実施する方針。

また、10台以上の車を駐車できる施設を改修する場合も、設置が義務づけられる。

イギリス政府は、この制度によって、イングランドだけで、年間に最大で14万5,000の充電設備が増えると見込んでいる。

このニュースについて、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚氏に話を聞いた。

三田友梨佳キャスター「イギリスは、EVの普及のために新築住宅などに充電スタンドを義務化するということなんですが、どうご覧になりますか」

長内厚氏「充電スタンドがなければ、EVは走ることができませんから、その拡充は必要になると思います。これは、イギリスと日本も一緒です。日本だと、得意とするプラグインハイブリッドにも使えるので、いいと思いますが、EVを普及させたいというEU(ヨーロッパ連合)の思惑と、日本とは条件が違いますし、また市場のニーズとEVスタンドが合致しない場合、EVの普及は、絵に描いた餅になってしまう危険性もあります」

三田キャスター「思ったほど、EVが普及しない可能性があるということですか」

長内氏「例えば、EV化に積極的な中国でも、補助金目当てに設置されたEVスタンドが放置されて、そのまま廃虚になっているケースもあります。日本でも2010年代前半に、日本政府のあと押しもあって、充電スタンドの拡充が図られましたが、維持費がかかるわりに、利用が進まず、撤去してしまった例も結構あります。環境のためにEVスタンドを作って、それが無駄になってしまう、ごみになってしまうのは本末転倒なわけです。本当にトータルに考えて、何が必要なのかというのを考える必要があります。EVを普及させるというのは手段であって、本当に必要なのは、脱炭素のために何ができるかということです」

三田キャスター「日本の自動車産業が、脱炭素へとかじを切る際には、何が重要となりますか」

長内氏「日本の場合、日本の方が選択肢が多いというのが、1番のポイントになると思います。日本の自動車メーカーが開発した内燃機関は、非常に優れているので、ヨーロッパは、この土俵ではなかなか日本には勝てないという思いがあって、EVを、むしろ選択して、これでゲームチェンジを図ろうとしている節もあるんです。ただ日本の場合は、水素エンジンですとか、燃料電池ですとか、さまざまな選択肢を持つことができる。技術的にも、商品としても、いろんな選択が可能なわけです。新技術で何が本当に必要か、何が1番有効なのか、不確実性が非常に高いので、選択肢を残すことが非常に重要です。何が本当に社会と消費者のためになるのかを考えて、結論を急ぎすぎないことも重要です。例えば、日本で同じような法制化をするときは、EVのスタンドだけではなく、水素ステーションなど、ほかの形での脱炭素にも、プラスになるものも同時に推進していく。そういうような選択肢を増やすダイバーシティこそが、不確実な時代のイノベーションを成功させる鍵になると思います」

三田キャスター「世界の流れはEV一辺倒ですが、選択肢を増やすことが、自動車の脱炭素に向けての近道となるかもしれません。そのためにも、インフラの整備など、官民一体となって、力を入れていく必要がありそうです」