<7月末から高齢者向けに3回目のブースター接種を行ってきたイスラエル保健省の発表だ。これで3回目のワクチン需要がますます増えそうだが> イスラエル保健省は8月22日、ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンの3回目(ブースター)接種を行うと、接種回数が2回だけの人と比べて、高齢者では感染や重症化を防ぐ効果が著しく高まるとする新たなデータを明らかにした。 今回のデータでは、60歳以上の人については、ブースター接種を受けてから10日が経った時点で、2回接種の人と比べて感染予防効果が少なくとも4倍にまで上昇するという結果が出たという。さらに、この年齢層の人に3回目の接種を行うと、10日後には重症化や入院を防ぐ効果が5〜6倍にまで増大したとのことだ。 この新たなデータは当初、8月19日に開催された保健省の専門家会合で提示され、22日に同省のウェブサイトにアップロードされた。だが、この研究の完全な詳細はまだ公開されていないと、ロイターは報じている。 60歳以上の高齢者は新型コロナウイルス感染症に関して特に弱いとされ、イスラエルでは7月末から、これらの年代の人たちはファイザー製ワクチンのブースター接種を受けることが可能になっている。8月に入り、同国の保健省は、対象となる年齢層のうち3分の1以上がすでに3回目の接種を受けたと明らかにした。 イスラエルは8月19日、ブースター接種を受けられる人の年齢を40歳以上にまで拡大した。同国はこれに加え、妊娠中の女性、教員、医療従事者については40歳に満たない場合でも3回目の接種が可能になると発表した。3回目の接種は、2回目の接種から少なくとも5カ月を経過したのちに実施するようにと指示されている。 アメリカは全国民対象に アメリカも最近になって、すべてのアメリカ国民を対象に9月末からブースター接種を開始する計画を発表した。しかしガイドラインでは、ファイザー製とモデルナ製、どちらのワクチンを受けた場合も、2回目の接種から少なくとも8カ月を経てからブースター接種を受けるようにと定めている。 米保健当局はこの間隔の設定について、重症化を防ぐワクチンの効果が薄れていく時期に関して、現段階でわかっている知見を反映したものだと述べた。一部の専門家は、2回目の接種から8カ月を経ないうちにブースターを接種しても、あまり効果がないとの見方を示している。 米保健福祉省(HHS)は8月18日に発表した声明で、以下のように指摘した。「現在得られているデータでは、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)感染を防ぐ効果は、当初の2回のワクチン接種の後、時間の経過とともに減少することが非常にはっきりと示されている。さらに、デルタ株が優勢になるにつれ、軽度および中程度の症状を防ぐ効果が弱まっているとのエビデンスも出始めている」 ===== 一方、米食品医薬品局(FDA)は8月23日、ファイザー製ワクチンを正式承認した。これは、新型コロナウイルスワクチンがアメリカの保健当局から正式承認を得た初の事例となった。これまでこのワクチンは、緊急使用許可を根拠とした使用のみが認められていた。これに続き、モデルナ製ワクチンも正式承認を得られる見込みだ。 FDAのジャネット・ウッドコック長官代行は、ファイザー製ワクチンの正式承認により、一般の人々も「このワクチンが、FDAが求める安全性、効果、製造品質に関する高い基準を満たしていると確信が持てる」と、承認の意義を強調した。 だが、裕福な先進国でブースター接種の実施計画が進む中で、世界保健機関(WHO)の事務局長は23日、3回目接種用のワクチンの供給を2カ月先送りするようにと呼びかけた。その目的は、貧しい国々が直面するワクチンの不平等を緩和する点にある。 WHOのテドロス事務局長は、貧しい国々が多くの国民に1回目の接種を実施することさえできない状況にある一方で、裕福な国々が3回目の接種に向けた準備に動いていることに「非常に失望した」と述べた。 アメリカ、イスラエル、ハンガリーのほか、ヨーロッパ、アジア、中東の一部の国では、ブースター接種の準備を進めているか、すでに接種を実施している。 (翻訳:ガリレオ)