鳥類の90%以上は一夫一婦で、ほとんどが生涯パートナーに忠実であると言われています。
中でも貞節さにおいて信頼できるのが、アホウドリです。
アホウドリのカップルは毎年同じ相手と交尾し、めったに別れることはありません。
しかし、このほど発表された最新研究により、これまで知られていなかった驚くべき離婚原因が判明しました。
フォークランド諸島に生息するマユグロアホウドリ(学名:Thalassarche melanophris)は、海面温度が高くなった年に離婚率が急上昇していたのです。
これは、近年の温暖化がアホウドリの夫婦仲を悪化させていることを示唆します。
研究は、リスボン大学(ULisboa・ポルトガル)、モンタナ大学(University of Montana・米)らが中心となり、11月24日付けで学術誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されました。
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- アホウドリの世界で「温暖化離婚」が増加中
アホウドリの世界で「温暖化離婚」が増加中
アホウドリは海洋に生息し、飛行できる鳥類の中では最大級の鳥です。
一夫一妻であることで知られ、ペアは若い頃に数年間交際したあと、お互いに生涯の伴侶となります。
一旦ペアが成立してしまえば、その関係は数十年にも及び、別れることは滅多にありません。
先行研究によると、アホウドリの離婚率は通常、1〜4%に留まるとのことです。
本研究では、2004年から2019年にかけてフォークランド諸島に生息するマユグロアホウドリを対象に、ペアの関係性を追跡調査しました。
それと並行して、どう地域の気象観測や環境モニタリングのデータも記録。
両者のデータを比較した結果、アホウドリの離婚率は、海面温度が高い年に急上昇することが分かったのです。
平均水温が低い年では離婚率が平均1〜4%、中には1%を下回る年もありました。
ところが、この割合は水温の上昇に応じて増加し、最も水温が高かった2017年には最大7.7%に達していたのです。
2018年と2019年に海水温が再び低下すると、離婚率も低下しています。
一体、なぜでしょうか。
温暖化のストレスと栄養不足で、繁殖が困難に
先行研究によると、海面温度が上昇した場合、上層部の温かい水と下層部の冷たい水がうまく混ざらなくなり、栄養分が行き渡らなくなります。
その結果、アホウドリが到達できる範囲の栄養分が少なくなり、空腹感が増大して、パートナーとの繁殖に影響が出てしまうのです。
空腹のために、どちらかのパートナーが卵やヒナの世話を放棄することもあります。
また、メスの栄養不足により、産卵できなくなったり、卵が孵化しなかったり、ヒナがすぐ死んでしまうケースも見られました。
チームは「アホウドリのペアは、自分のストレスを環境ではなくパートナーのせいだと勘違いし、離婚を決断しているのかもしれない」と指摘します。
実際、海面温度が高い年には、繁殖に成功したメスでもパートナーを捨ててしまうことがありました。
さらに、卵が孵化しなかったペアでは、卵が無事に孵化したペアと比べ、パートナーと別れる確率が5倍以上高くなっています。
そして、アホウドリのペアは一度離婚してしまうと、復縁の可能性はきわめて低く、通常は新しいパートナーを探しに行きます。
研究チームは「深刻化する温暖化によりストレスが増大することで、アホウドリの繁殖と生態系に甚大な被害が出るかもしれない」と懸念しています。
温暖化の魔の手は、生物の夫婦仲にまで及び始めているようです。
参考文献
Albatross divorce rates found to climb during times of warm sea surface temperature
https://phys.org/news/2021-11-albatross-divorce-climb-sea-surface.html
Albatrosses divorce more often when ocean waters warm
元論文
Environmental variability directly affects the prevalence of divorce in monogamous albatrosses
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2021.2112