大人の声を聞いたとき、声の主が男か女か判断できないということは通常ありません。
では、それが子どもの声だった場合はどうでしょうか?
カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の研究チームは、5~18歳までの子どもの音声サンプルを使って、声の変化や、聞き手がどのように認識するかを調査しました。
すると面白いことに、多くの人が5歳以下の子供の声でも、正確に声の主が男の子か女の子か判別することができたのです。
子どもの声には男女で解剖学的な違いがありません。
これは話者の言動や行動の違いから、多くの人が性別を判断している証拠である可能性があります。
この研究の詳細は、11月23日付で科学雑誌『Journal of the Acoustical Society of America』に掲載されています。
目次
- 子どもの声の性別
子どもの声の性別
誰もがよく知るように、男性には成長すると声変わりが起こり、女性とは明らかに異なる周波数の声を発するようになります。
そのため、大人の声を聞いたとき、それが男性が女性か判断できないということは稀です。
これは、逆に言うと子どものときには解剖学的に声の周波数に男女の違いがないため、聞いただけでそれが「男の子の声」なのか「女の子の声」なのか判別するのは困難であるように思えます。
そこで、カリフォルニア大学の研究チームは、年齢が5~18歳までの子どもの音声サンプルを使い、聞き手が話者をどのように判別するのかという調査を行いました。
基本的に共鳴する音の高さは、発声を行う体のサイズと関連しています。
たとえばバイオリンとチェロを想像すると、そのサイズによって音響が大きく変わることがわかります。
そのため聞き手は、主に話者の声の高さとフォルマント周波数(声道の形状変化で起こる共振周波数、言葉の使い分けはこの周波数の変化)に基づいて、相手の性別、年齢、身長、またその他の身体的特徴を判断しています。
しかし、今回の研究結果では、このような音の基本的な手がかりとは別に、人が相手の性差を判断していることが明らかとなりました。
これは、実験結果から得られた2つの興味深い事実に基づいています。
その1つが、音声を書き起こした文章だけを参加者に提示したところ、文章を対象とした場合でも、参加者は正確に話者の性別を当てることができたというものです。
さらに、実験では声の周波数に解剖学的な違いが出ていない5歳の子どもの声から、参加者は確実に男女の判断ができたのです。
今回の研究チームの1人、カリフォルニア大学デービス校のサンティアゴ・バレーダ(Santiago Barreda)氏は、この結果を次のように語ります。「これは話者の解剖学的な違いによって生じる、声の高さや響きではなく、行動や話し方の違いを手がかりに、人が性別の判断を行っているものと考えられます」
ジェンダーの持つ、男の子らしさ、女の子らしさというものの性質については理論的な根拠に基づいて長く議論されてきていますが、今回の実験結果は、こうした視点に関する証拠を提示しています。
人は音で判断できない子どもの声でも、どういった話し方か? どういう話題を選択しているか? など音以外の微妙な手がかりを利用して性別の判断を正確に行うことができるようです。
アニメなどでは、よく男の子の声を女性の声優さんが演じていますが、違和感なく聞くことができるのは、子ども声の性別判断は単に音の周波数だけでなく、喋り方や内容に重要な要因があるためかもしれません。
元論文
Perception of gender in children’s voices
https://asa.scitation.org/doi/10.1121/10.0006785