年末年始にかけて、お酒を飲む機会が増えると思います。
そんな時に気をつけたいのが「空きっ腹に酒」です。
お腹が空いている状態でアルコールを飲むのは良くないと言われますが、それはなぜでしょうか?
ここでは、アルコール吸収の仕組みや、空腹時の飲酒の悪影響について説明していきます。
目次
- アルコール吸収のメカニズム
- 「空きっ腹に酒」が厳禁な理由
アルコール吸収のメカニズム
私たちが普段飲むアルコールは、化学で習ったエタノールやエチルアルコールと同じ液体です。
それはまた、水や血液に溶けやすい分子でもあります。
アルコールの吸収は口の中から始まり、小さな血管が少量のアルコールを吸収します。
胃でもアルコールが吸収されますが、大部分を吸収するのは「小腸」です。
アルコールの9割は小腸で吸収され、そこから血液に取り込まれ、体内の器官に運ばれます。
また、脳や肺のように血液が豊富に供給されている臓器では、アルコールの拡散もより速く行われます。
アルコールの代謝
摂取されたアルコールの約10%は、汗や尿、呼気から排出されます。
お酒を飲んだ後に少し臭うのはこれが原因で、体がアルコールを排出しているのです。
また、お酒を飲むと体全体が温かくなり、汗をかくことがあるのもこのためです。
残りの90%は、肝臓で分解されます。
肝臓に多く存在するアルコールデヒドロゲナーゼ(アルコール脱水素酵素)という酵素が、アルコールを他の化学物質に分解してくれます。
これらはさらに分解され、最終的に二酸化炭素と水が生成され、体外に排泄されます。
加えて、アルコールには利尿作用があるため、腎臓の働きも促進されます。
腎臓は、アルコール代謝の副産物を体外に排泄するべく、より多くの尿を濾過しなければならなくなるのです。
それでは、空腹状態でアルコールを摂取すると何が起きるのでしょうか?
「空きっ腹に酒」が厳禁な理由
アルコールの吸収速度は、性別や年齢、アルコール耐性など、多くの要因に左右されます。
しかし、ほとんどの人に共通するのは、空腹状態でお酒を飲むと、アルコールの吸収速度が早まることです。
血中のアルコール濃度は、空腹時の飲酒から約1時間後にピークを迎え、アルコール度数が20~30%の場合はそれがより顕著になります。
さらに、シャンパンやウイスキーのソーダ割りといった炭酸飲料は、体内へのアルコール吸収率を高めてしまいます。
そして、アルコールの吸収率や速度が上がってしまうと、当然ながら、その効果が大きくなります。
最も目立つのは、判断力や思考力の衰え、体の適切な協調運動の阻害です。
それから、空腹時での飲酒量が増えれば、激しい吐き気や嘔吐、頭痛を引き起こす可能性が高まります。
また、光や音に敏感になり、睡眠が妨げられ、ノドが極端に渇き、頭が正常に働かなくなります。
最終的に、「二日酔い」も通常よりずっと不快で、長続きしやすくなるのです。
「悪酔い」を予防できる飲み方
こうした「悪酔い」を防ぐには、食事と同時か、あるいはお腹がある程度満たされた状態で飲むのがベストです。
特に「炭水化物」を食べると、アルコールの吸収速度は緩やかになります。
これまでの研究で、炭水化物を摂取してからの飲酒は、空腹時と比べて、血中アルコール濃度の上昇が4分の1以下となることが分かっています。
炭水化物は、他の食物に比べてアルコールを吸収しやすいので、血中に溶け込む速度も低下するのです。
もし食べるものがない場合は、アルコールを水やジュースなどのノンアルコール飲料で薄めましょう。
また、ゆっくり少しずつ飲むのも、アルコールの吸収速度を抑えるには効果的です。
体内に吸収されるまでに時間がかかれば、アルコールの悪影響もそれほど強く受けません。
年の瀬は飲酒の機会も増えると思いますが、「空きっ腹に酒」には注意して、良いお年をお過ごしください。
参考文献
Why Shouldn’t You Consume Alcohol On An Empty Stomach?