日本女子競泳界初の五輪2冠を達成した大橋悠依選手と東京五輪代表の座を争い、その後現役を引退したリオ五輪400m個人メドレー代表の清水咲子さん。
大橋選手の最大のライバルであり最大の理解者である清水さんが、2冠達成の要因と大橋悠依のスゴさを語った。
ーー200mと400mの個人メドレー、2つの種目で勝つことの難しさは?
清水さん:
すごすぎて言葉が見つからないが、まず400m個人メドレーは競泳種目の中で一番体力的にきついと言われています。スタミナだったりスピードだったり、しかも4種目があるということで、すべてのテクニックが必要なんです。持久力もスピードも兼ね備えなければ勝てない。この種目で金メダルを取ったことは本当にすごいことです。
そして200m個人メドレーなんですが、この種目はとにかくスピード勝負なんですね。1種目50mしか泳がない中で、種目の切り替えのところがすごくキーになるんですね。それを素早くこなして、400mとは違うスピード感でこなさなければならない。
200mと400mの個人メドレーで出場するっていうのはメンバーを見てもわかるようにもう別物なんです。選手自体もガラッと変わるのが特徴なんですね。
(編集部注:200mと400mの両決勝に出場したのは大橋選手とホッスー選手のみ)
2冠達成の勝因は色々あるとは思うんですけど、彼女自身、頭をとにかく冷静にして、最初の400m個人メドレーで自分がやらなきゃいけない展開っていうのを確実に出来たことが2つの金メダルに繋がったと思います。
五輪前合宿、バタフライの調子が良くなかった
清水さん:
五輪前、私が事前合宿に顔を出したときに、悠依のバタフライの調子が良くなかったんです。
その時に彼女が「バタフライ、どうしたらいいですか?」って聞いてきたので、「バタフライそんなに積極的に行かなくていいと思う」という話をしたんですね。
そしたらレース(400m個人メドレー)では予選も決勝もバタフライは1分2秒台の抑えたペースで入って、次の背泳ぎから少しずつ少しずつギアを変えて、そしてラストのフリーで、ギアをしっかり変えて全員を引き離すというプランを立てた。その通りになりましたね。
400mの予選・決勝と重なっていくうちに、顔色もすごくよくなりましたし、表情だったり、泳ぎ終わった後のインタビューの話を聞いていても自分がやらなきゃいけないことが明確に出ているので、これは多分200mも大丈夫だなって思って見ていました。
予選、準決勝と2つ泳いでからはもうどんどん自分の殻を破って出てくる感じ。私は久しぶりにこの悠依の表情を見たのが嬉しくて、レースを見ていても大丈夫って思いました。それは悠依自身気づいてたんじゃないですかね。
本当に自信があるときの悠依はだれも勝てるなんて思えないオーラを放つので、それが久しぶりにしっかり出ていたなぁと本当に思います。
2冠を達成したことは本当にベストオブスイマーしかやり遂げられないことを日本人選手で、悠依がやってくれたなって感じですね。彼女はまさに「キングオブスイマー」です。
フジテレビ五輪取材団