『環球時報』が掲載していた社説「安倍弃道而玩术,终究要把自己绕进去」が如何にも中国的でいろいろ興味深かったので、これについて少し。
これはアメリカのオバマ大統領の広島訪問を受けて書かれたものですが、大意を紹介させてもらうと以下のような感じです。
1 記事の紹介
オバマは、「核のない世界」を提唱したが、71年前の米軍による広島、長崎への原子爆弾投下についての謝罪はなかった。
「核のない世界」は、理念であり、実際に実現する徴候はなく、まもなく退任するオバマにとって華麗なるカーテンコールになるだろうし、世界中の人を感動させるだろう。
しかし、オバマ広島訪問の主人は、「非核」のために呼んだのではなく、広島を通して、世界中にあの戦争の「つらい思い」を伝えるために呼んだのです。
日本は70数年まえに戦争に負け、戦争末期には、原爆や大規模な空爆を被った。日本人にとってはあの戦争の思い出では、本土が災難にあったことで、国際社会は何度もアジア国家への侵略に対して改めて考えるように求めている。
一部の日本人にとって、アメリカ大統領の広島訪問は、「歴史的な訪問」アメリカ政府のある種のおわびの気持ちを持参したと思う。
オバマと安倍が一緒に広島に現れたとき、彼らの思いは全く異なっていた。オバマは「核のない世界」がすぐ現実できないことを知っていたが、自分のスピーチが残ることを望んだ。
安倍は、歴史問題での勝利を目指し、広島の悲惨な境遇を利用して、日本の第二次世界大戦での侵略者のイメージを薄めることを狙った。
しかし式典の力は結局は有限だ。広島と長崎の市民は日本の軍国主義が殺したので、安倍は「原子爆弾が日本の間違いが破裂させた」という勇気がない。
また、今回の訪問に関連して、安倍は日本軍が空爆した真珠湾にいくことがあるのかと聞かれて、「その予定はない」と答えている。
2 被害者意識
心理学の実験でありますが、人は他人がしてくれた恩(良いこと)は簡単に忘れますが、他人からされた悪いことはなかなか忘れません。
結果、トータルで同じことをしあっていても、どうしても自分の方が余計に何かされている、自分はあれだけしてやったのに、これしか恩を返してもらっていないとの発想になりがちです。
結果、今回の戦争問題に限らず、どうしても自分の方がこうした被害を被っている、これだけ大変な目にあったという思いにはなりがちです。
3 被害者意識2
実際、当事者は苦労したのは間違いないわけですが、それを相手からみると単なる自業自得には見ないというのは、大変悲しいことだと思います。
嫌な目にあうのは皆嫌なはずで、それをこうした他者の視線で一方的に見るのは私的にはどうかなという思いがあります。
当然、これは自分の被害者意識を主張するのであれば、他人の被害者意識も尊重しなくてはならないという話で、皆が他人のことについて想像力を働かせるというのはとても大事なことと思います。
そういう意味で、第二次世界大戦については、日本が中国に攻め込んでいるので、その部分についてどうこうつもりはありませんが、日本だけが悪い、日本が全面的に悪で、中国が全面的に正義だという発想にはとても組出来ません。
4 非核
それに確かに現実問題として、オバマ大統領が広島を訪問したからこれから非核が進むかというと、おそらくそのようなことはないでしょう。
ノーベル平和賞をもらったときは皆彼に期待していたわけですが、まともに考えて彼が残された任期で、この問題について何ができるかといったら、殆どないといっても過言ではないと思います。
ただ、それでもやらないよりは良いわけで、私はそういう意味で今回のオバマ大統領の広島訪問を評価しているわけですが、それを単なる人気取りのように思うのもどうかと思った次第です。
5 最後に
今回の『環球時報』の論説は中国のいつもの主張そのもので、特に驚くべき内容ではありません。ただ、ここまで全否定するかと思ったのが今日のエントリの動機です。
確かに中国にとってアメリカは共にファシスト日本(悪)と戦った同盟国でありたいわけで、それが今回の訪問で少し風向きが変わったというのもあったかと思います。
おそらくそうした思いがいろいろ積み重なった今回のような全否定の社説になったのではないかと思った次第です。