もっと詳しく

厚生労働省の専門分科会は、イギリスのアストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンについて、40歳以上を公費による接種の対象とすることを了承した。

アストラゼネカ製のワクチンは、原則として、40歳以上に使用することを条件に、当面は自治体の要請に応じて供給され、希望する人へ接種することになる。

2021年5月に特例承認されたアストラゼネカ製のワクチンは、接種後ごくまれに血栓ができるなどといった海外からの報告があり、厚労省は当面の使用を見送っていた。

会合の中で専門家からは、「リスクや効果を理解してもらったうえで、接種を進めるべき」などの意見が出され、厚労省は、情報の周知徹底を図りたいとしている。

このニュースについて、アメリカの大学病院で新型コロナウイルスと向き合っている内科医の山田悠史先生に話を聞いた。

内田嶺衣奈キャスター「アストラゼネカ製のワクチンについて40歳以上を対象に接種が行われることになりましたが、山田先生、私たちはどのようにこれを捉えたらいいのでしょうか?」

マウントサイナイ大学病院勤務・山田悠史先生「既存のワクチンの供給が少し滞ってきている状況ですので、アストラゼネカ製のワクチンの活躍の場面も十分あると考えられます。特に、ワクチン未接種の方の感染者、重症者が増加傾向にある日本国内において、新型コロナウイルスによる被害は、ますます拡大してしまう懸念があります。その最善の対策として、ワクチン接種が急がれますが、アストラゼネカのワクチンでも、これまで十分高い有効性が報告されています。その他のワクチンの供給が十分でない中、アストラゼネカの必要性は高まっていると思います」

内田嶺衣奈キャスター「ただアストラゼネカ製のワクチンに関しては、いくつかの懸念というのも伝えられていますが、これについては先生どうお考えでしょうか?」

マウントサイナイ大学病院勤務・山田悠史先生「アストラゼネカのワクチンを使用するにあたっての懸念事項は、血栓症がまれな副反応として報告されていることです。しかし、現在流行しているデルタ株が私たちの及ぼす影響は、これまでのデータが通用しない可能性があり、ワクチンを受けないリスクがますます高まっている状況と言えます。確かに、アストラゼネカ製のワクチンによる血栓症は懸念すべき副反応であることに間違いはありませんが、頻度が比較的まれであり、高い年齢層で、より少ない頻度で報告されていること。一方で、年齢が高くなればなるほど、ウイルス感染自体の重症化リスクや血栓症のリスクが増加することから、デルタの感染が急速に拡大する日本では、より高い年齢層で使用して、ワクチンの普及を加速する判断は理にかなっていると思います」

内田嶺衣奈キャスター「これから、この3つの異なるワクチン接種が並行して行われるようになっていった場合、私たちが考えるべきことやとるべき行動というのはどんなことでしょうか?」

マウントサイナイ大学病院勤務・山田悠史先生「これら3種類のワクチンは、いずれもメリットとデメリットの比較のうえでメリットが上回ると考えられて初めて使用されるものです。ワクチン接種の前に、私たちがてんびんにかけるべきは、ワクチンのリスクとウイルスのリスクです。そう考えたときに感染が拡大する中、ウイルスのリスクはますます高まっているといえます。ワクチンの種類にかかわらず、目の前にあるワクチンを打つことが、ご自身やご家族を守るために、より重要な状況になっていると思います」

内田嶺衣奈キャスター「少しずつ、ワクチン接種を終えた方が増えてきています。その経験をこれからワクチンを打つ方に話すと不安を和らげることにつながっていくかもしれません」