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2021年は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が国際物流に及ぼした影響が深刻化の一途をたどる1年だった。なかでも海運需給のひっ迫が著しく、外交不定期船の運賃の目安となるバルチック海運指数は、コロナ禍以前の5倍近い水準へと跳ね上がった。

その背景には、世界規模のロックダウンに伴う巣ごもり消費の急増と、前年から続く港湾混雑やコンテナ不足といったさまざまな事情がある。長引く輸送遅延が物流コストの増加を招いているのだ。

こうした状況のなかで今年3月に世間を騒がせたのが、世界最大級のコンテナ船「エヴァーギヴン」の座礁によって引き起こされたスエズ運河封鎖事故だった。日本の正栄汽船が保有し、台湾の長栄海運が運用する同船は、当時20万トンという膨大な数のコンテナを積載しており、その高さは12階建てのビルに相当するほどだった。この“鋼鉄の帆”が最大秒速20mの強風にあおられて運河の岸壁に座礁。ほかの船舶の航行を完全に妨げる事態を招いた。

一方、世界経済を一変させたパンデミックは、国際物流の要である海運業界にとっては予期せぬ追い風となった。コロナ禍が到来する前の海運業界は、リーマンショック以前の好況期に競うようにして造船を続けたにもかかわらず、来る不況で荷動きが大幅に落ち込んだ。その結果、船を持て余した企業が、こぞって運賃の値下げに走らざるを得ない状況に陥ったからだ。

洋上にそびえ立つコンテナの“塔”は、一転して引っ張りだことなった海運業界のうれしい悲鳴を象徴している。そしてスエズ運河の座礁事故は、皮肉にもその追い風にあおられた必然の結果だった。

一方、ロジスティクスの混乱は慢性的な半導体不足も招いている。ポストコロナ社会の到来とともに加速するデジタルシフトの流れが、人類の想像を超えたハイテク製品の需要増加を引き起こしたからだ。

各国の大手半導体メーカーがチップの増産に乗り出してはいるものの、新設した工場が稼働するまでには数年を要するとされている。発売から1年以上が経過しても依然として品薄状態が続く「プレイステーション 5」や、GPUの在庫不足で価格が高騰するグラフィックボードは、まさに長期的なサプライチェーンの混乱が招いた結果だ。

このほか、21年にパンデミックがきっかけとなった変化として、これまで自社製品のデザインを重視してきたアップルが、実用性の追求へと舵を切ったことも特筆に値する。同社がiPhoneやMacBookの側面に空いた“穴”を埋めたがる姿勢は、これまでに実行されたiPhoneのヘッドフォンジャックの排除やワイヤレス充電の推進からも明らかだ。

一方で、10月の発表で全面刷新された新型「MacBook Pro」では、デザイン性の犠牲になってきたさまざまな外部接続用ポートを復活させた。これはパンデミックにより急増したリモートワーカーたちが募らせてきた不満に配慮した結果とされている。

ここからは、2021年に「WIRED.jp」で公開された編集記事を中心に、最も読まれた10本を紹介する。

Bobbit Worm
Printed OLED Scrolling Display
canal
Suez Canal

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