『ハロー、ユーラシア 21世紀「中華」圏の政治思想』(福嶋亮大 著)講談社 気鋭の中国学者による刺激的な中国論。「中華」圏に現存する三つの政治社会(中国・香港・台湾)を対象に、時事問題を見る視点を提供し……
刑務所の精神科医が見た「現実」 非行少年少女と受刑者、その家族の姿とは
『刑務所の精神科医 治療と刑罰のあいだで考えたこと』(野村俊明 著)みすず書房 親ガチャという言葉を最近よく聞くようになった。親は選べないということを、無作為に玩具が出る「ガチャガチャ」にたとえている。……
趣味は「枝毛切りと凧揚げ」、対人関係の心配は「自分にはない」…綿矢りさが放つ“新機軸”
『オーラの発表会』(綿矢りさ 著)集英社 ここにあるのは赦し、あるいは寛容の物語だ。ただし、それは奇天烈な登場人物、設定の下で進行していく。ユーモアたっぷりで、繊細さもたたえた筆致に導かれ笑ったり、違和……
サリンジャーに肉薄したうえで、なお近寄りがたい後ろ姿を照らし出す…賢明で鮮やかな“謎解き”の書
『謎ときサリンジャー』(竹内康浩・朴舜起 著)新潮選書 謎多き隠遁作家という世間のイメージに反して、サリンジャーは自身について作中で多くのことを語っている。しかし、その難解さと偏屈ぶりが障壁となって、作……
観賞魚、ゴキブリ、猫、菌類、へび…多様な生物と、共存する人間の生き様を対照化する5つの短篇小説
『赤い魚の夫婦』(グアダルーペ・ネッテル 著/宇野和美 訳)現代書館 メキシコ出身の作家の初の日本語翻訳ということで、未知のエキゾチシズムを期待して読み始めたのだが、そんな単純な期待はすぐに覆され……