アメリカから京都へやってきた青年が、四条大橋の真ん中で体感した“景色”…人生を変える「通路」が開かれた瞬間

『鴨川ランナー』(グレゴリー・ケズナジャット 著)講談社 第2回京都文学賞を受賞したこの作品は、アメリカ人である著者が日本語で書いた小説だ。主人公はアメリカの高校で日本語と出会い、研修旅行で2週間だけ京……

「新しいスポーツを生み出したい」という夢を持ち、マンハッタンの投資銀行を退職…スノーボードを生んだ男の一生

『スノーボードを生んだ男 ジェイク・バートンの一生』(福原顕志 著)文藝春秋 今やスキーと並ぶ冬のスポーツの代表で、新しい文化を生み出したスノーボード。その歴史が始まったのは、1977年だった。「スナー……

「戦いたいか、死にたいか」ナチスに村が襲撃されて皆殺しに…母を殺された18歳の少女が固めた“決意”

『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬 著)早川書房 アガサ・クリスティー賞受賞作だが、殺人事件が起きて名探偵が解決するミステリではない。戦争アクション活劇で、480ページの大作だが、一気読みした。 舞台は……

「(東日本大震災の)被災地では集合的無意識が噴出している」 2人の宗教学者の“死者”という現象をめぐる探究

『死者の力 津波被災地「霊的体験」の死生学』(高橋原/堀江宗正 著)岩波書店 本書における「死者」は遺体を指すのではない。五感の彼方でその実在を感じる「生きている死者」を意味する。 本書は、二人の宗教学……

桑田佳祐が「古い自分」にツッコみながらも、“時の流れ”に逆らう理由とは?

『ポップス歌手の耐えられない軽さ』(桑田佳祐 著)文藝春秋 実はサザンのデビュー以前からのサザンファンで、ちゃんとファンクラブにお金を払い続けていれば、ほぼ最古参だったというのが私で、これは自慢でなく書……

“日光”に税金がかけられ、庶民がとった対策は…? シニカルな視点で切り込む「税金の世界史」

『税金の世界史』(ドミニク・フリスビー 著/中島由華 訳)河出書房新社 こんなに貧乏なのに、何故我々は税金を払わなければならないのか、と庶民は思う。そして稼いでいる人間も、なぜ自分はこんなに頑張って働い……

「ノーベル賞の賞金は1年以内に受け取らないと失効する」トリビアが満載、“生命の不思議”を描く科学ノンフィクション

『人体大全 なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか』(ビル・ブライソン 著/桐谷知未 訳)新潮社 ビル・ブライソン! 米国随一のユーモアエッセイストで、テーマを決めたらそれについての“すべ……

マイノリティの“絶望”を語り直した先にあるのは…『説教したがる男たち』の著者による自伝的エッセイ集

『私のいない部屋』(レベッカ・ソルニット 著/東辻賢治郎 訳)左右社 夜道で人とすれ違うたび、いつも自分の死後を想像する。主にわずかな財産の分配先だ。パソコンはあの子へ、口座の預金はあの子へ……よく考え……

敗戦を認めてほしい“認識派”、それを敵視する“戦勝派”…フェイクニュースが生んだ「分断と抗争」

『灼熱』(葉真中顕 著)新潮社 社会的なテーマを織り込んだ重厚なミステリを発表している葉真中顕の新作は、ブラジルの日本人移民が太平洋戦争の敗戦を否定する戦勝派と現実を受け入れた認識派に分裂し、抗争を繰り……